第301回:ネット経由で購入した映画をDVDに書き込めるレコーダ
DVD Burningに対応した東芝「VARDIA RD-S502」



 東芝のレコーダ「VARDIA RD-S502」がファームウェアのアップデートによってKDDIの「DVD Burning」に対応した。インターネット経由でDVDに直接コンテンツを書き込めるサービスだ。その使い心地を実際に試用した。





DVD Burningをリビングで

RD-S502

 昨年9月にKDDIがサービスを開始したDVD Burning。従来はPCでしか利用することができなかったこのサービスにレコーダとして対応したのが、今回取り上げる東芝のRD-S502だ。

 と言っても、製品自体は先行して発売されており、今回のサービスへの対応は放送波でのバージョンアップによって実現されている。6月30日に配布が開始された新しいファームウェアを適用することによって、RD-S502(およびRD-S302)でDVD Burningが利用可能になったというわけだ。

 PCでの利用となると、書き込みツールのインストールなど若干敷居が高い印象があるが、これがリビングのレコーダで手軽に利用できるようになったおかげで、より身近な存在になったという印象だ。


東芝のDVD/HDDレコーダ「RD-S502」。発売後のファームウェアアップデートでKDDIのDVD Burningに対応した
背面に搭載されたLAN端子を利用して、DVD Burningへのアクセスとコンテンツダウンロードを行う
付属のリモコン。DVD Burningへは「番組ナビ」からアクセスできる




PC向けサービスで申し込みが必要

 本サービスは前述したようにPC向けの「DVD Brurning」を利用するため、あらかじめサービスへの加入申し込みが必要になる。

 この申し込みはレコーダから行うことはできず、あらかじめPCを利用して申し込みをしておく必要がある。登録は無料だが、コンテンツ購入時の決済はクレジットカードで行われるため、カード番号の登録などの作業が必要になる。

 なお、すでにDVD Burningに登録している場合は、会員情報の変更作業でレコーダ用のIDを取得することでサービスを利用可能となる。PC向けのDVD Burningは、メールアドレスとパスワードをアカウントとして利用するが、レコーダでは文字入力の簡易さを重視してか、これとは別に数字のIDとパスワードを利用することになる。

 IDは10桁の数値が自動的に発行されるが、パスワードに関しては個別に設定する必要があるため、わかりやすいものをDVD Burningのユーザー情報ページから登録しておくと良いだろう。


DVD Burningの利用にはPCからの申し込みが必要になる。すでに会員の場合は通常のIDのほかに、レコーダーから利用するためのIDとパスワードを別途登録する必要がある




「番組ナビ」の一項目としてシームレスに利用できる

 登録が完了すれば、すぐにレコーダからサービスを利用できる。

 リモコンの「番組ナビ」ボタンを押すと、番組表の画面の一項目として「DVDBB」が表示される。「DVD Burning」は、従来のレコーダにはなかったサービスであり、仕組みとしてもインターネットからコンテンツをダウンロードして直接DVDに書き込むなど少々複雑であるため、機能としては特別な存在と言えるが、メニューは番組表などと同じ扱いとなっており、ユーザーに仕組みやインフラを意識させない工夫がなされている。


DVD Burningはテレビなどと同じコンテンツのひとつという考え方。このため、番組ガイドの中からアクセスできるあらかじめWebサイトで取得しておいたユーザーIDとパスワードを入力することでアクセスできる

 メニューの構成もRDシリーズのインターフェイスがそのまま利用されているため、派手さはないものの、RDシリーズの慣れた感覚でスムーズに操作できる。コンテンツを選べば、タイトルの紹介がテキストで表示されるだけでなく、パッケージ写真や映画のダイジェスト画像が一定時間おきに切り替わりながら表示されるなど最低限の演出もなされており、悪くはない印象だ。


 もちろん、もっとジャンル選択などの画面を見やすくするなどの工夫は欲しいところだが、限られたレコーダのリソースを考えれば、頑張ったと評価しても良いだろう。


RDのユーザーインターフェイスに同化したDVD Burningの操作画面。操作自体は違和感なくできるが若干味気ないコンテンツを選ぶと、番組説明に加え、パッケージ写真やシーンの位置が切り替わりながら表示される

ダウンロードするまでの操作の様子




ダウンロード中はほかの操作は制限される

 ダウンロードに関しては、コンテンツの再生時間よりは短いものの、それなりに時間はかかる印象だ。

 NTT東日本のFTTHを利用して筆者宅でテストした限りでは、メディアの初期化を含めたダウンロードにかかった時間は、30分番組の場合で20分前後であった。コンテンツの時間はもちろんのこと、回線速度や書き込みに利用するメディア(今回は2倍速対応DVD-RWを利用)によって若干の違いがある可能性もあるが、実際にコンテンツが見られるようになるまでには待ち時間が必要な点には注意が必要だ。


ダウンロードの進捗はリモコンでドライブをDVDに切り替えると確認できる。コンテンツサイズや回線速度などによるが、コンテンツ再生時間と同等、もしくは若干短い時間でダウンロードできる

 このようにコンテンツのダウンロードに時間がかかることから、実はいつダウンロードを開始するかというのがなかなか重要になる。と言うのは、ダウンロード中は、現在放送中の番組の表示やHDDに録画した番組の再生をすることは可能だが、新たに番組を録画することはもちろんのこと、番組表を表示するなど、ほとんどの操作が制限されるからだ。

 いくつかのシチュエーションで試してみたところ、番組を録画中のダウンロードはできないだけでなく、数分後に録画予約が設定されている場合もダウンロードを開始することができなかった。コンテンツによっては1時間程度ダウンロードに時間がかかる可能性も考えられるため、うまく予約と予約の空き時間を狙ってダウンロードするしかないだろう。


ダウンロード中は、HDDに録画した番組の再生以外、ほとんどの操作が禁止される。なお予約が間近の場合はダウンロードを開始できない

 ダウンロードしたコンテンツに関しては、RDで再生できるのはもちろんのこと、CPRM対応のDVD-RW、DVD-RAMを再生できる環境なら問題なく視聴することができる。PCで見たり、他社製のレコーダーで再生するなど、幅広い用途で使えそうだ。





価格と価値を一致させられるか

 このように、KDDIのDVD Burningを東芝のRDシリーズから利用してみたが、PCからの申し込みが必要な点が若干面倒なものの、リビングで手軽にDVDを購入できるのは、なかなかメリットがありそうだ。

 しかしながら、PC向けのサービスのサイトにアクセスしてみればわかるが、正直なところ、タイトルのラインナップが魅力的とは言いがたい。それなりに、新作映画が提供されていたり、お笑いなどのコンテンツも少なくないのだが、通常のSTBを利用したブロードバンド映像配信サービスなどと比べると若干見劣りする。

 アクトビラなどでは、テレビで放送されたアニメを数週間後に配信するといったように、なるべく新しいコンテンツを配信する努力がなされているが、DVD Burningで提供されるコンテンツの多くは古いものが多く、新鮮さが感じられない(あえてその層を狙っているとも言えるが……)。

 それでいてコンテンツの価格は、980円などのリーズナブルなものもあるが、映画などでは3000円前後と決して安くない。セルDVDの流通革命と考えれば価格も納得できなくはないのだが、コンテンツの価値と価格に納得できないという人も少なくないことだろう。

 今回のRDシリーズの対応でプラットフォームが拡大されたことは歓迎すべき点だが、サービスの内容の充実にさらなる期待をしたいところだ。


関連情報

2008/7/15 11:03


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。