イベントレポート

NTT R&Dフォーラム 2013

1Pbps超の光ファイバーなどネットワーク関連技術を展示

12コアファイバーの顕微鏡画像。干渉を防ぐため中心部は使わず、周囲の12コアを使用

 NTTグループの研究開発成果を紹介するイベント「NTT R&Dフォーラム 2013」が14日と15日の2日間、東京都武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センタで開催された。

 ネットワーク技術関連では、超大容量の光ファイバーやネットワークの可視化技術、家庭内機器の消費電力をセンサーで容易に測定する技術などが展示された。

 インターネットのトラフィック増大を受け、NTTでは超大容量の光ファイバー技術の研究を進めている。今回のイベントでは、1本の光ファイバーで1P(ペタ)bpsの伝送を実現する技術を展示していた。1本の光ファイバーに12個のコアを形成したマルチコアファイバーを使用するとともに、多値変調(32QAM)を用いることで伝送を効率化。1コアあたり84Tbps、12コアで1Pbps以上の伝送速度を実現した。

 今後は伝送距離の長距離化や工事の簡素化などが課題とのことで、2020年ごろをめどに実用化を目指していきたいとしている。

12本の光ファイバーを1本の12コアファイバーに接続
展示の概要

 ネットワーク高付加価値化の領域では、スマートフォンを利用する場合などに、キャリアのネットワークと自宅の無線LAN、公衆無線LANなど異なるネットワーク間で共通のサービスを提供するためのアーキテクチャについての展示が行われていた。

 デモを行っていたのは、スマートフォンからSIMベースでの無線LAN認証を行い、これに応じてキャリア側からネットワークサービスに関するポリシーを通知。これにより、たとえば青少年に対する有害サイトフィルタリングサービスが、どのネットワークでも同じように適用されるようになる。また、認証先に応じてトラフィックを振り分けることで、特定のキャリア内だけで提供しているサービスの利用を可能にするといった活用が考えられる。

 実用化に向けては、たとえば固定網でレンタル提供しているWi-Fiルーターや公衆無線LANのルーターなどにこの機能を組み込んでいき、通信キャリアに機能の利用を呼び掛けていくといったことが考えられるという。

異なるネットワークでも接続環境やサービスポリシーの持ち運びが可能に
展示の概要

 ネットワークを運用する側の技術としては、ネットワークの状況を3D表示することで把握するシステムを展示していた。

 ネットワークの拠点を地図上にマッピング表示する技術は現在でもあるが、これにノードの種別を表す高さの軸を加えた3次元表示にすることで、障害の要因やボトルネックとなっている場所の把握が容易になるという。また、時間軸を遡ってリプレイ表示する機能も備えており、より大規模な障害の場合などには、障害が発生した場所を特定するのに役立つとしている。

ネットワークの状況を3D表示で把握する
展示の概要

 環境エネルギー関連では、家庭の分電盤にセンサーを取り付け、宅内の家電などの消費電力を測定するシステムを展示していた。この技術は、分電盤に取り付けたセンサーにより、家庭全体の電源電圧(位相)と電流を測定。低周波と高周波の電力波形の特徴を抽出し、そのパターンからどの機器を利用しているかを推定するというものだ。通常であれば、家電や電源タップなどにそれぞれセンサーを取り付ける必要があるが、分電盤にセンサーを取り付けるだけで各機器の消費電力が把握できるようになる。

 センサーは電力線を外側から挟む形で簡単に取り付けられ、最初に波形パターンと機器を個々にマッチングさせる作業が必要となる。センサーで読み取った情報はクラウド上のサーバーに送られ、ウェブ上から確認できる。3月には一般家庭での実証実験を行い、今後実用化を目指していくという。

分電盤に取り付けるセンサー
各機器の消費電力が把握できる
展示の概要

(三柳 英樹)