第305回:ワンセグを見ながらみんなでおしゃべり
ワンセグとチャットを融合したジー・モード「おしゃべりテレビ」



 ジー・モードから、ワンセグによるテレビ放送とチャットによるコミュニケーションを融合させた新しいサービス「おしゃべりテレビ」のベータテストが開始された。高校野球やオリンピックの時期に最適なサービスを実際に試用した。





一人でも一体感

 今でも忘れられないのが、2006年3月19日に行われたワールドベースボールクラシックの準決勝第2試合韓国戦。スタメンを外れていた福留選手(現カブス)が代打で先制の2ランホームランを放ったときの盛り上がりと言ったら、それはもう試合を見ている全員が一体となるすざまじいものだった。

 いや、残念ながら現地で応援していたわけではない。家でテレビ中継を見ながら、同時に2ちゃんねるの実況版を見ていたのだ。

 不調のため、スタメン落ちしていた福留選手が代打として登場したときの賛否両論の書き込み。それが、一転、3球目がライトスタンドに突き刺さると同時に、まさにリロードが追いつかないほどの賞賛の書き込みで一斉にあふれかえったのは実に感動的だった。

 あのとき筆者は確かに家で一人テレビを見ていたが、まるで大勢で一緒に応援しているかのような一体感を味わった。なるほど、テレビとコミュニケーションを組み合わせると面白いことができるのだと、肌で感じた瞬間だった。





サービスとしてようやく登場

 あれから2年。そんなテレビとコミュニケーションの組み合わせを手軽に楽しめるようにしたサービスがようやく登場した。ジー・モードが8月からベータテストを開始した「おしゃべりテレビ」だ。

 前述したように、テレビを題材にしたコミュニケーションというのは、インターネット上の掲示板などでこれまでにも存在した。しかし、これらはテレビとPCが個別のサービスとして提供されており、連携するものではなかった。

 このため、テレビはテレビ、掲示板は掲示板と個別に楽しむことはあっても、テレビと掲示板を組み合わせて利用するという楽しみ方はさほど一般的とは言えない状態だ。

 これに対して、今回の「おしゃべりテレビ」は、テレビとコミュニケーションをうまく融合させたサービスとなっている。

 具体的には、ワンセグチューナーのアプリケーションとサービスを連携させることができるようになっている。「おしゃべりテレビ」のアプリケーションを起動すると自動的にワンセグ用のアプリケーションが起動。さらに「おしゃべりテレビ」のアプリケーションで特定のチャネルのルームにアクセスすると、ワンセグのチャネルもそれに応じて自動的に切り替わるようになっている。

 もちろん逆も可能で、たとえばワンセグ側で高校野球を見るためにNHK総合にチャンネルを変更すると、自動的に「おしゃべりテレビ」もNHK総合(1番)のルームへと切り替わる。これにより、同じテレビ番組を見ているユーザー同士で、リアルタイムに会話を楽しむことができるというわけだ。


おしゃべりテレビに対応したワンセグチューナー「GV-SC300(アイ・オー・データ機器)」。現状は対応機器は限られるワンセグチューナーのアプリケーションに連動して、アバターによるチャットを楽しめる




アバターを利用した応援ができるうえ掲示板の書き込みも表示可能

 このような「おしゃべりテレビ」の特徴は、単純な掲示板、チャットアプリケーションとは異なり、自分の分身である「おしゃべりフレンズ」と呼ばれるアバターを利用してコミュニケーションを楽しめる点だ。

 書き込んだメッセージは、アバターがしゃべったように吹き出しとして表示されるようになっている。また、現状はアバターの種類は限られているのだが、マウスのクリックを「旗を振る」「ウェーブ」などのアクションに割り当てられるため、単純に文字で感想や応援メッセージを書き込むだけでなく、アクションで応援することができるようになっている。


現状は種類は少ないが、アバターの外見を変更することも可能。また、「旗を振る」「ウェーブ」「ジャンプ」などのアクションを設定し、動きで応援することもできる

 このため、チャットは初めて、もしくはあまり得意ではないという人でも、ルームに参加してアクションで応援しながら、ほかの人のメッセージを見て楽しむという使い方もできるだろう。

 また、インターネット上の掲示板とも連携できるようになっている。標準設定では2ちゃんねるの実況版が外部リンクとして登録されており、ここに書き込まれたメッセージが「外部リン君」と呼ばれるNPのアバターの発言として画面上に表示されるようになっている(表示のみで書き込みはできない)。


外部リンクによって掲示板などのメッセージも画面に表示可能。標準では2ちゃんねるの実況版が設定されている掲示板のメッセージは外部リン君と呼ばれるアバターの吹き出しメッセージとして表示される

 このため、「おしゃべりテレビ」の参加者が少ない場合でも、掲示板のメッセージが常に表示されるため、独特の寂しさや気まずさを感じることがない。テレビ+実況版という使い方にプラスして、さらにおしゃべりテレビの参加者同士でのコミュニケーションという、言わば二重の楽しみ方ができる。

 実際、現状の「おしゃべりテレビ」は、高校野球のような実況に適したと思われる番組でも、4~5人ほどの参加者しかいない。もちろん平日の昼間ということもあるだろうが、会話もあまり頻繁には行われていない。

 しかし、外部リンクのおかげで、点数が入ろうものなら外部の書き込みが溢れかえり、参加者は少ないながらも盛り上がりを見せてくる。4~5人のルームであっても、背景に「キターーーーー」などという文字が乱舞していれば、少人数でも会話が盛り上がってくる。

 外部リンクに頼りすぎるとますます会話がなくなり、結果として単なるビューアのようになってしまいそうな心配もあるが、コミュニティとして何かが強制されない気楽さというのはなかなか心地良い。


高校野球で点数が入った瞬間。掲示板の「キターーーーー」などの書き込みで、人数が少なくとも盛り上がりを見せる




オリンピックの応援に最適

 「おしゃべりテレビ」はコミュニケーションを目的としたサービスではあるが、積極的に発言しなくとも楽しめるサービスとなっている。テレビを見ながら、他の人のメッセージを読む。普段独り言をテレビに言うように書き込んでみる。そんな気軽な使い方もできるので、PCならではのテレビの楽しみ方ができるサービスと言えそうだ。

 ただ、実際に使ってみて感じたのは、やはり参加者の方向性が一致していないと盛り上がりに欠けるということだ。たとえば、高校野球の場合、どちらのチームを応援するかでメンバーが二分されると、これはこれでなかなか気まずい。

 また、ドラマなどはどちらかというと静かに見ていたい性格のため、逆にメッセージがうるさく感じられることもある。

 よって、おしゃべりテレビで盛り上がれるのは、オリンピックで日本人選手を応援するように、参加者全員の方向性が一致している場合が最適だろう。これなら、一緒に応援している感じがして発言しやすいし、何より一体感が生まれて感動を共有できる。今後、いろいろな競技が行われることを考えると、その応援の楽しみ方の1つとして利用を検討してみるのも良いのではないだろうか。


オリンピックの日本入場の時の様子。掲示板の書き込みも多く、20人以上とかなりの人数が参加したおかげで、メッセージを読み切れないほどの盛り上がりだった

関連情報

2008/8/12 11:14


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。