テレビに接続できるお手軽Skype端末 イーフロンティア「telyHD」


 イーフロンティアから、家庭用テレビにHDMI接続で利用できるSkype端末「telyHD」が登場した。Android搭載の軽快な動作と、簡単なセットアップで720pのHD画質のビデオ通話を楽しめるうえ、スマートフォンからのリモート操作などにも対応した製品だ。その実力を検証してみた。

より幅広い活用を求めて

 海外で生活している家族がいる人にとっては、おそらく、きわめて日常的なツールとして馴染みがある「Skype」。そんなSkypeを、海外との連絡だけにとどまらず、もっといろいろなシーンで活用できそうなのが、今回、イーフロンティアから登場した「telyHD」だ。

 これまでにも、Skypeをプラットフォームとして利用するハードウェアは、単純なUSB受話器からカメラ搭載の専用端末まで、多数存在したが、今回のtelyHDは家庭用のテレビに接続するタイプの製品。HDMI端子で映像と音声を出力することが可能となっており、付属の可動式の台座を使ってテレビの上に、実に「すわりよく」設置することが可能となっている。

テレビに接続して利用するSkype端末「telyHD」

 正直、個人的にも最初は「いまさら」という印象がなかったわけではないが、本製品はOSにAndroid 2.2を採用しているうえ、スマートフォンをリモコンやキーボードの代わりに利用することが可能になっているなど、従来のSkype端末の課題となっていた動作の遅さや使いにくさなどが改善されているのが特長だ。

 これまで通り、海外や遠隔地に暮らす家族とのコミュニケーション手段としても活用可能だが、会議室のテレビなどに接続することで遠隔地との会議に利用することもできるうえ、リビングのテレビに設置して留守中の自宅を監視するといった用途などにも活用できる。

 個人的にも、常々、移動時間の無駄を省くために、編集部との打ち合わせをビデオチャットで済ませられないかと考えていたが、これなら仕事部屋の小さなテレビに接続して打ち合わせ用として活用することもできそうだ。

 インターネット上のコミュニケーション手段は、今やSNSやLINEなど新興勢力が主流になりつつあり、Skypeは、特に国内では、存在感が目立たないが、前述したようなビジネスシーンでの利用や監視ソリューションとしての活路は、まだありそうだ。そういった意味では、今後の期待ができそうな製品と言えるだろう。


10分でセットアップ

 それでは、実際の製品を見ていこう。本体は、断面が楕円の円筒形となっており、サイズは幅270×奥行き73×高さ70mm(台座部分含む実測値)となっている。単体で見ると、若干大きい印象があるが、22インチクラスの液晶テレビに装着しても違和感のないサイズとなっているうえ、さらに大きな40インチクラス以上のテレビに装着すると、ほとんど気にならないサイズとなっている。

 本体前面には、720p対応の固定焦点カメラを搭載し、その両脇に2つ、さらに両端に2つの合計4つのノイズリダクション付きマイクが搭載されており、背面には10BASE-T/100BASE-TX対応のLANポート、USB2.0×1、SDカードスロット×1、ミニHDMI端子を搭載。側面がスピーカーとなっており、ここから着信時の着信音が鳴る設計になっている(通話の音声はテレビから再生)。

正面側面背面

 まずはテレビへの装着だが、台座部分が可動式の固定具となっており、前面のL字型の部分をテレビの前面パネルに引っかけるように設置し、背面側の固定具のロックをレバーで解除してから、テレビの液晶パネルの幅に合うように調整し、再びレバーを上げてロックするという方法になっている。

 なかなかうまくできた固定方法で、小型で薄型の液晶テレビだけでなく、若干、厚みのある40インチクラスのテレビなどでもしっかりと固定することができる。背面に電源ケーブルやHDMIケーブル、LANケーブルなど、複数のケーブルを接続しても、重みで傾いたり、グラつくこともないので、使っているうちに外れたり、傾いて画角が変わってしまうという心配もないだろう。

