インタビュー

「その技術をそう使うのか!」バンダイナムコの「超スマート社会」向けロボットとは?

CEATECで初披露、「お越し頂いたら、間違いなく楽しんで頂けると思います!」

株式会社バンダイの渡辺伸吾氏(新規事業室ゼネラルマネージャー)

 「CEATEC JAPAN 2017」が10月3日から10月6日まで幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される。これまでのCEATEC JAPANは「最先端IT・エレクトロニクス総合展」という位置付けだったが、昨年から「CPS/IoT Exhibition」へと大きく舵を切った。

 昨年設けられた主催者特別企画展示「IoTタウン」では、これまでの「CEATEC」の枠を超えた「IT・エレクトロニクス以外の企業」が出展、大きな話題を集めたが、今年も引き続き「IoTタウン2017」が設けられる。そして、そこでは、「超スマート社会」とも表現される国家ビジョン“Society 5.0”を築くべく、さまざまな産業のフロントランナーが集結するという。

 そのIoTタウンに初めて出展する企業の一つが、エンターテインメント企業の雄であるバンダイナムコグループ。「夢・遊び・感動」を旨とする同社のような企業が、「超スマート社会」とどう向き合い、そして今回、何を展示するのか、株式会社バンダイの渡辺伸吾氏(新規事業室ゼネラルマネージャー)にお話をお伺いした。

バンダイならではの「新しいロボット」の提案をする

――バンダイといえば、おもちゃ会社の大手で、歴史もある会社です。2005年にナムコと経営統合を果たし、バンダイナムコグループの1社となりましたが、IoTなどの先端技術への取り組みに関してはいかがでしょうか。

 わたしたちバンダイナムコグループは世界で最も期待されるエンターテインメントグループを目指しています。そのため、エンターテインメント寄りなサービスの提案が大前提になると思っています。

 おもちゃ業界というのは、実は昔から先端技術にお世話になっていて「大人が買う話題の商品」が出てくると、それを玩具にどうやって低単価で落とすか、ということを考えます。昔からパソコン玩具がありますし、最近ですとタブレット型玩具もあります。こういう製品は、未就学児の入り口としては非常によく売れている商材なんですね。

 最近の例ですと、NFCの技術がよく使われます。弊社のたまごっちにも入っていますし、その他、非接触でいろいろ楽しめる玩具なども出しています。自ら先端技術を生み出すことはできませんが、それを活用した玩具というかたちでは、実は昔から先端技術と縁がある業界だと思います。

――バンダイナムコグループとしてCEATEC JAPAN 2017に出展するのは、今回が初めてということですが、出展を決めた理由は何でしょうか。

 今、いろんな意味で業界地図が変わってきていまして、CEATECも昔は日本が世界に誇る家電の展示会というイメージがすごく強かったものが、ここ2年くらいで一気に舵を切ったというか、方向性を変えたいうのが現状だと思います。

 我々の中でも、エンターテインメントの提案の仕方が、昔は「玩具かテレビゲーム」、あとは「マンガかアニメ」という方法だったものが、今は本当にいろんな方向から提案する時代になっています。最近ですと、新しい企業が、ITを使ってエンターテインメントを提案しています。スマホゲームなどの新たな市場を作り出したのって、やはり新しい企業なんですよね。

 バンダイもナムコと統合して12年が経ち、双方弱かった点をうまくグループ内で補完できています。デジタルについては、やはりバンダイナムコエンターテインメントのほうが、スマホやタブレット、VR/ARなど、随分進んでいるのですが、それでは、「玩具を作っているバンダイ」が、何もしなくていいのか、というとそれはまた別だと思っています。

 例えば、バンダイナムコエンターテインメントは、製品の性質上、対象年齢がどうしても高めになってしまいます。その点、バンダイは、乳幼児向けの玩具から展開しているのが強みと言えます。

 そこで、バンダイの強みを活かせるよう、昨年新設されたのが「新規事業室」です。

 バンダイは基本的に事業部制で、男の子向け玩具の事業部、女の子向け玩具の事業部みたいに分かれているんですが、その垣根を超えた商品は出しにくい。その一方で、例えばここ数年、各社から発売されるようになってきたコミュニケーションロボットなどを本気で出そうとすると、それはボーイズトイ事業部じゃないし、ガールズトイ事業部でもない。

 そういうところをカバーすべくできたのが我々新規事業室で、やはり先端技術を使った製品を提案していきたいと強く思います。これまで、いろいろ試行錯誤をしてきたのですが、CEATEC JAPAN 2017では、なんとかお披露目できる目途が立ちましたので、出展を決意しました。

――CEATEC JAPAN 2017では、新しいロボットを出展すると聞きましたが、バンダイは以前もロボットを手がけてましたよね?

