第100回:1万円で始められる手軽な無線LAN
プラネックス「BLW-04GZ-PK」
プラネックスから、IEEE 802.11gに準拠した無線LANルータとカードのセット「BLW-04GZ-PK」が発売された。この製品の最大の特徴は、何と言ってもその価格だ。本体とカード1枚のセットで約1万円という価格のこの製品、実力はどれほどのものなのだろうか?
●IEEE 802.11bよりも安いIEEE 802.11g製品
BLW-04GZ-PK |
ネットワーク機器の価格は、ここ数年で驚くほど安くなった。有線ルータなどは3,000~5,000円から購入できるし、NICに至っては数百円でも購入できてしまう。もちろん、その一方で数万円もするハイエンド向けの製品が存在することも確かだが、性能重視の製品と価格重視の製品という二極化が進んでいると言っていいだろう。
無線LANにも、この傾向が顕著に表われるようになってきた。これまでの無線LAN製品は、2万円を超えるIEEE 802.11a/b/g準拠製品、15,000円前後のIEEE 802.11g準拠製品、1万円程度のIEEE 802.11b準拠製品に大きく分類できたが、ここに来てIEEE 802.11gとIEEE 802.11bの価格差がかなり埋まってきた(いずれもカード同梱モデル)。
その代表とも言えるのが、今回、プラネックスから新たに登場した「BLW-04GZ-PK」だ。IEEE 802.11gに準拠した無線LANルータ本体と無線LANカードのセットで、参考価格10,479円とかなり意欲的な価格設定がなされている。コレガからも802.11g準拠のカードセットモデルで13,000円前後という製品が発売されているが(CG-WLBARGP-P)、BLW-04GZ-PKは、それよりもさらに安く、場合によっては他社製の802.11b準拠製品よりも安い価格になっている。
無線LANは利用したいが、費用が気になるという人には朗報だろう。これならお小遣いの範囲内で、気軽に無線LANを導入することができる。
●機能的には必要十分
もちろん、いくら価格が安くても、機能が備わっていなければ話にならない。その点、BLW-04GZ-PKの実力はいかがなものなのだろうか?
まず、外観で目を引くのはそのサイズだ。最近のルータは低価格モデルを中心に小型化が進んでいるが、本製品もサイズ的にはなかなか小さい。昔のアナログモデムを彷彿とさせるサイズで、4ポートのハブと同じくらいの大きさになっている。
もちろん、単に小さいだけでなく、必要なポート類やランプに過不足もない。背面にもきちんと可動式のアンテナが装着されている。デザインや質感は、やはり低価格モデルであることを意識させられるものの、それほど悪くはない印象だ。
サイズはコンパクトで、デザインもシンプル。質感は値段なりといったところ | 背面にはAUTO-MDIX対応の4ポートハブとWANポートを装備。アンテナも可動式 |
機能的に見ても、インターネット接続やフィルタリングといったルータとしての基本機能に加え、SPIによる簡易ファイアウォール、UPnP、VPNパススルー、ダイナミックDNSなどにも対応。無線LANに関しても、WEP、MACアドレスフィルタリング、ESS-ID通知可否などをきちんと押さえており、WPA(PSKによるTKIPのみ)にも対応している。一般的な用途であれば、必要十分な機能だろう。
WPA(TKIP)もサポート。必要最低限の機能が備わっている |
機能的に足りないものを挙げるとすれば、PPPoEマルチセッションと無線LANのフレームバースト系技術くらいだ。PPPoEマルチセッションには将来的なファームウェアアップデートで対応予定となっているが、フレームバースト系の技術に関しては、特にメーカーからは何もアナウンスされていない。BLW-04GZ-PK本体に採用されている無線LANチップがMARVEL製となっているので、これが原因かもしれない。
●性能は価格なり
一方、速度を中心とした性能に関しては、価格なりと言えそうだ。さまざまなテストをしてみたが、有線の実効スループットは22Mbps前後、無線は18Mbps前後という結果となった。
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また、暗号化の設定によっては、さらに速度が低下する傾向も見られた。BLW-04GZ-PKではWPA(TKIP)をサポートしているが、これを設定すると1割~2割ほど、さらに速度が低下してしまう。AESが利用できれば、また結果は違っただろうが、ソフトウェア処理のTKIPでは、速度の低下も致し方ないところだろう。
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最近の無線LAN製品は、有線で60~70Mbps、無線でもフレームバーストやSuper A/Gなどの技術によって30Mbps以上の実効スループットを実現できることが珍しくはない。それを考えると、ワンランク下の性能と言えそうだ。
ただし、ワンランク下とは言っても、実用上は何の問題もないだろう。さすがに数百MB~数GBといったファイルを転送するとなると辛いが、インターネットに接続して、ホームページを閲覧したり、メールを送受信するのには、ほとんどストレスを感じない。
遮蔽物がある環境での特性もそれほど悪くはなく、筆者宅の1Fに本体を設置し、2Fのクライアントから速度を計測してみたところ(床1枚、壁1枚を隔てる環境)、2Fでも14Mbps前後の速度を実現できた。これくらいの速度を実現できれば、合格点と言って良いだろう。
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●初心者向けの配慮がもう少し必要
このように、さすがにハイエンド製品と比べると機能的、性能的には劣るものの、価格を考えればBLW-04GZ-PKを選ぶメリットは十分にあると言える。
ただし、個人的には気になる点がいくつかある。ひとつは、MACアドレスフィルタリングの動作だ。本製品では、MACアドレスフィルタリングの設定が有線と無線で共通になっている(許可、拒否両方の設定が可能)。この仕様は初心者泣かせだ。設定が有線にも適用されてしまうと、不用意にアクセス拒否設定を行なったが最後、初期化しない限りどのクライアントからもアクセス/設定が不可能になる。有線のMACアドレスフィルタリングが必要だと考えるのであれば、せめて無線と別々に設定できるようにすべきだ。
有線、無線に関係なく適用されてしまうMACアドレスフィルタリング。不用意に設定すると、初期化することになりかねない |
また、これは筆者側のPCに原因がある可能性もあるのだが、付属のクライアント用ユーティリティの動作が、多少不安定だった。具体的には、WEPの設定を行なった場合、必ずはじめの接続に失敗し、手動で接続しなければならなかった。
Windows XPのワイヤレスネットワークを利用した場合は、このようなトラブルは見られなかったので、環境によっては付属のユーティリティを使わない方がいいかもしれない(ユーティリティではTKIPも設定できないので、いずれにせよTKIPを使いたい場合はワイヤレスネットワークを使うしかないが……)。
さらに、細かな点だが、本体側でWEPキーの入力形式が16進数しかサポートされていないにもかかわらず、付属のユーティリティではWEPキーの入力形式が標準でASCIIになっているのも非常に気になる。設定の知識があれば、入力形式を16進数に変更すればいいだけだが、これだけで設定につまづいてしまう初心者もいる。
本来であれば、「無線LANの入門に最適な低価格機」といったようなキャッチコピーを付けたい製品だが、エントリー機として考えるならこういった点は気になるところだ。世の中の風潮もそうだが、個人的にも、初心者にこそWEPやMACアドレスフィルタリングをきちんと設定してもらいたいと考えているので、ぜひとも今後改善を望みたいところだ。
関連情報
2004/5/11 11:07
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