第300回:指定アドレス限定のメール機能を追加
バッファロー「ぱそこんキッズキー」



 バッファローから発売されている「ぱそこんキッズキー」に、メール機能が新たに追加された。携帯電話を中心に未成年者のネット利用の規制が注目されているが、そんな状況の中で追加されたメール機能の使い勝手を検証した。





“新機能”が追加された「ぱそこんキッズキー」

 つい先日、我が家の娘から、「パソコンに何か出てきた。パパに相談してって書いてる……」という話をされた。

 以前に本コラムでも紹介したが、筆者宅ではバッファローの「ぱそこんキッズキー」を使って子どもにパソコンを使わせており、このアップデートの案内がデスクトップにアイコンとして表示されていたのだ。


ぱそこんキッズキー「BFG-PKID-TG」の画面。先日からアップデート案内が画面上に表示されるようになった
(C)BANDAI・WiZ 2004

 当然、事前に「ぱそこんキッズキー」にメールソフトが追加されたというニュースは目にしていたのだが、まさか子ども側の画面にそのおしらせが表示されるとは思わなかったので、少々面食らった。

 個人的には、小学1年生の娘に、まだメールはいらないと考えていたので、しばらく先に試してみるつもりだったが、このお知らせに書いてある「新機能」という文字に興味津々の娘からの要求もあり、急遽試してみることにした。


新しく追加されたキッズキーメール。子ども向けのシンプルなデザインのメールクライアント
(C)BANDAI・WiZ 2004
利用にはメールソフトのダウンロードに加えて、my BBコミュニケーターへの加入申し込みが必要。アドレスは「username@my.bbcc.jp」となる。

 と言っても、一般的なメールクライアントが追加されたわけではない。具体的には、ソフトバンクBBが提供するISPフリーの050番号IP電話やメールなどが利用できる「my BBコミュニケーター」というサービス専用のメールクライアントとなっており、利用にはmy BBコミュニケーターの契約が必要となる。

 もちろん、サービスへの加入によって050番号のIP電話サービスも利用できるのだが、子ども用のメールを使いたいだけで月額315円+ユニバーサル料6.3円という出費は、少々、考えてしまう。


 実際にキッズキーメールを利用するには、このサービスにオンラインで申し込みをした後、パソコンを保護者モードで起動し、キッズキーメールのアプリケーションをダウンロードしてインストールする。インストール後に設定画面でmy BBコミュニケーター加入時に発行されたメールアドレスとパスワードを入力し、さらにメールのやり取りを制限するための設定を行う。


メールソフトをインストールすると保護者モードでメールの設定が可能に。メールアドレスの設定に加えて、送受信できるメールアドレスを設定できる

 この制限が、キッズキーメールのポイントだ。Webの閲覧制限というのは良く耳にするが、今回のキッズキーメールではメールの送受信制限が可能となっており、あらかじめ指定したアドレスからのメールしか受信できず、送信先としてもあらかじめ設定したメールアドレスしか指定できない。

 つまり、両親と祖父母、仲の良い友達などとのコミュニケーションにだけ利用でき、迷惑メールなどを受信してしまう心配がない。また、見ず知らずの相手にメールを送る心配もないというわけだ(アドレスは選択式で入力できない)。


キッズキーメールのアドレスリスト。「メールができるひと」としてあらかじめ設定した相手のみが表示される。アドレスの手入力はできないため、この相手としかメールをやり取りできない

 もちろん、設定したメールは通常のメールクライアントやWebメールで確認できるため、サーバーに残す設定などにしておけば、子どもが送受信したメールを保護者が確認することもできるようになっている。

 個人的には、あまりに行きすぎた監視というのも考え物だと思っているが、メールをすべてチェックしたいという保護者にはありがたい機能だろう。


サーバーにメールを残しておけば、ブラウザを利用して保護者がメールをチェックすることがも可能




サーバーから指定アドレスメールのみ選択受信する

 というわけで、実際に子どもに使わせる前に個人的に試してみたのだが、機能的にはなかなかよくできている。

 許可したアドレス以外から、いくつか子ども宛にメールを送ってみたのだが、確かにサーバー上のメールボックスにはすべてのメールが保存されているものの、実際に子どものクライアントには、きちんと指定したアドレスからのメールしかダウンロードされない。

 一方、許可した保護者からのメールは、差出人がメールアドレスではなく、あらかじめ設定した名前(パパやママ)が差出人として表示されるため、誰からのメールかがすぐにわかる。添付ファイルの送受信ができなかったり(メッセージのみ受信可)、CCで送られたアドレスが表示されない(返信は許可されていれば可)などの制限はあるが、信頼できる相手とのメールのやり取りには確かに便利だ。