 はい、随分前にはなってしまいますが(笑

 実は、新規事業室が立ち上がったのも約10年ぶりで、10年以上前は、いくつかのロボットプロジェクトをやっていました。当時は、ソニーさんのAIBOから始まった流れで、いろいろ研究開発していたのですが、技術的にも価格的にも一度限界点が見えたと感じました。

 その後、技術革新のスピードが本当に上がり、ここ数年は、またいろいろなサービスロボット系の提案が増えてきました。我々もそれは知っていましたが、「コンセプトは当時我々が出していたロボットとあまり変わらない」という印象でした。ですから、「これをどう料理すればいいのかな」ということを、まだ業界の方々は考えている段階かなと。

――今回、初めてCEATEC JAPANに出展されるわけですが、発表する新サービスにそれだけ自信があるということでしょうか。

 自信と言われるとちょっと過信かもしれませんが、「こういうアプローチの仕方もあります」というのを一度、世に出して、反応を見てみたいというのが本音です。

 先端技術系イベントを見ていると、楽しかったり凄かったりする技術や製品はたくさんありますし、「すごいな、世の中変わっているんだな」っていうこともすごく感じますが、その多くは「我々の日常生活をより便利にするための提案」なんですね。でも、我々としては、「便利さより楽しさ」を提案したい、人々をより笑顔にしていきたい。

 だから、我々は「ここにキャラクターが入らないかな」とか、そういった見方をずっとしていて。なかなか答えは出なかったんですが、今回の企画は、一つの可能性に気が付いた結果、と言えます。我々も、今回が完全な正解ではないとは思っていますが、先端技術の新たな活用方法が生まれるのかなとは、感じていますね。

出展するのは「キャラクターを愛する人のためのロボット」その技術をそこに使う?

――その「新しいサービス」について、もう少し詳しく教えていただけませんか。

 開催前はあまり詳しくお話しできないんですが、バンダイが得意とするキャラクターを付加価値とさせて頂いています。キャラクターの魅力を活かし、ネットワークに繋がる、ある意味コミュニケーションロボットですかね。

――対象年齢は、どのあたりですか。

 今回は完全に「上」向けに振ってます。皆さんからは本当に「技術の無駄使い」って言われるようなネタですね(笑)。「その技術をそこに使うんですか?」と。

――それは、技術としてはかなり最先端なもの、あまりおもちゃでは使われていないような……例えば先ほどのお話にもあったNFCとか、そういうものとはまた違うわけですね?

 はい、違いますね。少なくとも弊社では初ですし、国内でもたぶん初だと思います。見ていただくと、「そう使うのか!」と、すごく腑に落ちると思います。

――その技術はどういう分野で使われているものなのですか。

 今のところ秘密、ということで(笑。でもたぶん「え!この技術を使うんだ!(笑」となると思います。実際、見ていただくと、ほとんどの人間は「それを使わなくてもできたんじゃないですか?」とおっしゃいますね。

――対象年齢が上というのは、例えば高校生くらいなのか、それとももっと上なんでしょうか。

 たぶんここにいらっしゃる方(40代)くらいが対象ですね。

今回は参考出品なのですが、2018年くらいには商品展開できる予定で、その際は、その年代の方なら買えるような価格帯にしたいと考えています。

――僕らがなつかしかったり、子どもにも遊ばせたいとかも含めて、欲しいと思うようなものということですよね。

 そうですね、そのキャラクターを愛している人には、たまらないものになる、ハマる人は確実にいる、と考えています。性質として「よりキャラクターの世界に入れる」ものですし。

 全体としての反響がどうなるかは、正直、「みなさんに見ていただきたい」と思っています。いざバンダイのブースに来たら、がっくりする方もいるかもしれませんし。

――その製品は、スマートフォンとかと組み合わせる感じになるんですか。それとも、スタンドアローンで利用するものなのですか。

 設定する際にスマートフォンは使えます。ただ、それがメインではないので、あくまでも製品がメインです。

――それは「人型」と考えていいのでしょうか。

 そういう意味では違いますね。“コミュニケーションロボ”とか“コミュニケーション玩具”という言い回しは当てはまると思うんですけれども。

 そのうえで、“ロボ”でもある、これがヒントかな(笑)

「プロデューサー的な役割で他社さんの技術を活用していきたい」

――バンダイとしては、今後も、そういった最先端技術を使った製品やロボット系のものを、いろいろ増やしていく予定はありますか。

 はい、あります。技術が進化するスピードが素晴らしいじゃないですか。表現がすごく難しいんですが、それをそのまま「ただ単に便利なもの」で終わらせたくないなっていう気持ちがすごく強くて。

