第376回:曜日や時間で省電力設定できる無線LANルーター
バッファロー「WHR-G301N」


 バッファローからきめ細かな設定が可能な省電力機能を備えたIEEE 802.11n/b/g準拠の無線LANルーター「WHR-G301N」が登場した。曜日や時間ごとにLEDや有線LAN、無線LANの状態を変更できるのが特徴だ。どれくらいの効果があるのかを実際に検証してみた。

300Mbps対応無線LANルーターを手頃な価格で


バッファローの無線LANルーター「WHR-G301N」。300Mbps対応の無線LANルーターながら低価格で、細かく設定可能な省電力機能を搭載している

 バッファローから発売された「WHR-G301N(標準価格9975円)」は、IEEE 802.11n/b/gに対応した無線LANルーターだ。バッファローが発売している無線LANルーターは、IEEE 802.11n/b/g&ギガビットイーサネット対応で、USB機器の共有も可能な「WZR-HP-G300NH(同1万3125円)」がハイエンドに位置している。また、ローエンドには150Mbps対応の低価格モデル「WHR-HP-GN(同7770円)」が存在しているが、「WHR-G301N」はこの中間を埋めるモデルとなっている。

 製品仕様としては、無線LAN機能はIEEE 802.11nで理論値で300Mbpsの通信に対応するが、有線LANは100Mbps対応にとどまり、USB機器の共有機能なども省略されている。これであれば、ハイエンドモデルの「WZR-HP-G300NH」を選びたくなるかもしれないが、「WHR-G301N」の実売価格は7000円台半ば前後と手頃な価格となっている。余計な機能はいらないので、最新の無線LAN規格に対応した製品が欲しいという場合に適した製品と言えるだろう。

 なお、同様の中間モデルは、これまで「WHR-G300N」が担っていたが、本製品はこの後継モデルとなっており、基本的な機能を継承しつつ、新たに高度な省電力機能と無線LAN中継機能を搭載しているのが特徴だ。

アンテナレスでも性能はじゅうぶん

 それでは早速製品を見ていこう。外見は従来の「WHR-G300N」とほぼ同じだ。上位モデルの「WZR-HP-G300NH」ともデザインは似ているが、「WHR-G301N」はアンテナが内蔵されており、よりスッキリとしたデザインに仕上がっている。


本体背面アンテナ内蔵となるため、外観はすっきりしている

 内蔵アンテナは受信×2、送信×2と、こちらも上位モデルに比べてそれぞれ1本ずつ少ないが、実際に使ってみた範囲では電波の届きは悪くない印象だ。以下のグラフは木造3階建ての筆者宅にて、1階に「WHR-G301N」を設置し、各フロアからインターネット上の速度測定サイトを利用して速度を計測したものだ。


グラフ1:」クライアントは「ThinkPad X200(Core2Duo P8400/RAM4GB/X25-M/Intel WiFi Link5300/Windows 7 Ultimate 64bit)」で、回線にはKDDIの「auひかり(1Gbps)」を使用した

 上りに比べて下りの速度がふるわないが、最大で90Mbps(上り)での通信が可能で、もっとも離れた3階からの計測でも実効18Mbps前後の通信を確認できた。これであれば、さほど離れていない場所で映像などを無線LANで伝送するのにもじゅうぶんな上、離れた場所でのインターネット利用も問題なくできそうだ。

 もちろん、より速い速度、より離れた場所で通信したい場合には、上位モデルをおすすめするが、見通しのいい場所や隣接する部屋同士の接続などであれば、本製品でもじゅうぶんな速度が得られるだろう。

 なお、「WZR-G301N」の無線チャネルは、標準設定で20MHzのチャネル幅しか利用できない設定になっている。チャネルの空き状況などを考慮する必要はあるが、速度が必要な場合は設定画面から忘れずに40MHz幅の利用を有効にして、300Mbpsでリンクさせるようにしておこう。


無線LANの設定画面。標準では帯域が20MHzに設定されている。300Mbpsでリンクするには40MHzに設定する必要がある。ただし、広い帯域を使う分、干渉に注意する必要がある

きめ細かな設定が画の可能な省電力機能

 機能面では、複数のSSIDを設定可能で、SSID間の通信を遮断できる「マルチセキュリティー(マルチSSID)」機能を搭載している。また、WPS/AOSSに対応したボタン操作による無線LAN設定、PPTPサーバー機能、フィルタリングサービス、本製品を複数台使って無線LANを中継するWDS機能などを用意しており、価格を考えるとかなり充実している。その中でも注目したいのが、きめ細かな設定が可能な省電力機能だ。

