待望の第2の選択肢 Xi対応モバイルルーター「BF-01D」


 NTTドコモから、Xi対応のモバイルルーター「BF-01D」が発売された。公衆無線LAN対応、自動コンテンツ送受信機能などを備えた高機能版の製品だ。その実力を検証してみた。

Xi対応モバイルルーターも選択可能に

 待ち続けていた人、待ちきれなかった人、果たしてどちらが多いかはわからないが、ついにXi対応のモバイルルーター「BF-01D」が発売された。

バッファロー製のXi対応のモバイルルーター「BF-01D」。3G対応のBF-01Bの後継と言えるモバイルルーターだ

 Xi対応のモバイルルーターは、2011年6月末にに発売されたLG製の「L-09C」たった1台のみ、という状況が9カ月近く続いていた。しかし、これでやっとPCやタブレットなどの通信環境としてXiを使いたい人向けの選択肢が増えたことになる。

 タブレットやスマートフォンなど、Xi対応端末でのテザリングも可能になりつつある状況を考えると、Xiの通信環境としてモバイルルーターのみが選択肢ではなくなりつつあるが、それでも選べる機種が増えたことは素直に歓迎したいところだ。

 特に、今回のBF-01Dは、FOMA網を利用するモバイルルーターでは定番的な製品となったBF-01Bの流れを汲むバッファロー製の端末となる。公衆無線LAN対応やコンテンツの自動送受信機能など、ユニークな機能を搭載していることを考えると、依然として注目度は高い製品だ。


一回り大きくなったサイズ

 今回のBF-01Dを評価するにあたり、ポイントとなるのはおそらくサイズと連続通信時間だろう。BF-01Bより一回り大きくなったサイズが持ち運びにどう影響するか、消費電力が大きなXi対応で、実際にどれくらい連続通信時間ができるのかが、購入判断に大きく影響することになりそうだ。

 その点を踏まえ、まずは外観をチェックしていこう。全体的なデザインは従来のBF-01Bに近いが、カラーは光沢のあるホワイトのとシルバーのツートンになり、塗装の質や持ったときの質感も高くなった印象だ。

正面側面


上部に電源ボタンとAOSSボタンを配置下部にはシャッター式のカバーを採用したminiUSB、クレードル端子がある

 ボタンは上部に電源とAOSSボタンが配置されており、下部に充電用のminiUSBポートとクレードル接続用の専用端子が用意される。従来のBF-01Bでは、この端子部分がむきだしの状態だったが、今回のモデルでは持ち運びの際のホコリ対策だろうか、シャッター式のカバーが設けられている。細かな部分の改良が加えられ、全体的にブラッシュアップされた印象だ。

 ただし、問題は前述したサイズだ。以下の表は、BF-01D、L-09C、BF-01Bを比較した表だ。

サイズ比較表
高さ厚さ重量バッテリー
容量
連続通信
(FOMA)
連続通信
(Xi)
BF-01D68mm108mm23mm193g1880mAh約5.5時間約4時間
BF-01B64.4mm95mm17.4mm105g1880mAh約6時間――
L-09C122mm64mm15.9mm156g2700mAh約8時間約6時間

 BF-01Bと比べると、高さで約3.6mm、幅で約13mm、厚さで約5.6mmほど大きくなっており、文字通り、一回り大きい。手に持ったときの印象も、手のひらに収まるとは言い難く、ポケットに入れるのも若干躊躇する。個人的には、L-09Cもサイズ的には小さくないと感じていたが、これよりもさらに大きい印象だ。

 重量も、193gと手のひらにズシリとくる感じで、それなりに重い。BF-01Bの倍近い重量なのだから、それも当然だ。

手に持つとズシリと重さを感じる

 その分、バッテリー容量が増えたのか? とも思ったのだが、そうではない。前述した表のように、今回のBF-01Dには、従来のBF-01Bと同じものが採用されており、その容量は1880mAhとなっている。

 L-09Cの2700mAhに比べると少ないうえ、2500mAh以上のバッテリーを搭載し、Xiでのテザリングが可能なGALAXY noteのようなスマートフォンも存在することを考えると、このサイズで、このバッテリー容量というのは、ちょっとさみしい印象だ。

バッテリーは取り外し可能。容量は1880mAh

 もちろん、容量だけでは判断できないので、実際の連続通信時間も計測してみた。いつものように、PCから一定時間おきにPINGやHTTP GETを繰り返すバッチファイルをXi接続環境で実行し続けたところ、15:07の計測開始から、19:25の計測終了まで、合計約4時間18分の動作を確認できた。ほぼカタログスペック通りの動作時間と考えて差し支えないだろう。

 FOMAであれば、もう1時間強の動作が可能となる計算となるうえ、日常的な利用を考えれば4時間でも十分とも言えるが、L-09Cの連続通信時間や10時間オーバーも当たり前になってきたWiMAXモバイルルーターの存在を考えると、ちょっとさみしいところだ。

 ちなみに、BF-01Dのバッテリーは取り外し可能になっているため、差し替えて使うことも不可能ではないが、バッテリーをどう入手するか、差し替え用をどう充電するかが課題になりそうだ。


