第407回:地デジや光学ドライブなどのUSB機器も手軽に共有
バッファロー「USBデバイスサーバー LDV-2UH」


 バッファローから、USB機器をネットワーク経由で共有できるUSBデバイスサーバー「LDV-2UH」が発売された。光学ドライブやHDDなどに加えて、同社製のUSB地デジチューナーユニットなどを共有できるのが特長の製品だ。出荷前の評価用製品を実際に試してみた。

HDD、光学ドライブ、Webカメラ、地デジなどを共有

 バッファローから登場した「LDV-2UH」は、USB接続の周辺機器をネットワーク経由でPCから共有できるデバイスサーバーだ。

バッファローのUSBデバイスサーバー「LDV-2UH」。USB機器をネットワーク経由で利用できる

 同様の製品は、サイレックス・テクノロジー(SX-3000GB)やアイ・オー・データ機器(ETG-DS/US)からも発売されており、本コラムでも以前に取り上げたが、本製品も基本的には同様の製品となっている。

 USB機器をネットワークで共有する機器は、プリントサーバーを中心に比較的古くから存在した製品となっているが、今回登場したLDV-2UHを含め、最近のデバイスサーバーは非常に幅広い製品に対応しているのが特長。

 動作確認済みのUSB機器に関しては、同社の製品情報ページから確認できるが、これによるとプリンターはもちろんのこと、HDDやUSBメモリーなどのマスストレージクラス対応機器に加え、地デジチューナー、ウェブカメラ、スピーカー、マウス、さらにiPhone・iPod(一部機種除く)にも対応している。

 低価格のノートPCやモバイル向けのノートPCなどでは、光学ドライブが搭載されていないかったり、USBポートの数が限られる場合なども珍しくないが、こういったPCに、しかもワイヤレスで、幅広いUSB機器を接続できるのが魅力の製品だ。

手軽に利用できる

 では、実際に製品を見ていこう。まずは外観だが、本製品は1000BASE-Tに対応したネットワークポート×1、USB2.0対応のUSBポート×2を備えており、サイズは幅60×高さ95×奥行き28mm、重さ96gとコンパクトな設計になっている。

正面。比較的コンパクトなサイズ左側面にUSBポートを2つ搭載右側面に1000BASE-T対応のLANポートとACアダプタ接続用のポートを搭載

 使い方は非常に単純だ。ネットワークケーブルを接続後、ACアダプタを接続すれば自動的に電源がオンになるので、あとは共有したいUSB機器をポートに接続すれば、本体側の設定は完了となる。

 この状態で、ネットワークに接続されたPCに付属のメディアを利用してユーティリティをインストールすると、デバイスサーバー上の機器の接続や切断ができる。接続すると、PCからは、あたかもローカルにUSB機器が接続されたように見えるという仕組みだ。

 実際に使ってみると、ネットワークに接続されているとは思えないほど操作性が良い。ユーティリティの設定で、接続された機器を自動的に認識させるかどうかを設定できるのだが、自動的に接続する設定にしておくと、接続するだけで、すぐにPCに認識され使えるようになるので、まさにローカルのUSBポートと同じような感覚で利用できる。

LDV-2UHに地デジチューナーの「DT-F100/U2」とDVDドライブを接続。無線LANで接続したクライアントからDVDドライブを利用し、DT-F100/U2のドライバーをインストールした

 さすがに、ネットワーク経由となるため、HDDなどへのアクセス速度は低下するが、小さなファイルをコピーする程度であれば、あまり意識せずに利用できる。日常的に利用するHDDなどはローカルに接続するか、どうしてもネットワークで利用したいのであればNASを利用した方が良いが、光学ドライブなどは完全にローカルと同じ感覚で扱えるLDV-2UHを利用した方が利便性が高いだろう。

 なお、複数ユーザーでも利用可能だが、1台の機器を同時に利用できるのは1人のみとなる。このため、2つあるUSBポートに接続した機器をそれぞれ別のPCから利用することは可能だ。なお、他のユーザーが機器を使用中の場合は、切断要求を送信することができる。SOHOなどの現場で光学ドライブなどのUSB機器を共有したい場合にも対応できるだろう。

USB2.0接続のHDD(500GB)をローカルに接続した場合(左)と、LDV-2UH接続のIEEE802.11n/g無線LAN経由(右)での速度の比較。速度はローカルにはとてもかなわない
他のユーザーが使っているときは切断要求を送信することができる

バッファロー製機器を利用できる

 このように、USB機器をネットワーク経由で手軽に利用できるLDV-2UHだが、ここまでの機能については、前述したサイレックスやアイ・オー・データ機器の製品でも利用できる。

 では、LDV-2UHと、他社製品の違いは何があるのだろうか? 他社製品のカラーが白であるのに対して本製品が黒いこと、そしてユーティリティのデザインが若干違うことが目に付くが、そのほかの違いは気づきにくい。

