Androidアプリ対応でHDDも搭載可能
メディアプレーヤー「Xtreamer Prodigy」


 ハンファ・ジャパンから発売された「Xtreamer Prodigy」は、ネットワーク経由でさまざまなメディアを再生可能なメディアプレーヤーだ。Androidアプリに対応し、HDDも搭載可能となっている多機能な製品を実際に試してみた。

開発状況を見ながら使うことになりそう

 いろいろやりたい気持ちはわかるが、まだまだ発展途上といったところか。

 ハンファ・ジャパンから発売されたメディアプレーヤー「Xtreamer Prodigy」は、多機能ではあるものの、まだ未完成なところが残ってしまっている製品だ。

 基本的には、家庭用のテレビにHDMIで接続し、有線LAN/無線LAN(IEEE802.11n/b/g)経由ネットワーク上のメディアを再生することができるメディアプレーヤーとなっているが、3.5インチのHDDを内蔵することでNAS兼ローカルメディアプレーヤーとして利用できるうえ、Android2.2の搭載によってAndroidアプリも動作可能という目新しい製品だ。

ハンファ・ジャパンから販売されているメディアプレーヤー「Xtreamer Prodigy」

 しかしながら、使ってみると、ネットワーク上のコンテンツを再生するためのUPnPクライアント機能の起動で強制リブートしたり、適用するファームウェアのバージョンによってはアプリをダウンロードするためのサービス(App Center)に接続できなかったり、肝心のファームウェアが現行バージョンのベータテストとメジャーバージョンアップのRCテストが同時進行していて、どれが安定的に動作するのかがわかりにくかったりと、まあ、とにかく混乱している。

 開発側としては「やりたいこと」をすべて実現すべく搭載しているのかもしれないが、整理せずに、そのまま製品に詰め込んでしまったため、収集がつかなくなっている印象だ。

 とにかく、現段階では、この製品はたくさんのメディアフォーマットに対応したプレーヤーとして評価することはできるが、NAS的な使い方とか、Androidとしての楽しみ方といった点に期待するのはまだ早い段階と言えそうだ。

 今後の開発状況を見つめながら、機が熟すのを待ってから買った方が賢明だろう。


意外に大きなサイズ

 とはいえ、現状のファームでも使い道はそれなりにあるので、基本的な機能を紹介していこう。

 まずは、外観だが、意外に大きい。3.5インチHDDを内蔵可能なので、当たり前といえば当たり前なのだが、最近ではApple TVサイズの製品が一般的になりつつあるが、そのイメージからはかけ離れている。サイズは238×207×64mm(幅×奥行×高さ)、重さは約2.5kgで、スカパーやケーブルテレビのチューナーと同等といったところだ。

正面側面
背面付属のリモコン

 インターフェイス類だが、フロントには、音量調整ツマミを兼ねた電源ボタンとSDカードスロット、赤外線受信ポート、HDDを搭載するための引き出し式のカートリッジが搭載される。一方、背面には、外付けHDDやDVDドライブ、USBメモリ、キーボードやマウスなどを接続可能なUSB2.0×2、Xtreamer ProdigyをPCに接続して外付けストレージとして利用するためのUSB3.0×1、コンポーネント、HDMI端子、1000BASE-T対応のLANポート、デジタルオーディオ出力(光と同軸)が搭載されている。

 特長の1つでもあるHDDの搭載だが、フロントのカートリッジを引き出してネジ止めし、再び差し込むという使い方になっている。3TBまでのHDDに対応しているとされており、実際、SeagateのST3000DM001を装着してみたが、問題なく認識させることができた。

 なお、HDDに関しては、Xtreamer Prodigyをストレージとして利用する場合のみ必要となる。ネットワーク上のメディアを再生する場合は、装着しなくても利用することが可能となっている。

前面のカートリッジを引き出すとHDDを搭載できる

 ネットワーク接続に関しては、有線に加えて無線LANでの接続も可能となっている。ただし、WPSなどのボタン設定には対応しておらず、設定時には暗号キーを手動で入力する必要がある。手軽さという点を考えると、このあたりは物足りない印象だ。