 省電力機能は、今や各社の無線LANルーターに搭載されるようになった機能の1つと言えるが、本製品では単純に電力を節約できるだけでなく、いつ電力を節約するかをスケジュールによって細かく指定できる。

 これは実際の設定画面を見た方がわかりやすい。以下は、本製品の省電力機能に関する設定画面だ。縦軸に曜日、横軸に時間をとったグラフが表示され、そこに無線LANルーターの状態が色分けして表示されている。


曜日や時刻で動作モードを切り替えられる。灰色が標準動作、赤はスリープ、緑はユーザー定義

標準時のLED。省電力モードにすると、このうちの電源ランプ以外が消灯する

 赤は無線/有線LANともに通信を停止する「スリープ」、緑は無線LANと有線LANの動作をユーザーが任意にカスタマイズした「ユーザー定義」、そして灰色の部分が通常の動作だ。面白いのは、このような動作を曜日ごと、時間ごとに細かく指定できる点だ。

 例えば、前掲した画面はオフィスなどでの利用を想定した設定だ。土日はスリープにして完全に動作を停止させ、早朝と昼休み、夜間はユーザー定義で無線LANを停止、有線LANの速度を10Mbpsに制限している。ただし、例外として早朝会議がある水曜と、残業が想定される休み前の金曜に関しては、通常動作の時間を延長するという設定になっている。

 ユーザー定義に関しても、LEDのオン/オフ、有線LANの通常動作/10Mbps/オフ、無線LANの通常動作/オフを自由に組み合わせられる。このため、有線LANだけ有効にするといった使い方はもちろんだが、逆に無線LANだけ有効にするという設定も可能だ。

 無線LANだけ有効にするというのは、考えてみれば確かに実用的な使い方だ。家庭などでは、PCやゲーム機は無線LANで接続し、有線LANにはインターネット対応テレビなど、限られた機器だけが接続されている場合も考えられる。それであれば、テレビでブロードバンド環境が必要な動画配信サービスを使う可能性がある土日のみ有線LANを有効にして、あとは無線LANのみで過ごすというのも実用的な使い方と言えそうだ。

 さて、このような設定で具体的にどれくらい電力が消費できるかを、ワットチェッカーで計測してみた。その結果、通常動作時の消費電力が7W、ユーザー定義(LEDオフ/有線LAN10Mbps/無線オフ)で5W、スリープで4Wとなった。つまり、最大で約半分ほど消費する電力を節約できることになる。


通常動作時は7W、スリープにすると4Wにまで消費電力を落とせる

 もちろん、家庭内にはさらに多くの電力を消費する機器があるので、それらに比べれば微々たる節約だが、それでも連続稼働させておく場合に比べればエコに貢献できるのは確かだ。

 なお、動作モードをスリープにすると、無線LANも有線LANも無効となるため、ネットワーク上のどの端末からもアクセスしたり、設定を変更することができなくなる。スリープモード中は、本体のAOSSボタンを3秒間長押しすることで有線LANを有効にすることができる。

他の機器との連携はできないか

 以上、バッファローの無線LANルーター「WHR-G301N」を実際に使ってみたが、IEEE 802.11n/b/gの無線LANルーターとしての完成度は高く、手ごろな価格の製品としてはお買い得感は高いと言えるだろう。

 ただ、ここまで細かな省電力設定がどこまで必要かは判断が難しいところだ。オフィスなど、とにかく1Wでも電力を節約しなければならないという場合には、まさにうってつけの製品と言えるが、家庭ではあまりシビアにルールを設定してしまうと、例外的な時間に使う場合などにかえって使いにくくなってしまう。このため、個人的には中小企業や個人事務所などのオフィスでの利用をおすすめしたい。

 また、個人的な要望としては、NASなどの他の周辺機器と連携できるようにして欲しいところだ。例えば、省電力機能を使ってネットワークを停止させた場合、当然ネットワーク経由でのアクセスはできなくなるが、一方でNASが起動しっぱなしになっていたら、もったいない話だ。

 もちろん、NAS側が持つ省電力機能を利用すればいいが、そうするとスケジュール管理が多重化して煩雑だ。例えば、プリンターや複合機なども含め、このような電源管理を統一したオペレーションで、しかも連動してできるようになれば、手間無く設定できる上、一時的に利用できる時間を延長するなどの例外処理もやりやすい。

 現状は、それぞれの機器が個別にエコ機能を搭載しているが、そろそろ統一された環境で制御できるようにしないと、かえって使いにくくなり、場合によってはユーザー離れを起こしてしまう可能性もありそうだ。


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2010/1/26 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。