台座部分はレバーを上げることで稼働させることができる写真のように前のL字部分をテレビの前面側に引っかけ、固定具で後ろ側から挟み込むように固定する

 セットアップは非常に簡単だ。電源を入れると、テレビの画面に初期セットアップ画面が表示される。言語の選択、画面サイズの調整、カメラ位置の調節、インターネット接続設定、時刻設定の順に進めれば、トップ画面が表示される。

 利用するには、Skypeのアカウントが必要なので、表示されたトップ画面で、サインインを選択して(アカウントを作成することも可能)、SkypeのIDとパスワードを入力すれば、準備は完了だ。目安は10分とされているが、おそらく、もっと短時間で終わるだろう。

 なお、本製品は、IEEE802.11n/b/g準拠の無線LANを搭載しており、有線LANの代わりに無線LANで接続することも可能だ。残念ながらWPSなどのボタン設定には対応していないため、手動で暗号キーを入力する必要はあるが、有線LANの配線がない場所での利用も心配ないだろう。

ウィザード形式のセットアップを順にこなしていくことで簡単にセットアップ可能。ただし、無線LAN接続は手動設定のみ


1500kbpsで480p

 実際の使い方だが、ビデオチャットを開始する場合は、リモコンで画面上に表示されたコンタクトリストから相手を選ぶというPC版とほぼ同じ使い方になる。

 一方、着信は、前述したように、本製品では本体に内蔵されたスピーカーによって着信音が再生されるため、テレビ側の電源が入っていなかったり、テレビを視聴している場合でも、着信がきちんとわかるようになっている。

 テレビの入力を切り替えて、画面を見ながらリモコンでビデオチャットを開始すると、相手の映像が画面上に再生され、様子を見ながら音声で会話をすることができる。まあ、基本的には、PC版のSkypeと同じだ。

使い方はPCのSkypeとほぼ同じ。コンタクトリストから相手を選んで電話をかける

 画質に関しては、1Mbps以上の実効速度が確保できるかが一つの目安になるだろう。同社のWebページによると、0~512kbpsで低品質画像、512kbps~1Mbpsで中品質(864×480)、1Mbps以上で高品質(1280×720)の画質を表示できるとされている。

 実際にフレッツ光とauひかりを利用したWAN経由での接続を試してみたところ、残念ながら高品質の1280×720での再生はできなかったが、安定的に1500kbpsの帯域を確保することができ、864×480の画質で通話することができた。

 中品質の画質となるが、かなりクリアで、カメラから数メートル離れた場所にいる人物の表情も判別可能な画質だ。広角のカメラのおかげで、撮影できる範囲も広く、複数の人が一緒に写るような環境でも問題はなさそうだ。

 ただし、数百kbpsクラスになると、画質はやはり厳しい印象で、試しに50kbpsで通信させてみたところ、人物をのものを判別するのさえ難しい印象であった。最低でも500kbps、できれば1Mbps以上の帯域を確保できるかどうかがポイントになりそうだ。

 同社のWebサイトには、速度測定用のサイトも用意されているので、ここで送受信双方の速度を計測してから購入を決めるのがよさそうだ。

1500kbps、864×480の画質。このレベルなら、かなりの高画質50kbps、160×120の画質。ここまで落ちると厳しい


不在着信の判別や自動応答も可能

 このように手軽にビデオチャットが可能なtelyHDだが、感心したのは、不在時の対応だ。万が一、不在時に着信があった場合、本体前面に搭載されているLEDが青く点滅し、着信があったことを知らせてくれる。これにより、わざわざ入力を切り替えて着信履歴をチェックしなくても、不在時の着信がわかるようになっている。細かな工夫だが、これは実際に使ってみると、ありがたい機能だ。

 相手が不在の場合も、ビデオメッセージを送信することができる。リアルタイムの通話というのは、相手との時間が合わないと難しい場合もあるのだが、ビデオメッセージなら、メール感覚で気軽に遅れるので、時間を気にせず利用できるだろう。

