イベントレポート

ワイヤレスジャパン 2016

準天頂衛星や屋内測位システム、非可聴音の音波ビーコンなど、位置情報活用の最新技術が集結

 東京ビッグサイトにて5月25日から27日まで、「ワイヤレスジャパン 2016」の併催イベントとして「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2016」が開催されている。

 WTP 2016は、第5世代移動通信システム(5G)やIoT、M2M、ITSなどさまざまな無線関連技術をテーマとしているが、その中の1つとして“測位”もテーマとして掲げており、15機関が共同出展して「ロケーションサービスパビリオン」を設置。準天頂衛星や屋内測位、位置情報を利用したソリューションなどさまざまな技術やサービスを紹介している。

「ロケーションサービスパビリオン」

iOS対応の準天頂衛星受信機「QZ1 LE」

 2018年度に、現在の1機体制から4機体制へと進化する準天頂衛星。準天頂衛星システムサービス株式会社のブースでは、今後の打ち上げが予定されている2号機と3号機の模型が展示されていた。外見が特徴的なのは3号機で、初号機や2号機には見られないアンテナが付いているのが分かる。これは、災害時に安否情報を発信したり、平常時に救難信号を発信したりするためのメッセージ通信サービスに使用するアンテナだという。

 また、このブースでは、準天頂衛星のサブメーター級測位に対応した受信機「QZ1 LE」も展示されていた。Android対応の「QZ1」が青色なのに対して、QZ1 LEはiOS対応に対応しており、カラーは緑色。このほか同ブースでは、準天頂衛星を使用した「プッシュ型情報提供装置」を活用した避難実験の模様をモニターで解説している。

準天頂衛星の2号機(奥)と3号機(手前)の模型
「QZ1 LE」
避難実験の模様を解説

リコーが音波ビーコンを展示

 光学機器やオフィス機器などで知られる株式会社リコーが、非可聴音(人の耳には聞こえない音)を用いてスマートフォンユーザーの現在地を検知できる音波ビーコンを展示していた。この製品には、リコー独自の平面スピーカーを曲面に貼り付けることで、大音量を流すことなく広範囲に音波を放射させることが可能。平面スピーカーは2つ搭載されており、同時に2パターンの音波放射を行えるのが特徴で、1つの部屋を2つのエリアに分けて違う音波を発生させることができる。隣り合うビーコンからの音波が重なっても、境界を作ってオーバーラップのない音場を形成できる。

 同ビーコンにはBLEモジュールも搭載しており、測位精度やセキュリティが要求されるエリアでは非可聴音、非可聴音の受信が難しい環境ではBLEと使い分けることも可能だ。さらに、リモート監視機能も搭載しており、測位装置のメンテナンス負荷を軽減できる。

スピーカーを2つ搭載

「ドコモ地図ナビ」でも使われている歩行者自律航法技術を体験可能

 一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)と株式会社ゼンリンデータコムが、PDR(歩行者自律航法)とマップマッチングを用いた屋内測位デモを実施しており、来場者はデモ機材を借りて体験することができる。

 このPDR技術は、株式会社NTTドコモとゼンリンデータコムが提供している「ドコモ地図ナビ powered by いつもNAVI」でも使用している技術だ。スマートフォンに搭載された角度センサーや加速度センサー、地磁気センサー、気圧センサーなどを組み合わせるとともに、屋内地図を利用したマップマッチング処理を行うことで、起点となる緯度・経度が与えられることを前提に、そこから移動する歩行者の移動量に応じて位置を推定できる。

 SPACは屋内外のシームレスな位置情報サービスの展開に取り組んでおり、その一環として今回の屋内測位デモを実施している。

会場の地図を使った屋内測位デモ

UWBを使ったタグなしの簡易設置型測位システムが展示

 株式会社日本ジー・アイ・ティーが、UWB(ウルトラワイドバンド)を使った簡易設置型測位システムの展示を行っている。従来の据付型固定機の場合は、電波の送信機と移動機との距離データをネットワークでサーバーに送信して測位していたのに対して、簡易設置型では、移動機で自位置を計算し、タブレットに位置情報を表示することができる。電源については、据付型はPoEを使用するのに対して、簡易型は電池やUSBで給電できる。簡易型の利用シーンとしては、中小規模店舗やオフィス、中小規模事業所、仮設による動線解析などが考えられる。

 また、同社のブースでは、UWBのレーダー方式センサーも展示していた。人の体動や心拍、呼吸などを検出することが可能で、離床センサーなど医療用や、運転車の健康状態モニター、工程内異物検知、侵入検知などさまざまな用途に利用できる。

簡易設置型測位システムの送信機

天井取付型のIMES送信機が登場

 測位衛星技術株式会社のブースでは、屋内測位システム「IMES(Indoor MEssaging System)」に対応した機器を展示。その中で、同社と清水建設株式会社が共同で開発した天井取付型のIMES送信機を紹介している。オフィスビルや商用ビルの天井に取り付けることができ、PoEによる給電や通信設定が可能だ。

天井取付型のIMES送信機

アイサンテクノロジー、MMSによる大量の点群データを処理する新ソフト

 アイサンテクノロジー株式会社では、MMS(モービルマッピングシステム)によって取得された大量の三次元点群データを処理するための精密三次元空間データ生産ツール「3DWING」のデモを行っている。同ツールは3月に発売したばかりの製品で、100億点の大量点群読み込みに対応するとともに、新開発の三次元点群処理エンジンによる高速描画機能や、点群データのエッジ抽出による物体の自動検出機能など、精密な点群処理機能を搭載している。また、認識した物体をクリックするだけで高速に削除できる点群クリーニング機能も搭載している。デモ画面では、大量の三次元点宮を高速処理する様子や、点群上の物体を自動認識する機能などを紹介している。

「3DWING」のデモ

4月スタートの緊急配車サービス「ハコブリッジ」

 ワイヤレスジャパン 2016ではこのほか、「運輸・交通システムEXPO」も併催しており、位置情報を用いた緊急配車サービス「ハコブリッジ」のデモが実施されていた。

 このサービスは4月1日に提供開始した配車サービスで、インターネットを活用し、最短10分間で車両配車を行えるという。荷主側はウェブで注文し、運送会社はスマートデバイスの専用アプリで即時受信するシステムで、各運送会社の空車情報をシステム管理することにより、注文内容に合った車両を位置情報に基づいて検索し、素早いマッチングを実現する。集荷車両の位置情報から納品までの運行状況管理、閲覧などが可能で、24時間365日の有人サポートも行っている。ブースでは、ハコブリッジにおいて荷主が注文を出し、運送会社側が仕事を受けて集荷に向かうまでのプロセスを体験できる。

ハコブリッジの専用アプリ