第157回:ブロードバンドルータにもギガビット時代が到来か?
全ポートが1000BASE-T対応したコレガ「CG-BARPROG」



 コレガから、LAN/WANの全ポートがギガビットイーサネットに対応した有線ルータ「CG-BARPROG」が発売された。1GbpsのFTTHサービスが開始されたこともあり、高い注目を集めている製品だ。実際に、その実力を検証してみよう。





現実的になってきたギガビットイーサネット環境

WAN/LANともにギガビットイーサネットに対応した「CG-BARPROG」

 読者の中には、そろそろギガビットイーサネット環境への移行を考えているというユーザーもいることだろう。PCに1000BASE-T対応のLANポートが標準搭載されはじめたほか、1000BASE-T対応のハブも低価格化が進み、5ポートクラスの製品であれば5,000円前後で購入できるようになった。1000BASE-Tに対応したNASなども多数の製品が存在し、大容量のファイルを転送する場合などは非常に便利だ。

 このような状況の中、コレガから新たに発売されたのが1000BASE-Tに対応した有線ルータ「CG-BARPROG」だ。これまでにも1000BASE-T対応のルータは存在したが、LAN側のみが1000BASE-Tに対応しているなど、完全にギガビットイーサネットに対応する製品は少なかった。

 これに対して、CG-BARPROGはLAN/WANすべてのポートが1000BASE-Tに対応しており、WAN側も含めた完全なギガビットイーサネットの環境を手軽に構築できる。現状、WAN側で1Gbpsの速度を実現する回線サービスは非常に限られるが、回線環境が整っている、もしくは家庭内LANを高速化したいユーザーであれば、利用を検討しても良い製品だろう。


本体前面本体背面




実効スループットを検証

 早速その実力を検証していこう。本製品の最大の注目点は、やはりその速度だ。ギガビットイーサネット環境でどれくらいのスループットを実現できるのか、大いに気になるところだ。

 しかし、残念ながら筆者宅には100MbpsのFTTH回線しか導入されていない。そこで、WANポートとLANポートにPCを直結し、ローカルで速度を測定してみた。

JumboFrame OFFJumboFrame ON(7418)
GET468.72Mbps486.76Mbps
PUT500.28Mbps553.98Mbps
※クライアント:Pentium4 630、RAM1GB、HDD160GB×2(RAID0)、Windows XP SP2
※サーバー:Athlon64 3000+、RAM1GB、HDD160GB、Linux(FedoraCore2)
※サーバーをWANポートに、クライアントをLANポートに直結して計測
※計測にはWindows XPのコマンドプロンプトのFTPを利用


 結果は上記の表の通りだ。LAN側に接続したクライアントから、WAN側に接続したサーバーに対してFTPによるファイル転送を実施してみたところ、おおむね500Mbpsの通信速度が得られた。当然と言えば当然だが、100BASE-TXにしか対応しないルータに比べるとはるかに高いスループットだ。

 なお、CG-BARPROGはJumbo Frameにも対応しており、最大で9,216バイトまでフレームサイズを拡張することが可能だ。上記のテストでも、Jumbo Frameを7418バイトに設定した場合の値を掲載している。

 ただし、この値は参考程度に考えて欲しい。というのも、今回のテスト環境では、クライアント側ではJumbo Frameが設定できたものの、サーバーとして利用したPCでは、ドライバの関係でJumbo Frameの設定を適切に行なうことができなかったからだ。このため、速度が若干向上しているように見えるのは誤差の範囲であり、今回のテストではJumbo Frameは適切に機能していない可能性がある。実際のインターネット接続でも、WAN側でJumbo Frameが利用できるとは限らないため、Jumbo Frameがオフの時の値を実際の速度として考えた方がいいだろう。


Jumbo Frameに対応。設定画面で9,216バイトまでの値を設定できる。Jumbo Frameの利用でサイズの大きなデータの転送などを効率よく行なうことが可能だ




100Mbps環境で使うメリットは?

 本製品では、1Gbpsに対応したブロードバンド環境さえ用意できれば、高速なインターネット接続環境を実現することは十分に可能だ。しかし、前述の通り1Gbpsの回線サービスは限られる。現状は、関西でFTTHサービスを提供しているケイ・オプティコムの1Gbpsサービス「eo光ネット(ホームタイプ 1ギガコース)」程度で、ほかのサービスはアクセスラインこそ1Gbps対応を謳っているものの、宅内に引き込んだ段階では100Mbpsにしか対応していない。

 では、100MbpsのFTTH環境でCG-BARPROGを利用するメリットはどうだろうか。実効で500Mbps近い速度を実現できる高い処理性能を考えれば、100Mbps環境でもルータのボトルネックを最小限に抑えることはできるはずだ。試しに、筆者宅で利用している100Mbpsの回線(TEPCOひかり)を利用し、インターネット上の速度測定サイト(RBB TODAY)で速度を計測したのが以下の表だ。

CG-BARPROGWZR-RS-G54HP
下り90.62Mbps86.02Mbps
上り20.48Mbps22.26Mbps
※クライアント:Pentium4 630、RAM1GB、HDD160GB×2(RAID0)、Windows XP SP2
※回線にTEPCOひかりを利用し、RBB TODAYにて速度を測定


 結果を見ると、CG-BARPROGでは下り90.62Mbpsと非常に高いスループットを実現できた。ただし、100Mbpsに対応したルータ(バッファロー WZR-RS-G54HP)でも、86.02MbpsとCG-BARPROGに近い速度を実現できている。インターネット上の速度測定サイトでは計測するタイミングによって誤差が生じやすいが、100Mbpsでは既存の高性能ルータをはるかに上回るほどのアドバンテージはなさそうだ。

 全ポートギガビットイーサネット対応以外の機能面では、ルータとしての機能に不足はないものの、この製品ならではという機能的な付加価値もほとんどない。本製品を積極的に選択するメリットが受けられるのは、ケイ・オプティコムの「eo光ネット(ホームタイプ 1ギガコース)」ユーザーに限られそうだ。

 もちろん、ギガビットイーサネット対応のメリットがWAN側(インターネット接続)が十分に得られなかったとしても、LAN側(家庭内LAN)でのメリットは十分にあるだろう。家庭内で複数台のPCを利用してLANを構築していたり、NASでファイルを共有している場合であれば、ギガビットイーサネットによる高速化のメリットは大きいだろう。端末側もギガビットイーサネットに対応している必要があるが、家庭内LAN環境の高速化を考えるならば、本製品を考慮に入れるメリットもあると言える。

 ただし、機能面での充実はもう少し期待したいところだ。たとえば、バッファローの製品ではリモートアクセスやコンテンツフィルタといった機能がルータ製品に搭載されている。このように、速度以外の付加価値的な特徴が、何かもう1つでも欲しいと感じた。今後の市販ルータ、特に有線ルータの場合は、ほかの製品にはないような特徴をどのように出していくかが重要なポイントになるだろう。


関連情報

2005/7/26 11:03


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。