第259回:メールを使わない世代とのコミュニケーションを促進
FAXをメール経由で送受信できるNECのネットワークスピークス「SP-NA540」



 NECからネットワーク機能を備えた家庭用ファクシミリ「ネットワークスピークス(SP-NA540)」が発売された。携帯電話やPCのメールとFAXの間でのコミュニケーションを実現する、新しいスタイルの製品だ。その魅力を紹介していこう。





コミュニケーションの楽しさを誰にでも

ネットワークスピークス「SP-NA540」

 「メールが使えればもっと楽なのに……」。コミュニケーションの手段としてメールが一般化しつつある現在だが、まだまだメールのやり取りができず不満に思う場面も少なくない。

 他ならぬ筆者も、実家の両親とのコミュニケーションで「メールを使えれば」と感じることが多々ある。贈り物のお礼、誕生日や記念日などのちょっとしたお祝い、普段の何気ない会話などなど、メールを使ったコミュニケーションができれば楽なのだが、両親はPCはおろか、携帯電話さえも音声通話以外はまともに使ってくれない。

 使い方がわからないというのであればまだしも、「面倒だ」などと一言で済ませられてしまうと、こちらとしても対処のしようがない。

 その一方で、実は、これとは逆の悩みもある。

 我が家の娘は、祖父母との対話を非常に楽しみにしているのだが、まだ幼いことからメールは使えないため、電話でのコミュニケーションが主になる。新しいものに興味を示す年頃なだけに、メールへの興味があるようなのだが、文字入力はまだまだ難しいようだ。

 要するに、「使い方はわかるが面倒」「使いたいが使い方がわからない」という、世代の違う2組が存在するわけだが、この間でメールでのコミュニケーションを成立させる効率的な手段が現状はないというわけだ。

 そんな中、NECから登場したのが、このネットワークスピークス「SP-NA540」だ。見た目は普通のFAXだが、「紙でEメール」という機能によって、携帯やPCとのコミュニケーションを手軽に実現できるようになっている。


NECの「ネットワークスピークス(SP-NA540)」。見た目は普通のFAXだが、メールの送受信機能を備えており、紙とメールのコミュニケーションを実現する




FAXによるコミュニケーションをもう一度

 ネットワークスピークスに搭載されている「紙でEメール」は、FAXと携帯電話やPCの間での双方向のコミュニケーションを実現するための機能だ。

 この機能は具体的な手順を見るとわかりやすい。たとえば送信の場合、まず書類や手書きの文字などをネットワークスピークスにセットする。ここまで通常のFAXの送信とまったく同じだが、違うのは送信先として相手のFAX番号ではなく携帯電話やPCのメールアドレスを指定する点だ。これにより、紙のデータがネットワークスピークスによってスキャンされ、JPEGなどの形式の添付ファイルとしてメールで送信される。


紙の文書をメールで送る手順。紙の原稿をセットし、電話帳から送信先のメールアドレスを選択して、送信するメールの送信が完了すると、携帯電話などにメールが届く。本文は定型メッセージとなるセットした原稿は添付ファイルとして送信される。ズームなどを利用すれば携帯電話でも十分に閲覧可能

 最近、書類などのやり取りの方法として、紙をスキャナで読み込んでPDFなどにしてからメールで送信することがよくあるが、これとまったく同じイメージだ。

 もちろん、双方向なので、メールや画像などをFAXとして受信することも可能だ。あらかじめネットワークスピークス用にメールアドレスを1つ割り当てておき、そのアドレス宛に携帯電話やPCからメールを送ってもらう。すると、定期的にネットワークスピークスがメールをチェックし(手動受信も可能)、受信したメールをランプで知らせる。あとは必要に応じてプリントすればいいというわけだ。


携帯電話からのメールを受信する手順。携帯電話などからメールを送信。写真などを添付することも可能あらかじめ指定した間隔で自動的にメールチェックされ、メールを受信。手動で受信することもできる

受信したメールは紙にプリントして確認する。文字の視認性は高いが、写真は解像度の関係で少々見づらい。撮影時の解像度を高くすればもう少し見やすくなるだろう

 PCや携帯電話がまだ普及していなかった時代、文字によるコミュニケーションの手段としてFAXが使われた時代があったが、そのときのことを思い出してしまった。ただし、当時と異なるのは、FAXだけでなく携帯電話やPCなどを相手に双方向のコミュニケーションができるという点だ。冒頭で書いた通り、今まではメールを使っていなかった人たちでも、「面倒なく」「カンタン」にメールを介したコミュニケーションを楽しめることだろう。

 実際、本製品を前述した我が家の娘に使わせてみたが、紙をセットし、電話帳から送りたい相手を選んで、スタートボタンを押すというわずか3ステップでメールを送信できるため、即座に使い方をマスターし、そのコミュニケーションの楽しさに目覚めてしまった。

