第96回:Yahoo! BB 45M開通!
各事業者の40/45Mサービスを比較する
個人情報漏洩などで何かと話題が多いADSL業界だが、そんな中、筆者宅にYahoo!BBの45Mサービスが開通した。はたして、26Mから乗り換える価値はあるのか? 他事業者のサービスに比べてアドバンテージはあるのだろうか? これらの点について検証していこう。
●26Mサービスからの高速化を確認
あくまでも技術的な観点から見た場合に限れば、今回のYahoo!BB 45Mは、それなりに期待してもよさそうなサービスだ。筆者宅(線路長1.57km、伝送損失28dB)にて開通した回線で、実効速度を計測してみたところ、下りで10Mbpsを超える速度を確認できた。従来の26Mサービスが実効速度で8Mbps前後だったことを考えると、2Mbpsほどの速度向上を果たした結果になる。
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26Mサービスと45Mサービスを同一環境にて比較。実効速度で2Mbpsの速度向上が見られた |
残念ながら、同社のサービスの場合、モデムの仕様上リンク速度や接続されている規格などを確認することはできないが、おそらく26Mも45Mも同じダブルスペクトラムで接続されている可能性が高い。オーバーラップやATMヘッダ圧縮などの使われている技術も同等であることを考えると、あくまでも推測にすぎないが、この速度向上はモデムの性能向上によって実現されたと考えられる。
インターネットの使い方を考えると、2Mbpsの速度向上が実現できたとしても、使い方や体感速度はそれほど変わらないかもしれない。ただし、26M(4,028円)と45M(4,133円)では、月額料金に100円程度の差しかない。12M以下のサービスからの変更となると、月額料金の差が440~840円もあるので乗り換えも躊躇されるが、少しでも高速な環境が欲しいというのであれば、乗り換えを検討してみる価値はあるだろう。
●Centillium陣営に迫る実力
では、他事業者の回線と比較した場合の実力はどうだろうか? これも結果的には優秀だ。筆者宅で利用している40/45Mサービスの各回線の実効速度を以下の表にまとめてみた。
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アッカ・ネットワークス、イー・アクセス、Yahoo!BBの各40/45Mサービスを比較。インターネット上の速度測定サイトで実効速度を計測した |
結果を見ると、10Mbpsを切る速度しか出なかったアッカ・ネットワークスの40Mサービスに対して、Yahoo!BB 45Mは、イー・アクセスのADSLプラスQと並んで10Mbpsオーバーの実効速度を実現できている。これまでは、アナログ回路の性能向上によって、全体的な速度向上を実現したイー・アクセス、NTT東西のCentillium陣営が速度的には圧倒的に有利だったが、アッカ・ネットワークスと同じConexant(旧GlobespanVirata)陣営のYahoo! BBでも、これに並ぶ速度を実現できていることになる。
同社は、リリースで発表されている以外の技術的な内容を公開しない事業者だが、同一環境で、しかも同じConexant製チップを採用したアッカ・ネットワークスよりも高速であることを考えると、何らかの新しい高速化技術が採用されている可能性も考えられる。前述したようにモデムの性能向上により、高速化が実現できているのか、何らかの新技術が採用されているのか、それともその両方なのか、現段階では判断しかねるところだ。
●技術的にはすばらしいが……
このように、Yahoo!BB 45Mは、確かに従来の26Mサービスに比べてアドバンテージがあり、他事業者のサービスにも引けを取らない実力を備えていると言える。
ただし、繰り返すが、これはあくまでも技術的に見た場合の話だ。ご存じの通り、同社は個人情報の漏洩という大きな問題を抱えている。これを考慮すると、単に技術的に優れているからといって、他事業者から乗り換えることはもちろんのこと、素直に26Mから45Mへと移行することも躊躇してしまうかもしれない。もちろん、素早い事後対応は評価できるが、一度失った信頼を取り戻すには時間がかかることが多い。技術的に勝れているだけに、このような事件がなかったらと惜しまれるところだ。
ちなみに、個人的には、今回事件が発覚したYahoo!BB、アッカ・ネットワークスよりも、それ以外の事業者の動向の方が大いに気になる。今回の事件発覚後、両事業者は情報の管理体制を大幅に強化した。逆に言えば、それほど慎重にならなくては、個人情報は保護できないということなのだろう。
では、両事業者以外の対応はどうなっているのか? 残念ながら、これは明らかになっていない。データーベースにアクセスできる人数は? パートナーへの情報提供状況は? などなど、気になる点はいくらでもあるだろう。
個人情報が漏洩した事業者を解約して他事業者に乗り換えるという選択肢も確かにある。しかし、だからといって、他事業者が安全かどうかの判断もできないという状況でもある。おそらく、今回の事件を教訓に、他事業者でも個人情報の管理体制が何らかの形で見直されているかと思う。であれば、ユーザーが安心してADSLを使えるように、その管理体制を明らかにしてほしいところだ。
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2004/4/6 11:00
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