第306回:4th MEDIA、オンデマンドTV、OCNシアターを1つに集約
NTTぷららのSTB型映像配信サービス「ひかりTV」



 4th MEDIA、オンデマンドTV、OCNシアターを統合したNTTぷららの「ひかりTV」。7月末から既存サービスの移行も開始され、ようやく本格稼働となった印象だ。実際のサービスを検証してみよう。





サービス統合の難しさ

 料金も違う、サービス内容も違う、STBも違う……、などなど、いろいろな面で違いがある3つのサービスの一本化をよくもまあ成し遂げたものだ。

 今年3月、4th MEDIA、オンデマンドTV、OCNシアターを統合したNTTぷららの「ひかりTV」が開始されたが、先行して開始されていた新規申し込みのサービスに対して、既存ユーザーのサービス移行が7月末あたりから順次開始となった。

 筆者宅では、検証用に4th MEDIAとオンデマンドTVの両方に加入していたが、この2つのサービスが奇しくも同じものとなったわけだ。サービス移行案内が2通届いた一方、届いた交換用チューナーは1台(もう一方はファーム更新で対応)、それでいてサービス移行時期だけにサポートセンターになかなか電話が通じないなどと、なかなかややこしい状況になっていたが、サービスの統廃合も含めて、ようやく我が家でも使えるようになった。

 6月の既存サービス停止から、顧客情報の移行、案内、チューナーの配布、サポート対応と、サービス提供事業者側はここ数カ月まさに修羅場だったのではないかと思われるが、いちエンドユーザーとしてもサービスが切り替わることの面倒さを実感した。

 まだ一部でファームウェアの更新などで混乱はあるようだが、何とか新サービスでの発進にこぎ着けたのではないだろうか。





多彩なSTBによって生じる差

 しかし、今回の統合で興味深いのは、環境によって利用しているSTBが実に多彩なことだ。

 筆者宅は、結局、旧4th MEDIAを残したため、4th Media時代から利用していたPicture Mate 300というSTBをファームウェアアップデートで利用することになったが、同じ4th MEDIAでも環境によっては「Picture Mate 100/200」「Streamnig Player」「Stream Cruiser」、場合によっては東芝REGZA内蔵チューナーを利用するケースもある。

 また、旧オンデマンドTVでは「PC-STB4」(他機種の場合は交換)、OCNシアターでは既存チューナー継続利用となっており、さらに新規加入の場合は「Picture Mate 700」というSTBが利用されるなど、STBの種類が実に多い。


統合によって、新旧とりまぜて多彩なSTBが存在するサービスに

 それでも、サービス内容が同じならユーザーとしては別に意識する必要はないのだが、残念ながら現状はSTBによってUIや操作感が異なる状況になっている。

 ひかりTVの標準的なUIは「Picture Mate 700」が基準になると思われるが、グレーを基調とした画面の中心にプレビュー動画、左側にチャンネル一覧、右側に「テレビ」や「ビデオ」、「カラオケ」などの機能という構成になっている。


最新のSTBとなるPicture Mate 700。新規加入の場合はこのSTBが提供される

ひかりTVのトップ画面。左側にチャンネル、右側に機能、中央にプレビュー動画が表示される

 UIも、旧オンデマンドTVの操作感が踏襲されており、非常に扱いやすい。中でも特徴的なのはビデオサービスのコンテンツの選択だ。画面上のコンテンツはジャンルとサブジャンル、コンテンツという階層に分かれており、リモコンの左右ボタンで「洋画」や「邦画」、「アニメキッズ」といったジャンルの選択、上下ボタンや決定ボタンでサブジャンルへの移動、さらに上下ボタンで選択したサブジャンル内のコンテンツの選択と、各階層を十字ボタンと決定ボタンによる直感的な操作で移動できる。


UIはオンデマンドTVの操作感を踏襲。ジャンルなどからコンテンツを選びやすい

 もしかすると、4th MEDIAやOCNシアターから移行した人にとっては、慣れるまで時間がかかる可能性もあるが、このUIは映像配信サービスの中ではかなり優秀と言えるだろう。

 ただし、操作レスポンスに関しては、あまり快適な印象がなかった。今回は最新のSTB「Picture Mate 700」を利用してコンテンツリストの取得やサムネイル画像などの読み込みに時間がかかっているようで、操作してから画面が表示されるまでに若干のタイムラグを感じた。

 このPicture Mate 700は、起動時にデータをキャッシュする仕様になっているらしく、この作業が完了するまでは(接続後2時間前後)、若干、操作がもたつくケースも報告されているので、これが影響している可能性もある。

 一方、旧STBの場合は、正直がっかりするかもしれない。筆者宅ではPicture Mate 300をバージョンアップして利用しているが、同じなのはロゴぐらい。画面イメージはブルーを基調したもので、操作感もPicture Mate 700とはかなり異なる。

 もちろん、ハードウェアの制約がある以上しかたがないのだが、同じサービスなのに、こういったあたりで差が付いてしまうのは、少々残念な印象だ。


Picture Mate 700(左)とPicture Mate 300(右)。Picture Mate 300はファームウェアのアップデートでひかりTVに対応可能

Picrute Mate 300の操作画面。画面イメージも、操作感も新サービスとはかなり異なる




サービス内容は充実

 しかしながら、サービスが統合されたことによって、コンテンツはかなり充実した。

 テレビサービスに関しては、70チャンネル以上の専門チャンネルが視聴可能となり、ビデオサービスについても見放題プランの対象が5000コンテンツ、総本数では1万コンテンツという圧倒的な量を誇る。


テレビサービスやビデオサービスは統合によってかなり充実した

 現状、インターネットを利用した映像配信サービスとしては、対応テレビと回線さえ用意すれば利用でき、基本料も不要な「アクトビラ」がもっとも手軽なサービスと言えるが、いかんせんコンテンツの数が少ない。

 アクトビラとひかりTVでは提供されるコンテンツ(特に洋画系)に違いがあるので、個人的には併用するのがベストだと考えるが、このコンテンツの充実はひかりTVならではの特徴と言えるだろう。

 また、カラオケサービスも1万3000曲が利用可能となっており、まさに従来の3つのサービスの「いいとこ取り」といった印象だ。

 もちろん、その分の料金は上がっており、たとえばテレビサービスとビデオサービスの両方を利用できる「お値うちプラン」は月額3,675円となっている。オンデマンドTVのように、従来のサービスを利用していたユーザーに関しては、2008年12月まで従来の料金(よくばりプラン月額3,150円)が適用されるケースもあるが、プランによっては従来よりも月額料金が高くなる場合もある。

 また、提供地域が限られているものの、NGNのフレッツ光ネクストを利用すれば、地上デジタル放送の再送も受けられるようになっている。CATVとの競争という点でも互角以上の戦いができそうだ。

 ただ、地上デジタル放送に関しては、家庭内の複数台のテレビから同時に視聴できるという手軽さという点で、NTT東日本のフレッツ・テレビ(光の多重化を利用)の方が利便性が高いこともあり、NTTグループの映像配信サービス間で若干棲み分けが微妙な印象もある。

 いずれにせよ、ビデオ配信サービスと専門チャンネル放送に関しては、事実上一本化されたことで選択肢としての迷いがほぼなくなったと言えるだろう。


関連情報

2008/8/19 10:55


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。