キッズキーメールのメイン画面。大きなボタンで送信者もわかりやすい
メールの送信画面。文字も大きく見やすい。手紙のような感覚で利用できる

 複数の子どもで1つのメールアドレスを共有することも可能となっており、この場合は子どものアカウントごとに、送受信可能なアドレスを個別に設定できる。このため、たとえば兄弟で、弟の友達からのメールは弟のアカウントでのみ、兄の友達からのメールは兄のアカウントでのみ、といったように選択受信によって個別のメールのように使うことが可能だ。これはなかなか斬新な発想だ。

 ただし、前述したように、このアプリケーションはmy BBコミュニケーター専用となっており、ISPなどのメールアカウントを設定することはできない(アドレスやサーバーの設定項目自体がない)。あくまでも専用サービスであるという点には注意が必要だ。


メールの基本操作をフラッシュで紹介したコンテンツも用意され、はじめてでも迷わず使うことができる




メールと連携するWebフィルタの搭載を

 このように、本サービスを利用すると子どもに安心してメールを使わせることが可能となるが、せっかくなので、この安心感をさらに発展させ、メールと連携するWebフィルタという使い方ができれば良いのにと感じた。

 具体的には、メールに記載されたURLを子どもが開けるようにして欲しい。

 メールのURLを開けるようにするというのは、一般的に考えれば、当然セキュリティ上問題がある。よって、今回のキッズキーメールでもURLは文字列としてしか認識されず、クリックしても開けないようになっている。

 もちろん、保護者設定で、ブラウザへのURL入力を許可するか、汎用ブラウザの利用を許可しておけば、URLをコピー&ペーストで開くことはできるが、ここで言いたいのは、これらの機能を禁止したままメールからのURLだけは開けるようにして欲しいということだ。


メールにURLを記載してもクリックできない。信頼できる相手からのメールを開けるようにした方が実用的だし、Webフィルタとしての可能性も広がる
現状はブラウザのアドレス入力を許可することで対処できるが、これでは自由にWebを閲覧できてしまう

 なぜなら、キッズキーメールの場合、メールの送受信を信頼できる相手にのみ限定することができる。つまり、メールに記載されたURLというのは、基本的に信頼できる相手の目によって選別されたものであると想定でき、これが良い意味でのWebフィルタリングとして機能すると考えられるからだ。

 たとえば、子どもが宿題の調べ物で標準で許可されているサイトを検索したものの、なかなか思うように情報を集められなかったとしよう。そこでメールを使って父親に助けを求める。すると、父親は自分のパソコンで参考になりそうなURLをいくつかピックアップし、それをメールで返信する。

 この際、キッズキーメールであらかじめ父親からのメールのURLのみ開けるようにして設定おけたとしたら、子どもは父親の目という人力フィルタを通過したWebのみ閲覧できることになるわけだ。

 もちろん、友人から好ましくないURLが知らされるというようなことを防ぐために親のメールアドレスからのメールでしか開けないようにするとか、アクセス先はメールに記載されたドメインのみに限られ、そこから外へは出られないようにするなど、さらなる工夫は必要だが、これこそが他人や機械任せではない、本当の意味のフィルタリングではないかと個人的には思えるのだ。

 この繰り返しで蓄積されたURLをデータベース化すれば、それこそ安全性の高いホワイトリストとして機能することにもなるはずで、相手も保護者だけでなく、学校の先生やボランティアなどと範囲を広げていけば、そこに多様性を持たせることも可能となる。

 要するに、大切なのは、何を許可するかを決める保護者も、規制される子どもの側も、相手の姿や考え方を理解し、お互いに納得した関係の元で判断基準を決めるということであり、そうでない単純な規制というのは意味がないということだ。





保護者と子どもの両方がしあわせになるソリューションを

 このように、ぱそこんキッズキーはパソコンの利用制限という子どもにとって決して嬉しくはないことを、楽しいキャラクターやコンテンツなどでエンターテイメントとして提供した画期的な製品であり、今回のキッズキーメールの追加は、その世界を広げることに一役買っているという印象だ。

 しかしながら、個人的には、そもそもmy BBコミュニケーターを使わなければならない点も費用面で気になることに加え、できればもう一歩、踏み込んだソリューションの提案が欲しかった。メールが使えるのは子どもにとってうれしいし、その送受信先を制限できることは保護者にとってもありがたい。しかしながら、現状の機能だけでは、メールによる保護者とのコミュニケーションから何が生まれるかが想像しにくい。

 単に送受信先を限定した安全なメールというだけでなく、その限られたコミュニケーションから何が生み出せるかという提案がもっと欲しい。

 個人的には、前述したようにメールを介した保護者とのコミュニケーションの中で、フィルタリングの精度が向上していくとか、逆に制限が緩和されていくといったような、人が介在するシステムというのをぜひ提案して欲しい。こういった点は、ぜひ今後のバージョンアップで期待したい。


関連情報

2008/7/8 11:03


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。