第358回:DTCP-IP対応になった「プレイステーション 3」

他社製サーバーとの相互接続をチェック


 9月3日に新モデルが発売され、従来モデルを含めて最新ファームウェア「バージョン3.00」の提供が開始された「プレイステーション 3(PS3)」。最新ファームウェアの中で注目される点の1つが著作権保護技術「DTCP-IP」への対応だ。今回はDLNAサーバー機能を持つ複数の機器を用意して、PS3との相互接続性をチェックした。

「バージョン3.00」でDTCP-IPをサポート

筆者宅のPS3でも、ファームウェア更新によってDTCP-IPに対応する

 薄くなった新型PS3「CECH-2000A」の国内発売に先行すること2日。9月1日から従来モデル向けに最新ファームウェア「バージョン3.00」の提供が開始された。

 6月に公開された「バージョン2.80」から「バージョン3.00」へのメジャーバージョンアップだけあって、「XMB(クロスメディアバー)」などのユーザーインターフェイス系の変更に加え、音声の同時出力機能、HDD内に保存した動画の言語/音声設定、ワイヤレスコントローラの右スティックを使った早送り/早戻し操作への対応など、多数の変更が加えられている。こうした中で、ネットワーク機能で注目すべき点は、なんといっても「DTCP-IP」に対応したことだろう。


9月1日に公開された新ファームウェア「バージョン3.00」画面デザインも一部変更されている

 地上デジタル放送などの著作権保護されたコンテンツを、ネットワーク経由で他の機器に配信するためにはDTCP-IPへの対応が必須になる。しかし、PS3ではこれまでDLNAに対応していたものの、DTCP-IPは実装されていなかった。

 DTCP-IPに関しては、デジオンが7月にDTCP-IP対応のネットワークメディアプレーヤーソフト「DiXiM Digital TV(標準価格4980円)」を発売した。一方、マイクロソフトの次期OS「Windows 7」では対応が見送られたこともあり、普及はまだ先かと思われたが、今回のPS3での対応でわずかながら一歩先に進んだ印象だ。

 現状の対応状況を見ると、サーバーはHDDレコーダー、クライアントは家庭用テレビと、PC関連製品よりもデジタル家電製品での対応が進んでおり、PCは若干蚊帳の外に置かれた印象もあり、今後の普及を期待したいところだ。

東芝、パナソニックのレコーダーでテスト

 話をもとに戻そう。今回、PS3がDTCP-IPに対応したことで、HDDレコーダなどに録画したデジタル放送の番組をネットワーク経由で視聴できることが若干身近になったわけだが、問題はサーバー側をどうするかという点だろう。

 以前と比べると、相性というか、メーカー独自のローカライズによる接続性の悪さは解消されつつある。しかし、まだまだきちんと接続してコンテンツを再生できるかは実際に試してみないとわからないという不確実な状況にある。

 そこで今回は、手元にあるいくつかのDTCP-IPおよびDLNAに対応した機器を用意し、PS3を含めた各種クライアントとの相互接続を検証した。テストに使用したのは、サーバー側が東芝のHDDレコーダー「RD-S303」とパナソニックの「DMR-BW830」、アイ・オー・データ機器のUSBキャプチャユニットと組み合わせたPC上のソフトウェア「DiXiM Media Server 3 for mAgicTV」、そして、7月にDTCP-IP対応のファームウェアが公開されたバッファローのLAN接続型HDD「LS-XH500L」の4製品だ。なお、LS-XH500Lに関しては、東芝の液晶テレビ「REGZA」で録画した番組をムーブした上でテストしている。

 一方のクライアント側は、PS3に加えて、PCにインストールした「DiXiM Media TV」、家庭用テレビとして東芝「42ZV500」、ソニーの「KDL-20J3000」の4製品を用意した。なお、PS3とソニー製のHDDレコーダ「BDZ-L95」のテストは、AV Watchがすでにレポートしているので、そちらを参照して欲しい。


