第41回:新環境でADSL 3回線を比較
~速度的にはイー・アクセスが有利~
引っ越しを機にADSLを3回線導入。以前の環境ではアッカ・ネットワークスの回線が速度的に有利だったが、新たな環境ではどうなのだろうか? それぞれの回線を比較してみた。
●伝送損失を条件に新居を物色
以前の筆者宅は、最寄りのNTT収容ビルからの距離が2.7km前後と遠く、伝送損失も39dB(NTT線路情報の値。実際は40dB以上)と、決してADSLに適した環境とは言えなかった。実際、フレッツ・ADSL モア、アッカ・ネットワークス12Mbps、Yahoo! BB 12Mの3回線を導入していたが、アッカ・ネットワークスの3.6Mbpsを最高に、おおむね2~3Mbps程度の速度となっており、12Mbpsにはほど遠い環境だった(参考:第38回:フレッツ・ADSL モア開通)。
今回、筆者宅の引っ越しでは、光ファイバの導入とADSLの環境改善を第一条件として、物件を探したのだが、その結果、NTT収容ビルからの距離が1.5km、伝送損失が31dB(NTT線路情報)と、そこそこ良い条件の物件を探し出すことができた。ちなみに、物件を探す際、不動産屋さんに「伝送損失20dB前後の物件を探して」と無理な注文をしたこともあった。不動産屋さんにしてみれば、さぞ迷惑な客だったことだろう。
新居の線路情報。NTT収容ビルからの距離は1.5kmと近いが、伝送損失が31dBと距離のわりに多少高い。NTT収容ビルと自宅までの直線距離は短いのだが、途中に川で隔てられているため、その関係だろうか |
なお、今回、いろいろな物件を探したのだが、東京都の場合、意外にNTT収容ビルからの距離が近い物件を探すのは難しいことがよくわかった。23区であれば、区内に複数のNTT収容ビルが設けられているケースも多いが、都下ではほぼ市内にひとつしかNTT収容ビルがない。このため、線路長が2km以上になるケースがざらで、2km以内の物件を探すのは非常に難しかった。また、23区内であったとしても、場所によっては河川や鉄道、幹線道路などの関係で、物理的な距離が近いわりに線路長が遠いケースもあり、なかなか条件にあう物件を探し出すのは難しい。
もちろん、探した物件の中には、NTTの収容ビルからきわめて近いものもあったが、その場合、価格的に折り合わないケースがほとんどだった。NTTの収容ビルは、大抵、駅の近くに存在するため、当然、物件の価格も高くなるわけだ。まあ、普通は線路長や伝送損失を条件に物件を探すことはないので、あまり参考にはならないかもしれないが…。
●速度の傾向が一変、イー・アクセス有利に
さて、現在は新居への回線の移設なども完了し、無事にADSLが使えているわけだが、以前の環境に比べるとだいぶADSLの環境を向上させることができた。
現在、筆者宅に導入しているADSLは、アッカ・ネットワークスの12Mbps、Yahoo! BB 12M、イー・アクセスのADSLプラス(12Mbps)の3回線だ。以前は、イー・アクセスの回線ではなく、フレッツ・ADSL モアを導入していたが、これはBフレッツへの移行を予定しているため、ほぼ同方式となるイー・アクセスの回線を新たに導入した。
気になる速度だが、以下の表の通りだ。おおむね7Mbpsとなっており、以前の3Mbpsの状況から比べればだいぶ高速化されている。
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3回線のリンクアップ速度と実効速度の比較。イー・アクセスの12Mbps ADSLが他に比べて1Mbps近くも速い結果となった |
面白いのは、以前の環境と速度の傾向が異なる点だ。以前の環境では、アッカ・ネットワークスの12Mbps ADSLがリンクアップ速度で3.6Mbpsとあたまひとつ速く、ついでYahoo! BB 12M、イー・アクセスとほぼ同方式となるフレッツ・ADSL モアが2.4Mbpsと最も遅い結果となったが、これが見事に逆転している。今回の環境では、イー・アクセスの12Mbpsがリンクアップ速度で8.4Mbps、実効速度でも7Mbps以上と最も高速な結果となった。以前の環境と比較し、その傾向を分析してみると、近距離と長距離ではアッカ・ネットワークスが有利で、中距離ではイー・アクセス(もしくはNTTのフレッツ・ADSLモア)が有利といった感じだろうか。
もちろん、このような結果は導入している環境によって異なるうえ、純粋に同じ回線を利用して比較したわけではないので、この結果がすべてだとは言えない。しかし、少なくとも筆者の環境では、イー・アクセスの回線が最も高速な結果となったのは確かだ。
なお、アッカ・ネットワークスの12Mbpsに関しては、NTTの収容ビルから1.5Km以内のケースでDBMオーバーラップを利用するが(参考:第37回:12Mbps ADSLの最新の動向を事業者に聞く~アッカ・ネットワークス編)、現状、ADSL側の問題で、DBMオーバーラップを利用している場合でもステータスに「XOL EC」と表示されてしまう。このため、筆者宅の環境でDBMオーバーラップが利用されているかはわからない。距離的には微妙なところだが、おそらく今回のケースでは利用されていないのだろう。もう少し距離が近ければ結果は変わっていたかもしれない。
●正直、以前の環境と体感速度は変わらない
このように、今回3つの回線を比較してみたが、結果的にはイー・アクセスの回線が最も高速という結果になった。しかしながら、3回線のどの回線を使っても体感速度で大きな差を感じることはなく、安定性もほとんど変わらなかった。要するに、インターネット上の速度測定サイトなどで、高い値を出すという満足感を得ることが目的でなければ、どの回線を選んでも大差はないということだ。
それどころか、体感速度的には以前の筆者宅の2~3Mbps時と比べても大差はなかった。もちろん、インターネット上から大きなファイルをダウンロードするときなどは、ダウンロード時間が多少短縮されるが、WEBページを閲覧したり1Mbps程度のストリーミングを見る程度であればその差を感じることはまずない。
そう考えると、ADSLに関して言えば回線事業者側がこれ以上速度の向上に努めるのは、あまり意味がないのかもしれない。次世代ADSLとして16Mbpsや20Mbps超の規格も検討されているが、安定性の向上や距離の延長を多くのユーザーにもたらした12Mbpsでその進化を止めてもいいのかもしれない。むしろ、今後、検討すべきは、光ファイバー系の事業者のように、その速度を活かすためのコンテンツの整備などになると言えるのではないだろうか。
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2003/1/14 11:18
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