第361回:撮ってつなぐだけでカメラの映像をネットに公開
エグゼモード「ServersMan Scooop by EXEMODE」
エグゼモードから、インターネットへの公開機能を搭載した低価格Webビデオカメラ「ServersMan Scooop by EXEMODE」が発売された。フリービットの「ServersMan mini」を利用することで手軽に写真や映像を公開できるのが特徴だ。その使い勝手を検証してみた。
●理屈不要で利用できる
エグゼモードの「ServersMan Scooop by EXEMODE」。直販サイトの価格は7980円 |
「ServersMan Scooop by EXEMODE(以下、ServersMan Scooop)」を実際に使ってみて、「もう難しい理屈はいらないんだな」と、つくづく実感させられた。
「ServersMan Scooop」は、撮った映像や写真を手軽にインターネットに公開できる小型のWebビデオカメラだ。本体で写真や映像を撮影後、PCにUSBで接続。記録メディアのSDメモリカードに標準で同梱されているソフトウェアを起動するだけで、インターネット上に写真や映像を公開できる。
「ポートやNAT、グローバルIPアドレスの設定は?」。本製品ではこうした事柄を一切考える必要はない。PCにつないで公開するだけで、あとは他のPCから「http://serversman.net/[username]-node/」にWebブラウザでアクセスすれば、本製品で撮影した写真を見たり、映像を再生することができてしまう。
Windows 7が対応する「リモートメディアストリーミング機能(関連記事)」も、外出先からのアクセスするという点ではかなり良くできたソリューションだと感じたが、本製品は機能こそ限定されるものの、使い勝手ははるかに手軽だ。もはや、インターネットで何か情報を公開するのに、難しい理屈はいらないというわけだ。
●ハードウェアは及第点
撮影時の様子。液晶を見ながら撮影する。大きさは手のひらサイズ |
とは言え、理屈も少しは知りたいので、実際の動作などを検証しながら、もう少し詳しく見ていこう。
本体は縦型で、サイズは60×119×24mm(横×縦×厚さ)となっている。携帯電話などと比べると若干大きく、厚さもあるため、コンパクトとは言いにくいが、重量は約85g(本体のみ)と持ち運びには困らない重さだろう。
既視感のある中央の円形のデザインは個人的にどうも馴染めない感じだが、本体側面のスイッチをスライドさせると上部からUSBコネクタが飛び出す仕組みは、利便性も高く、面白味もある。
本体正面 | 側面 | 背面 |
前面には2型のTFTカラー液晶ディスプレイと3つの操作用ボタンが搭載されており、液晶画面で被写体を確認しながら、背面の固定焦点レンズで写真や映像を撮影するという使い方になる。カメラは130万画素のCMOSイメージセンサーで、撮影サイズは720×480/640×480/320×240ピクセルの3種類。いずれもフレームレートは30fpsとなり、動画の保存形式はAVI(コーデックは映像がMotion JPEG、音声がPCM)だ。
記録メディアは、本体に内蔵する32MBのフラッシュメモリに加え、側面スロットにSD/SDHCメモリカードを装着できる。利用可能な容量は、SDメモリカードが最大2GB、SDHCカードは8GBまで。
画質は悪くない印象だ。Webカムコーダーと謳うとおり、撮影した映像をインターネットで公開することを前提に作られているため、飛び抜けて高画質というわけではないが、720×480ピクセルなどで撮影すれば、それなりに視聴できる印象だ(Youtubeにアップロードしたサンプル映像)。
側面にSDメモリカードスロットを搭載。電源は単4形乾電池を3本利用する | 側面スイッチをスライドさせるとUSB端子がポップアップする | ライトも搭載。暗い場所でも何とか撮影できる |
電源には単4形乾電池を3本利用し、連続撮影時間はカタログ上1時間23分となっている。Webでの公開を前提とした映像と考えると連続撮影時間は十分だろう。また、乾電池であれば、いざという場合でも利便性が高そうだ。
●「ServersMan mini」を使ってネットに公開
ここまでハードウェアに関して触れてきたが、本製品の場合、ハードウェアそのものはそれほど重要な要素にはならない。最大の特徴は、前述したように撮影した映像を手軽にインターネットに公開できる点にあるからだ。
この機能は、フリービットが開発した「ServersMan mini」によって実現されている。フリービットでは、iPhoneやiPod touch、Windows Mobileをサーバーとして利用できるアプリケーション「ServersMan」シリーズを提供しているが、この発展系となるのが今回採用された「ServersMan mini」だ。
本製品の側面スロットには、標準で2GBのSDメモリカードが装着されているが、この中に「ServersMan mini」のアプリケーションがインストールされている。そして、本製品をUSB経由でPCに接続して「ServersMan mini」を起動することで、PCをサーバーとして動作させることが可能になるのだ。なお、初回起動時にはメールアドレスやパスワードの登録が必要になる。
アプリケーションといっても、実行ファイルと設定ファイルだけの簡単な構成のため、インストール作業は必要なく、EXEファイルを起動するだけで利用できる。対応OSはWindows Vista/XPだが、筆者環境ではWindows 7での動作も確認できた。
フリービットの「ServersMan mini」。インストール不要で、ネットワーク設定も不要。起動するだけで、手軽にインターネット経由でのアクセスが可能になる |