DLNAなので他社製サーバーと接続できてくれないと意味がない。今回のテストに使ってパナソニックの「DMR-BW830」加えて、他のクライアントも相互接続をチェック。PC用としてデジオンの「DiXiM Media TV」を利用した

高い互換性を持つPS3のDTCP-IP

最初にDTCP-IPを有効にする必要がある

 テスト前の準備としては、「バージョン3.00」へのファームウェア更新に加え、DTCP-IPの有効化の操作が必要になる。これは、XMBの設定メニューから「本体設定」を表示して、「DTCP-IPを有効にする」を選んで機能を有効にすれば良い。これにより、ネットワーク内にあるDLNAサーバーがPS3のXMB上に表示され、各機器に録画した地上デジタル放送番組などをPS3で再生できるようになるはずだ。

 肝心の結果だが、以下の表のようになった。PS3の結果を見ると、バッファローの「LS-XH500L」以外は問題なく接続でき、パナソニックの「DMR-BW830」では「DRモード(MPEG-2 TS)」で録画した番組に加え、「HG/HX/HE/HLモード(AVCREC)」で録画した番組も問題なく再生できた。

 PS3自体、これまでもAVCHDのDLNAによる再生などが可能だったが、本体が多くのフォーマットをサポートしているため、DTCP-IPの場合でも、AVCRECやAVCHDのようなH.264系のファイルが再生できるというわけだ。


 ただし、東芝の「RD-S303」に関しては、同じH.264系でも「TSEモード」で録画した番組は再生できなかった。せめて、同じ東芝製品である液晶テレビ「42ZV500」からは再生できて欲しいところであるが、「42ZV500」は映像フォーマットとしてMPEG-2しか対応していないため、再生できなかった。

 また、バッファローの「LS-XH500L」では、「TwonkyMedia」をサーバーソフトに利用しているのだが、こちらは事実上、REGZA用となっており、PS3だけでなく、他のクライアントからも参照できない場合が多いので注意が必要だ。

 つまり、PS3をクライアントとして利用した場合、基本的にはMPEG-2 TSで録画したコンテンツは問題なく再生できるが、H.264系は必ずしも再生できるわけではない点には注意が必要だ。


各種サーバーをすべて認識。映像もMPEG-2 TS、AVCREC(H.264)を問題なく再生できたコンテンツを再生できない場合はエラーが表示される

ネットワーク負荷も低いAVCの再生

9月3日に発売されたPS3新モデル

 以上のように、DTCP-IP対応のDLNAクライアント製品としてPS3を考えると、かなり使い勝手が良い製品といえる。従来モデルを持つユーザーでも、サーバーを用意して試してみる価値はあるだろうし、ゲーム用途に加えてネットワークプレーヤーが欲しいと考えているユーザーも新モデルを選ぶメリットはありそうだ。

 特にH.264系の映像を再生できるのは有り難い。というのも、画質次第ではあるものの、ネットワークの帯域を抑えられるからだ。例えば、今回利用したパナソニックの「DMR-BW830」の場合、AVCRECモードのもっとも低い画質である「HL」モードのビットレートは4.3Mbpsとなっている。さすがに画質はそれなりになってしまうが、これぐらいのビットレートであれば、無線LANを使って再生しても問題ない。

 PS3の無線LAN機能は、新モデルを含めてIEEE 802.11b/gに準拠しており、最大通信速度は54Mbpsだ。無線LAN経由では、MPEG-2 TSで録画したデジタル放送を視聴するとなると、無線LANの電波状況が良くなければ厳しく、可能であれば有線LANを使用したいところだ。しかし、低ビットレートのH.264であれば、無線LANの電波状況をそこまで気にしなくても、映像を伝送できるだろう。

 最後になるが、PS3での操作性に関しても完成度は高く、早送りや早戻しなどの操作も可能だ。また、再生を途中で中止した場合でも、次回再生時に停止位置から再開できるレジュームにも対応しており、DLNAクライアントとして十分な機能を備えており、2万9980円の新モデルはネットワークプレーヤーとしてもお買い得な製品と言えるだろう。


関連情報

2009/9/8 11:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。