 しかし、大きな違いが1つある。バッファロー製の機器がサポートされる点だ。たとえば、地デジチューナーが代表的だ。LDV-2UHでは、他社製のデバイスサーバーがサポートしていないバッファロー製の地デジチューナー(DT-H33/U2、DT-H10/U2、DT-F100/U2)をサポートしている。

 実際に、LDV-2UHとDT-F100/U2、そしてアイ・オー・データ機器のデバイスサーバー「ETG-DS/US」と同じく同社製の地デジチューナー「GV-MC7/VZ」を用意して、相互に接続してみた結果が以下の通りだ。


DT-F100/U2GV-MC7/VZ
LDV-2UH×(認識せず)
ETG-DS/US△(認識するが正常に動作しない)
アイ・オー・データ製のETG-DS/USでは、DT-F100/U2を認識するものの、そのほかのUSBデバイスとして扱われる。試してみたところ動作が極めて不安定で実用は難しかった

 同一メーカーの組み合わせの場合は問題なく機器を認識したが、やはり他社製の製品については機器をUSBポートに接続しても、デバイスサーバー上で認識されなかった。製品のしくみ上、デバイスサーバー上にドライバが存在しない機器については利用できないので、ドライバーが手元になく、しかもサポートできない他社製の製品は認識できないというわけだ。メモリ容量の問題で搭載できるドライバーの数も限られるのだろう。

 個人的には、メーカーを超えていろいろな機器を認識できるようにして欲しいところではあるが、この点は致し方のないところだろう。

 よって、価格も同じ(税抜き参考価格7400円)アイ・オー・データ機器の「ETG-DS/US」と、今回のバッファローの「LDV-2UH」のどちらを替えば良いかは、接続したいUSB機器がどちらのメーカーかで決めるのが正しい選択と言える。

 ちなみに、それぞれのメーカーの製品は、お互いのユーティリティからも認識しない。あまり多いケースとは言えないが、それぞれのメーカー固有のUSB機器を動作させるためにLDV-2UHとETG-DS/USの両方を導入した場合、それぞれを単一のユーティリティで管理することができないので困ったことになる。せめてユーティリティくらいは、マルチベンダー環境でも動くようにしていただけるとうれしいところだ。

同一ネットワーク上にLDV-2UHとETG-DS/USを設置。それぞれのユーティリティを1台のPCにインストールしてみた。個別に利用することは可能だったが、それぞれのユーティリティからお互いの製品を認識することはできない

地デジチューナーの視聴は環境次第

 このように、バッファロー製であれば地デジチューナーもネットワークで共有することができるが、実際にテレビを視聴できるかどうかは、ネットワーク環境が大きく影響する。

 木造3階建ての筆者宅にて、1階にアクセスポイントとしてバッファロー製のWZR-HP-AG300Hを設置し、ThinkPad X200内蔵の無線LAN(Intel 5300AGN)経由で、LDV-2UHに接続したDT-F100/U2を利用してみたところ、同一フロアとなる1階、1つ上の2階であれば、ごくまれに映像がつっかかるように停止したり、ブロックノイズが発生する程度で、問題なく映像を再生することはできた。

 しかし、3階まで上がってしまうと、2.4GHzのIEEE802.11n/gでは、頻繁に映像が停止し見るに堪えない状況となり、5GHzのIEEE802.11n/aでもときおり停止し、とても快適とは言えなかった。

 単純なスループットだけでなく、連続的な通信ができるかどうかがポイントとなるため、長距離や干渉が激しい環境では地デジの視聴は厳しい場合もありそうだ。あくまでも目安となるが、実行スループットで40~50Mbps程度は欲しいところだろう。

 とは言え、アンテナケーブルもLANも、電源すら不要な完全ワイヤレスの環境で、地デジが視聴できるというのは、なかなか快適だ。地デジのためだけに、デバイスサーバーを導入するというのも十分にありだろう。

ノートPCで利用すれば、完全ワイヤレスで地デジを楽しめる

スマートフォン関連の対応も厳しい

 このほか、USB接続の機器として、iPhoneやiPadなどの対応も気になるところだが、これもなかなか厳しい。現状、各メーカーとも対応しているのは、iPhone 3G/3GS、iPodなどの旧世代の製品のみとなっており、iPhone4やiPadはマスストレージとしては認識されるものの、iTunesからは認識されない(iOS4.1アップデート済みのiPod Touchは認識するのでOSではなくハードの違い)。

 また、Andoroidを搭載したXepriaも接続してみたが、こちらもマスストレージとしては認識するものの、デバッグモードでの認識が不安定で、SDKから認識されるものの、頻繁に接続と切断が繰り返されるなどの現象が見られた。

 そもそもiPhoneやiPadが無線LAN経由で同期してくれれば話も済むのだが、これらをワイヤレスでPCに接続するというのは、デバイスサーバーを利用しても現状はできないことになる。

 このように、LDV-2UHは、USB機器をネットワークで手軽に使える製品だが、現状はつながる機器が限られる場合もあるため、購入前に対応機器をチェックすることが大切と言える。この点だけ注意すれば、価格を考えてもお買い得な製品と言えるだろう。


関連情報


2010/9/14 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。