仕組みとしては、フリービットの仮想ネットワーク技術「Emotion Link」を利用しており、フリービットのネットワークを介して「ServerMan mini」とアクセスする側の機器をエンドツーエンドのセキュアな環境で接続するという形態になっている。
なお、「ServerMan mini」を起動すると、画面上にIPv6のアドレスが表示されることからもわかる通り、通信にはIPv6を利用している。ただし、トンネリングを利用していると考えられるが、自宅側でIPv6が使える環境を用意する必要は一切ない。ルータの内側はIPv4によるネットワーク環境で問題なく利用可能だ。また、通信はSSLで暗号化されている。
NAT越えは、内部から開始した通信のセッションを維持することで実現しているようで、そのポートには「80」と「443」を利用する。このため、これら2ポートがフィルタリングされていると、サーバーとして動作させることはできない。
試しに、「Windows ファイアウォール」で80番ポートをフィルタしたところ、「ServersMan mini」の起動に失敗。また、443番ポートをフィルタした際には、起動はするものの、サーバー公開時にエラーが発生した。
外部からの通信は関係ないため、80番ポートや443番ポートがルータ側でポートフォワードされていても問題ないが、企業などでWebサイトの閲覧にプロキシを利用している場合などは注意が必要かもしれない。
●公開フォルダは固定、書き込みも不可
このように実際の動作は複雑なのだが、ユーザーが本製品を利用する際にはこれら動作を一切気にする必要はない。本製品をUSBでPCに接続後、起動した「ServersMan mini」の画面から公開する形式(標準/写真/映像タイプ)を選べば公開が開始される。そして、友人にメールなどで公開URLを伝えれば、相手が公開フォルダにある写真や映像の再生のほか、ファイルをダウンロードしたりできるというわけだ。
また、「YouTube」や「Flickr」にも対応しており、撮影した映像を「YouTube」を投稿したり、写真を「Flickr」にアップロードすることもできる。「ServersMan mini」では、カメラを電源オンでつなぎ、サーバーを動作させている間しか公開できないが、これらのサービスを利用すればいつでも相手に公開できるというわけだ。
他のPCからは「http://serversman.net/[username]-node/」にアクセスすることで手軽に映像を再生できる。公開方法はすべてのファイルを公開する標準タイプと、写真のみ、映像のみの3種類から選択できる |
もちろん、公開にあたってはアクセス用のパスワードも設定が可能で、特定の人に対してデータを公開することもできる。個人的には、「12時から18時まで公開」といったように時間設定が可能であったり、インターネット上のファイル転送サービスのように複雑なURLを自動生成して、パスワードなしでもファイルを受け渡せるようになると便利だと感じたが、このあたりは今後に期待したいところだ。
YoutubeやFlickrにもアップロード可能 | アクセス制限の設定も可能 | 公開フォルダの変更とアップロードはできない |
なお、利用にあたっては2点ほど注意点があげられる。まず1点目は、公開できるフォルダが「x:\DCIM\100MEDIA」に固定される点だ。カメラの映像や写真を公開することが目的なので、当たり前と言えば当たり前だが、これ以外のフォルダを指定することはできない。USBストレージなのでドライブが変更されても問題ないが、フォルダは固定されており変更できない(設定ファイルを直接編集しても書き戻される)。
2点目としては、ファイルのアップロードにも対応していない。iPhoneなどで利用可能な「Serverman」では、フリービットのサイト経由でアクセスすることで外部からファイルをアップロードすることができるが、本製品ではこの機能はサポートされない。
社内ネットワークに接続されたPCに本製品が接続された場合、外部からカメラ以外のフォルダにアクセスできたり、書き込みが可能だと、セキュリティ上の重大な問題にもなりかねない。これを避けるための制限だと考えられる。
●家電製品への展開に期待
以上、エグゼモードの「ServersMan Scooop by EXEMODE」を利用してみたが、オンデマンドサーバーとでも言おうか、パートタイムサーバーとでも言おうか、公開したいときだけ手軽にサーバーを構築できるというのは、なかなか面白い発想だと感じた。
確かに、PCを普段利用していると、「このデータを、この人に、今だけ見せたい、渡したい」というニーズが少なからずある。通常であればファイル転送サービスを利用するが、本製品を利用すれば自宅から公開できるし、そもそも写真や映像ならPCに取り込む必要すらなく撮ってそのまま公開できる。価格が7980円と安いことを考えても、1台持っていても損はない製品と言えそうだ。
また、ここまで手軽になると、いろいろな機器で使えるようになって欲しいところだ。今回のWebビデオカメラも悪くはないが、市販のデジタルカメラやビデオカメラなどにも同梱されると便利だろう。また、帯域や著作権の問題はあるが、レコーダに搭載されればどこからでも録画した番組を見られる可能性がある。こういった今後の発展にも期待したいところだ。
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2009/9/29 11:00
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