 ネットワークの速度もIEEE802.11nと記載されているが、2.4GHzのみの対応で、MIMOなし、40MHz幅利用の最大速度は150Mbpsとなっている。数十Mbpsクラスの映像をネットワークで再生するとなると、距離や電波状況によっては、苦労することになりそうだ。


多機能だがストレスフリーとは言えない操作感

 続いて、操作感について触れていこう。当初、Android対応ということで、NTT西日本の「光BOX+」のような軽快な操作感をイメージしていたのだが、それには、まだまだ届かない印象だ。

 起動すると、宇宙をイメージした壁紙に右上にネットワーク接続や日付などの各種情報、下に「メディアライブラリー」、「Android」、「アプリ」などの機能が並ぶユーザーインターフェイスが表示される。この画面で、付属のリモコンの方向キーを使って機能を選ぶというオーソドックスなスタイルのUIだ。

ホーム画面

 操作感は、決して遅くはないのだが、起動直後に明らかにもたつく印象がある。電源を入れてからしばらくの間は、ボタンを操作しても、しばらく画面が動かない、アプリが起動するまで時間がかかるといったことはザラだ。

 また、キーボードやマウスを接続して操作することもできるのだが、一部、リモコンとの併用が必要がある。たとえば、アプリの一覧にあるブラウザで、キーワードを指定して検索する際、マウスで検索ボックスをクリックしても、キーボードから直接文字を入力できない。リモコンの「Enter」ボタンで文字入力モードに切り替えてから、キーボードで文字を打ち込み、カーソルで「OK」を選択するか、リモコンの再生ボタンを押す、という慣れるまで戸惑う仕様になっている。

 同じブラウザでも、Androidのブラウザを利用すれば、リモコンを使わずにキーボードから検索ボックスに直接文字を入力できるうえ、キーボードのEnterキーで確定できるなど、使いやすいので、こちらを利用した方が賢明だろう。いずれにせよ、慣れるまでは、操作に戸惑うことが多々あるという印象だ。

ブラウザを利用してWebサイトを閲覧することも可能ただし、文字入力はリモコンの併用が必要なうえ、日本語も入力不可


実質的に使えるのはローカル再生とSMB共有再生

 機能的には、前述したように「メディアライブラリー」、「Android」、「アプリ」と大きく3つのカテゴリの機能が利用可能だ。

 メディアライブラリーは、内蔵したローカルHDD、各種メディア(USB HDD/USBメモリ/SD/光学ドライブ)、ネットワーク(SMB/UPnP/NFS)のメディアを再生するための機能だ。USB接続の光学ドライブを接続することで、DVDなども再生できるうえ、対応するビデオ形式もAVI/MKV/TS/TP/TRP/M2TS/MPG/MP4/MOV/M4V/VOB/ISO/DVD-ISO/IFO/DAT/WMV/ASF/RM/RMVB/BD-ISOと非常に豊富だ。

 このため、たとえばUSBメモリでもらった写真を再生したり、ビデオカメラで撮影した映像を再生することが手軽にできる。また、NAS機能を搭載しているため、PCからネットワーク経由でビデオファイルなどをXtream Prodigyに転送して、ローカルで再生するといった使い方が可能となっている。

ローカルHDD、USBメモリ、USB光学ドライブ、SMB、UPnP(DLNA)などのメディアを再生可能SMBでアクセスすることでPCやNAS上のメディアを再生可能。UPnPはエラーで利用できなかった

 ただし、個人的に期待していたUPnPの機能は使えなかった。メニューからUPnPを選択すると、100%、強制再起動がかかってしまう現象に見舞われた。

 サポートページを確認すると、現在、RCのテストが行われている最新バージョンの3.5のファームウェアで改善されているとの情報があったが、このファームにアップデートしても改善されなかったどころか、冒頭でも触れたようにAndroidのアプリダウンロードサービスが使えなくなる不具合が発生してしまった。