 もっとエンターテインメント寄りに活用できたら、より面白いものが生まれるんじゃないかと思っています。同じ技術を使っても、料理の仕方を変えるだけで、もうちょっとフレンドリーなロボットになるのにという感想を強く持っていますので。

 CEATEC JAPAN 2017では、先ほどお話ししたメインで出すもののほかに、いくつか参考出品させていただきますし、また別の会話型コミュニケーションロボットも提案させていただく予定です。

――そういう意味では、CEATEC JAPAN 2017でのバンダイのブースは、かなり盛りだくさんの内容になるわけですね。

 そうですね。たぶん異色ですし、来場いただく方によっては「?」となるかもしれませんが、メインで出展する商品に関しては、きちんと皆さんに納得いただける仕様になっているので、ぜひお越しください。

 また、今回の我々の出展をきっかけに、他のメーカーさんや業者さんから「でしたら、もっとここを改良したらより良くできますよ」というご提案をいただけるんじゃないか、という点も実は非常に期待しています。アプローチの仕方がちょっと今までとは違うので、他の出展者さんや来場される方から、逆にヒントをいただける可能性があるのかなと。

――そういう意味では、バンダイだけで完結するというよりは、もっとエコシステム的な広がりも考えられるサービスなんですか。

 もちろんそうですね。我々は、単なる「メーカー」というだけでなく、プロデューサー的な役割を果たすことも多いので、他社さんがお持ちの技術を活用して……といったご提案などは大歓迎です。今回メインで出すサービスも、外部の方にかなり協力をしていただいて、バンダイがまとめあげたかたちですし。

「CEATEC JAPAN 2017」のブースに来たら、間違いなく楽しめる

――ちなみに、バンダイが考える「IoT」とはどういったものでしょうか?

 IoT、あえて「ネットにつなげる」というところでいくと、今までの玩具は、いわゆる脳みそは全部、モノの中にあったんですよね。チップの中に入れられるだけ入れて、基本的にアップデートはできない。あるいは、繋げないとアップデートはできないという仕様だったんですが、今回はIoTでまずそのわずらわしさをなくしたいと考えました。

 一方、みなさんが思い浮かべるキャラクターの多くは、何十年も続いている作品です。それはつまり、キャラクターの脈々としたデータが沢山あるということです。それをうまく活かしたいというところが、今回の発想でもあるんです。キャラクタービジネスは、どうしても(最新の)旬なものだけが人気になりがちで、キャラクターによっては売上の大半を占めるんですね。しかし、作品によっては長期間、シリーズで展開しており、近年ではビジネスも拡大傾向です。我々はこの流れを活用したいと考えています。

 また、いろいろなエンターテインメントの歴史って、国内でも随分と積み重ねてきているのに、なかなか活かしきれていないなと個人的に思っています。過去の蓄積されたブランドやデータを使ったエンタメが提案できれば、面白いと思います。

――CEATEC JAPAN 2017のブースの見所を教えて下さい。

 今回のブースは、メインで出展するサービスとその他の出品で世界観を分けています。

 メイン以外の中には、完全に玩具メーカー発想のものや、同じグループのバンダイナムコスタジオ、バンダイナムコエンターテインメントが持つロボット系玩具に転用できそうなエンジン、制御プログラムなども参考出品して、「グループ内でこういうことも研究しています」というご提案を、いくつかお見せしたいと思っています。お越し頂いたら間違いなく、楽しんで頂けると思います(笑

――ナムコは、ニューテクノロジー振興財団とかもやってましたしね。マイクロマウスとか。

 はい。バンダイより古い時代に、沢山ロボットを作っていました。未だに受付ロボットの復刻バージョンが会社に展示されています。ぜひ、バンダイナムコグループとしてのご提案を注目していただきたいですね。

――Society 5.0として、バンダイナムコグループが何を担うのかという話をお聞きしてきましたが、それはやはり楽しさを生み出していきたいということだと理解したのですが、そういう理解で間違ってないですか。

 はい。便利さやエコも、もちろんあれば良いなと思いますが、そこはまず本業の方にお任せして、我々は「楽しさ」という視点でご提案できればと思います。

 それから、我々が出展することによる、お声がけ効果も相当期待しています。今までは「バンダイに行ってもしょうがないだろう」とか「バンダイってどうなんだろう」と思ったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ「この技術で一緒に何かできませんか」というお話もいただきたいと思っています。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

 繰り返しになりますが、皆様が切り開いていただいた技術を活用して、商品・サービスを利用される方の笑顔をより増やしていきたいと思います。今でも、(便利になることで)「笑顔になれる技術」はけっこうありますが、バンダイナムコグループとしては、「もう一歩先の笑顔」のご提案をしていまいりますので、どうぞご期待ください。