 おかげで、電話帳に登録されている家族や親類に、ほぼ毎日、片っ端からメールを送るようになってしまったが、娘にしてみると自分が描いた絵や文字がそのまま届くということが何より面白いようだ。確かに、手書きの絵や文字によるコミュニケーションというのは、FAXならではの楽しさと言えるだろう。

 もちろん、地図や案内のチラシなどを送信するのにも適している。同時に送信できる宛先は5件までに限られているが、メーリングリストなどを活用するのも1つの手だ。





初期設定だけは工夫が必要

 ネットワークスピークスは、使い方自体は非常にカンタンなのだが、初期設定に関しては本体の使いやすさに比べるとやや難易度が高い。

 前述したように、ネットワークスピークスではスキャンした紙をメールで送信したり、自分宛のメールを受信するという仕組みになっている。このため、PCのメールと同様に、メールサーバーやメールアドレスなどの情報をあらかじめ設定しておかなければならない。

 この設定は本体のディスプレイを見ながらボタン類で設定することもできるが、ネットワークを利用してPCから設定することも可能だ。PCからブラウザを利用してネットワークスピークスの設定画面にアクセスすると(IPアドレスなどは本体ディスプレイで確認可能)、ネットワークやメールの設定、さらに電話帳の編集などが可能となっている。


メールの設定などはPC経由での設定が手軽。Yahoo!メールなどのアドレスもPOPアクセスを有効にすれば利用可能

 メールを利用してFAXを送受信したい場合は、送信元として利用するメールアドレスや送信に利用するSMTPサーバのアドレス、受信に利用するPOPサーバーやアドレスなどを本体に設定しておく必要がある。

 本製品の使い方として、たとえば実家の両親に使わせたいなどという場合もありそうだが、そうなるとネックになるのはこの設定を誰が行なうかということだ。場合によっては初期設定でつまづいてしまう可能性があるので、現地に行って設定してあげるか、あらかじめ設定を済ませてから送るなどの方法が必要だろう。

 なお、本製品で利用する受信用のメールアドレスに関しては、できれば専用のアドレスを取得したい。自動到着確認などでメールを自動的に受信する場合、そのアドレスにほかのメールが届いていると、それも一緒に受信してしまう。筆者が試してみた限りでは、SMTPの設定でSMTP認証を有効にし、プロバイダのOutbound Port 25 Blocking対策でSMTPポート番号を587に設定することで、Yahoo!のメールアドレスを利用することもできたので、受信用のメールアドレスとして取得すると良いだろう。

 また、メールフィルタリストとして、受信を許可する送信元メールアドレスを最大20件まで登録することもできる。この機能を利用すれば、特定の相手からのメールだけを受信し、スパムなどを自動的に排除することができる。メールをやり取りする相手が限られている場合は、あらかじめて設定しておくと良いだろう。


メールを使わない世代とのコミュニケーションの橋渡し役に




メールを使わない世代とのコミュニケーションの橋渡し役に

 このようにネットワークスピークス「SP-NA540」は、FAXとのコミュニケーションが可能な相手の範囲を広げ、メール利用の敷居を下げた製品だが、単なる手軽なFAXというわけではなく、実用上の機能も充実している。

 例えばネットワークスピークスでは、受信したファックスをメールで転送したり、ネットワーク経由でPCから参照することも可能だ。SOHOや小規模オフィスなどの環境であれば、FAXを受信したことをメールで知らせるようにしたり(受信内容も確認可能)、受信したFAXをPCからブラウザで参照することなどもできる。


受信したFAXはPCからブラウザ経由で閲覧したり、メールの添付ファイルとして転送することもできる。さらに専用ソフトでPCに保存することも可能だ

 このほか、付属のユーティリティを利用することで、受信したFAXをネットワーク上のPCに自動的に保存したり、ネットワークスピークスをスキャナとして利用することで文書などをPCに取り込むこともできる。

 また、電話の機能として「さかのぼり録音」も搭載。通話終了後でも最大45分間さかのぼって会話を録音したり、聞き直すことができるようになっている。電話で聞いた大切な内容を忘れたとか、トラブルの証拠などとして録音しておきたいなどといった場合にも便利だ。

 個人的には、紙のデータを携帯電話で持ち歩きたいときに利用するのも便利だと感じた。たとえば、紙の地図などをネットワークスピークスから自分の携帯電話のアドレスにメールしておけば、その地図を添付ファイルとしていつでも確認できる。紙データから携帯電話という直接的なデータ転送の経路として利用できるのは意外に便利だ。

 できれば、カラーの送受信に対応し、さらに無線LANも内蔵してくれれば機能的には文句なしだが、そうなると価格も高くなるので、バランスとしては現状の機能のままでも悪くないだろう。メールをあまり使わない世代とのコミュニケーションはもちろんのこと、もっと効率的にFAXを活用したいというユーザーにおすすめしたい製品だ。


関連情報

2007/9/4 11:01


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。