 このため、現状、DLNA対応機器との連携はあきらめざるを得ず、ネットワーク経由でコンテンツを再生したい場合は、SMB共有機能を使ってNASやPCの共有フォルダにアクセスしてファイルを指定して再生するしかなかった。

 もともと、DTCP-IPに対応しているという記載がないため、レコーダーなどとの連携は期待していないところではあるが、そもそもDLNA関連の機能がまともに動かないのでは話にならない。


APP Centerを使うかpkgを直接インストール

 続いて、メニュー画面の「Android」だが、これはAndroid向けのアプリを利用するための機能だ。

 Xtreamer ProdigyにはAndroid 2.2が搭載されており、設定画面からサービスとして有効にすることで、Android向けのアプリを起動することが可能となっている。といっても、Android搭載のスマートフォンやタブレットのように「Google Play」が使える正規の環境ではないため、基本的に標準でインストールされている「App Center」経由でアプリを入手するか、APKファイルを使って、ユーザーが勝手にアプリをインストールして利用する必要がある。

 また、Xtreamer ProdigyはRTD1186(750MHz)というMIPS CPUが採用されているため、一般的なARM向けのアプリについて、すべてが動作することも保証されていない。

Android機能。ここからアプリを起動して利用できるが、すべてのアプリが使えるとは限らない標準搭載のApp Centerを利用することでアプリをダウンロード可能。このほか、APK指定でアプリをインストールこともできる

 よって、基本的にはオマケ的な機能と考えるのが妥当だ。もちろん、ゲームなど、Android向けのアプリを利用することができるのはメリットだが、マウスでの操作になるため、画面をタッチしたり、フリックすることを前提としたアプリでは、操作が難しい(クリックしながらマウスを移動したりする)。

 テレビという接続先を考えても、基本的には、天気やニュースなど、情報を表示するためのアプリをインストールして利用するのが適切だろう。


Youtubeなども利用可能

 最後に「アプリ」だが、これはアプリケーションというよりは、サービスを利用するための項目考えるのが妥当だ。

 YouTube XL、Youtube、Video Podcast、Accu Weather.com、Picasa、Yahoo! FINANCE、SHOUTcast Radio、など、さまざまなサービスを利用できる。中には使えないサービスなどもあるうえ、これらの機能は保証外という位置づけになっているが、映像や音楽などを楽しむために活用できるだろう。

Youtubeなどのサービスを利用可能。このほか、SHOUTcastなども利用できるYoutubeでは、地域で日本を選択することで、日本のコンテンツを検索可能。ただし、検索で日本語は使えない

 なお、Youtubeも地域で日本を選べば、日本のコンテンツを再生することができるが、本機は日本語入力に対応していないため、日本語での検索はできない。ただし、英字で入力してもある程度の検索は可能だ。Webであれば、候補からほぼ選択することができる。このあたりは、Googleに助けられるという印象だ。

 以上、ハンファ・ジャパンから販売されている「Xtreamer Prodigy」を実際に使ってみたが、もう少し、バージョンが上がってから使うのことをおすすめしたいところだ。筆者が購入した個体だけかもしれないが、不安定なうえ、いろいろな機能やサービスも現状は使いづらい。

 また、NASとして考えた場合も、あまりパフォーマンスがよくない。以下は、ネットワーク上のPCから共有フォルダをネットワークドライブに割り当ててCrystal Disk Mark 3.0.1cを実行したときの結果だ。シーケンシャルで10MB/s前後となると、大容量のファイル転送はかなり厳しい印象だ。大きなファイルを転送したいのであれば、USB接続で転送した方がいいだろう。

 ネットワーク上のNASに保存された映像ファイルをテレビで再生したいなど、目的な明確な場合は悪くない選択肢だが、いろいろな用途に使ってみたいとか、Androidというキーワードに惹かれて購入すると、期待を裏切られることにもなりかねない。

 このほか、マニュアル類も英語となるうえ、画面の誤訳が多かったり、画面上で指示されているボタンと実際のリモコンのボタンが異なることもあった。購入する場合は、このあたりも慎重に検討する必要がありそうだ。



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2012/8/7 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。