公衆無線LAN対応

 このように、サイズとバッテリー容量に課題はあるものの、BF-01Dの魅力は、やはり多機能な点にある。

 まずは、公衆無線LANへの対応だ。最近になって他社製モバイルルーターでも採用されるようになってきたが、その元祖とも言える複数回線接続に対応している。

 使い方は簡単で、設定画面のトップページから「かんたん設定」機能を利用して、プリセットされた公衆無線LANサービス(docomo Wi-Fi、FLET'S SPOT、HOTSPOT、FREESPOT)を選択し、この接続を有効にしておけばいい。プリセットされたサービスに関しては、SSIDや暗号キーなどが設定済みとなっているので、認証用のユーザーIDとパスワードを登録するだけで手軽に設定できる。もちろん、SSIDや暗号キーなどを手動で登録すれば、家庭や会社などですでに設定されてる無線LANも利用可能だ。

 接続環境の切り替えは、標準では自動選択の「標準モード」となっているが、「無線LAN優先モード」や「接続性優先モード(なるべく常時接続を保てる回線を選択する)」も選択できる。また、3G/HSPA/LTEが通信不能になった際、無線LANに切り替えるまでの時間も設定可能だ(標準では5秒)。

公衆無線LANや自宅の無線LANを接続先として登録。自動的に切り替えることが可能

 実際に使ってみると、切り替えは完全にシームレスというわけにはいかないが、無線LANから3Gへの切り替えであれば、30秒ほどで完了するため、連続通信しながら移動するなどといった場合でない限り、ほとんど意識する必要はない。

 ちなみに、速度に関しては、エリアによっても異なるのだが、筆者宅の場合、無線LAN経由(回線はauひかり)で下り24867kbps/上り14754kbps、Xiで下り3064Mbps/上り1681kpsでの通信ができた。筆者宅は、ギリギリXiのエリアとなるため、あまり速度が出ないが、エリアによっては、さらに高速な通信が可能となる。

無線LAN環境での結果(左)、Xiでの結果(右)

 また、付属のクレードルを利用することで、有線LANとの接続も可能だ。クレードルのスイッチによって動作モードを切り替えられるようになっており、「INTERNET」では有線LANをインターネット接続回線として、「LAN」では有線LAN接続したPCなどをBF-01DのXi/3G経由でインターネット接続することができる。

クレードルを利用することで有線LAN環境でも利用可能


16GBの内蔵ストレージを活用可能

 続いての特長は、16GBの内蔵ストレージを搭載している点だ。ここにデータを保存することで、PCやスマートフォンなどから無線LAN経由でデータを参照できるようになる。最近では、内蔵メモリやSDカードなどを無線LAN経由で利用可能にするワイヤレスストレージ機器が徐々に登場しつつあるが、その元祖とも言える機能だ。

 従来のBF-01Bで採用されていたmicroSDカードスロットではなく、内蔵ストレージを利用する方式に変更されているが、機能的には従来とほぼ同じだ。PCからはブラウザによるアクセス、もしくは「\\機器名(APxxxxxxxxx)」で共有フォルダーにアクセスすることで、データを読み書きできるようになっており、Android版のアプリ(Personal Media eXchange)をダウンロードすることで、ストレージにアクセスできる(iOS用は現状提供なし。PMX for 光ポータブルは本稿執筆時点では未対応)。

 Android用のアプリでは、接続回線、バッテリー残量などを確認できるほか、端末内の画像や映像データをBF-01Dのストレージに自動的にアップロードしたり、そのデータをDropBoxなどのオンラインサービスにアップロードすることも可能になっている。

Personal Media eXchangeを利用することでスマートフォンから状態を確認したり、ダウンロードしたコンテンツを利用可能ダウンロードしたPodcastなどを利用可能スマートフォン内のデータをBF-01Dの内蔵メモリやオンラインサービスにアップロード可能

 また、アプリやBF-01Dの設定画面から、NTTBPが提供するPersonal Media eXchangeの設定ページにアクセスすることで、Podcastなどのコンテンツを自動的にストレージにダウンロードすることも可能だ。有線LAN接続時のみダウンロードするなどの設定にしておけば、家で充電している間に自動ダウンロードされ、翌朝、出かけるときに最新のニュースなどを聴取できるというわけだ。

 一部の地下鉄でも通信環境が整いつつあるなど、NTTドコモの通信網で通信できないエリアは少なくなりつつあるが、それでも移動中や混雑時など、インターネットに接続できないケースも少なくない。そういったシーンでも、ストレージのコンテンツを楽しめるのは大きなメリットだろう。

設定画面から専用サイトにアクセスすることで、Podcastなどのコンテンツの自動ダウンロード設定が可能


どこでもつながる安心感と速度はさすが

 以上、NTTドコモのXi対応モバイルルーター「BF-01D」を実際に使ってみたが、この製品の価値は、公衆無線LAN接続と内蔵ストレージの活用の2点にある。正直、サイズと連続通信時間に関しては、ライバルに劣る部分もあるので、この活用機能にどこまで魅力を感じられるかが、選択の決め手になるだろう。

 内蔵ストレージに関しては、どこまでニーズがあるかが読めない部分もあるが、公衆無線LANに関しては、個人的には、非常に大きなメリットだと思える。スマートフォンの場合、接続用のアプリがあるので最近は困らないが、PCの場合、spモードの公衆無線LANなどが使える契約をしていても、いざというときにSSIDや暗号キー、ログインIDなどを忘れていて使えないことがある。これが意識せずに使えるようになるメリットは大きい。

 そもそもエリアの広いNTTドコモのネットワークと合わせ、どこでもつながる安心感を得られることこそ、BF-01Dを使うメリットと言えるだろう。



関連情報

2012/4/10 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。