不在時に着信があると、LEDが点滅して知らせてくれる

 また、自動応答の設定も可能となっており、すべての着信、もしくは特定の相手からの着信時に、自動的に応答することも可能になっている。これにより、とりあえず音声で応答しておいてから、テレビの入力を切り替えて映像を見るといった使い方が可能なうえ、簡易的ながら監視ソリューションにも利用できる。

 留守宅に自分でビデオチャットを開始すれば、自動応答で留守中の自宅の映像を確認することができる。音声を伝えることもできるので、ペットなどの監視と声がけなどに活用できるだろう。

自動応答の設定が可能。すべての着信、または特定の相手からの着信を選択できる


便利なスマートフォン用アプリ

 このほか、スマートフォン用のアプリ「telyHD Smart Remote」が利用できる点も特長もある。このアプリは、リモコンの代わりに画面操作や文字入力が可能なアプリだ。

 起動すると、自動的に同一ネットワーク上のtelyHDを認識し、画面上の矢印ボタンやパッドのフリック操作で、画面上のアイコンを移動したり、通話の開始や着信への応答の操作をすることができる。

スマートフォン用のアプリ「telyHD Smart Remote」。リモコン代わりにスマートフォンを利用できる。文字入力も可能だが、英語のみ
付属のリモコン。こちらはシンプルな構成

 OSとしてAndoridを搭載している恩恵もあり、付属のリモコンによる操作もキビキビとして特にストレスは感じないが、このアプリではキーボードを利用した文字入力が可能なため、連絡先の検索などがやりやすい。

 また、telyHDには、ブラウザアプリも搭載されており、Webページの閲覧が可能となっているが、この際にURLを入力したり、マウスカーソルを操作するときにも、telyHD Smart Remoteが役に立つ。残念ながら、テストしたバージョンでは日本語を入力できなかったが(Google検索などではローマ字入力でも何とか検索できる)、これはぜひセットで利用するべきだ。

 なお、iPhoneやiPadを利用している場合は、telyHD Smart Remoteに加えて、AirPlayも利用できる。これにより、Skype用としてだけでなく、iPhone/iPadの写真をテレビに表示するための機器としも利用可能だ(写真のみ対応)。

ブラウザも搭載。URL入力にはスマートフォンを利用すると便利iPhone/iPadからのAirPlayに対応。写真のみだが手軽にテレビに表示できる


値段なりの機能は備えている

 以上、イーフロンティアから登場した「telyHD」を実際に試してみたが、ハードウェア、ソフトウェアともに、完成度が高く、非常に使いやすく仕上がっている製品と言える。

 OSにAndoroid 2.2を採用していることに加え、ハードウェアも非常に豪華で、CPUにARM Cortex-A9(1GHz)を搭載するほか、オンチップH.264エンコーダ/デコーダ、NVIDIA GPU、512MB RAM、記憶域として2GBメモリ(eMMC)を搭載している。

 この恩恵は、全体的な操作感の軽快さや動画のスムーズさに非常に大きく寄与しており、この手の製品としては珍しく、ストレスを一切感じさせない作りになっている。将来的には、Androidのアップデートや他のアプリの搭載も検討しているとのことなので、Skype以外の用途への応用も期待できるだろう。

 しかしながら、価格は標準価格で3万4800円と、なかなかな手を出しにくい設定になっている。ハードウェアの豪華さを考えれば、コスト的には妥当とも言えるが、やはり高いと言わざるを得ない。

 拠点間を結ぶ会議用などのビジネス用途、海外生活者とのコミュニケーションという明確な購入理由があれば、悪くない投資と言えるが、「おもしろそうだからちょっと買ってみよう」とはなかなかならない金額だ。

 このため、購入するかどうかの決め手は、今後のアプリの充実度がカギになるだろう。Skypeだけでなく、Huluなどの映像配信サービスに利用できるとか、ゲームなどの汎用的なAndroidアプリを利用できるようになれば、この値段でも納得できる。すぐに対応することは無理でも、その未来像が見えるようになれば、購入の検討をしてもよさそうだ。




関連情報

2012/9/11 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。