インタビュー

勢いを増す「CEATEC JAPAN」が目指すものとは? 変革2年目の“CPS/IoTの総合展示会”のポイントを聞く

「業種・産業を超えた共創」そして「BtoBtoCの展示会」

CEATEC JAPAN実施協議会エグゼクティブ・プロデューサーの鹿野清氏

 CPS/IoTの総合展示会である「CEATEC JAPAN 2017」が10月3日~6日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される。

 昨年、「最先端ITエレクトロニクスの総合展示会」から「CPS/IoTの総合展示会」に大きく舵を切ったCEATEC JAPANは、出展者数や来場者数が増加に転じ、その勢いは今年も持続している。

 だが、昨年のCEATEC JAPANが、新たな方向性による目新しさが注目されたのに対し、新たな方向性での2年目を迎えた今年のCEATEC JAPANは、いよいよその真価が問われることになるともいえる。

 CEATEC JAPAN 2017の狙いはなにか、そして、今後、CEATEC JAPANはどう進化していくのか。CEATEC JAPAN実施協議会エグゼクティブ・プロデューサーである鹿野清氏に、CEATEC JAPAN 2017の見どころを含めて話を聞いた。

「もう駄目なのでは」とまで言われたCEATEC JAPANが復活業種・産業を超えた「共創」の場として、出展社・来場者とも大幅増

――CEATEC JAPANは、昨年、従来の最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会から、CPS/IoT総合展示会に大きく舵を切りました。今年は、新たな方針を打ち出してから2年目を迎えます。どんなCEATEC JAPANを目指していますか。

 もともとCEATEC JAPANは、2000年に、「エレクトロニクスショー」と「COM JAPAN」の2つの展示会を統合してスタートした総合展示会です。それらの展示会を主催していた一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)という3つの団体による「CEATEC JAPAN実施協議会」が主催者となり、一般社団法人日本エレクトロニクスショー協会が運営するかたちをとっています。

 1回目の開催となった2000年には、エレクトロニクス業界は、アナログからデジタルへの変革期を迎えており、まさにデジタル時代の新たな総合展示会という位置付けでした。日本の企業もデジタル時代に向けて大きな一歩を踏み出していたわけです。しかし、その後、韓国、中国、台湾のエレクトロニクス企業の台頭により、日本の企業が苦戦。各社の業績が悪化したのは周知のとおりです。

 CEATEC JAPANも、2007年に、国内外895社の企業および団体が出展、20万5859人の来場者数を達成したのをピークに縮小基調に転じ、2015年の出展社数は531社、来場者数は13万3048人と過去最低となりました。この数年間は、業界関係者の間からも「CEATEC JAPANはもう駄目なのでは」とさえ言われていたほどです。

 しかし、昨年、従来の最先端ITエレクトロニクスの総合展示会から、CPS/IoT総合展示会へと舵を切り、「CEATEC JAPAN 2016」では648社が出展、来場者数は14万5180人と、前年を大きく上回ることができました。

 単なる家電見本市ではなく、CPS(Cyber Physical System)やIoT(Internet of Things)といった日本のIT・エレクロトニクス産業が力を発揮できる領域で、業種や産業を超えた連携を行い、共創を生み出す場として、CEATEC JAPANを位置付けたことが、世の中に評価された結果だといえます。

 実際に、出展社の約4割が、初めてCEATEC JAPANに出展した企業、団体であり、金融機関をはじめ、IT・エレクトロニクス業界の枠を超えた企業にも出展をいただきました。また、同様に、来場者の約3割が、初めてCEATEC JAPANに来場したという方々であり、こうしたことからもCEATEC JAPANが大きく生まれ変わったことが裏付けられます。

 今年のCEATEC JAPAN 2017は、こうした昨年の実績をベースに、「CPS/IoT EXHIBITION」として、「つながる社会、共創する未来」をメッセージとし、日本の成長戦略や未来を世界に発信する「Society 5.0」の展示会と位置付け、 新たな「CEATEC体験」をしていただきたいと考えています。

 出展社数は今年も約1割増加し、来場者数も1割増の16万人を見込みます。現時点での事前登録者数は2万人を超えています。ウェブで事前登録をすれば入場料は無料になりますから、ぜひ多くの方々に事前登録をしていただきたいですね。

 また、今年も出展社の約3割が初めてCEATEC JAPANに出展する企業・団体で、来場者も約3割が初めて来場する方になると見込んでいます。「出展社数や来場者数が増える」というのも大切な要素なのですが、こうした(新規出展社/新規来場者による)新たな潮流が、CEATEC JAPANに生まれていることがもっと重要なことであると思っています。

 昨年は、「CEATEC JAPANが変わる」ということを前面に出していましたが、今年は、変わったことによる成果を、出展社や来場者にもっと実感していただく必要があると考えています。まさに、変わったことによる真価が問われるのが今年のCEATEC JAPANだといえます。

展示を「見て」、コンファレンスを「聴いて」、未来の社会を「感じて」、共創に向けて「動き出す」テーマ別ガイドも初公開

――「CEATEC体験」という言葉を使っていますが、これはなにを指しますか。

 最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会を標榜していた時代のCEATEC JAPANに期待されていたのは、どこよりも早く、新製品や新サービスを見て、触れることでした。これが「かつてのCEATEC体験」です。しかし、CPS/IoTの総合展示会に生まれ変わったCEATEC JAPANに求められているのは、展示を「見て」、コンファレンスを「聴いて」、未来の社会を「感じて」「考えて」、共創に向けて「動き出す」ことです。

 出展社からの一方通行的な発信ではなく、出展社同士が結び付いたり、来場者と出展社が結び付いたりといったことで、共創が生まれる場にしたいと考えています。これこそが、新たなCEATEC体験になります。

 多くの展示会に共通しているのは、展示がメインであり、コンファレンスは「おまけ」のように捉えられがちになっている点です。

 しかし、CEATEC JAPANが考えているのは、展示とコンファレンスが一対になって情報を発信し、そこから新たな潮流を感じてもらって、ビジネスにつなげて動き出す、新たな展示会の仕組みです。

 IT・エレクトロニクスの展示会であれば、モノを見ればそれで理解できますが、CPSやIoTはモノを見ただけでは分かりません。そこにソリューションが組み合わさって、初めて理解できます。そうなると展示だけでは不十分であり、むしろコンファレンスの要素が重要になってきます。CEATEC JAPAN 2017では、さまざまなテーマで、約150のコンファレンスを用意しています。これらのすべてが、展示とつながった内容になっています。

CEATEC JAPANで今年初めて用意したという「テーマ別ガイド
コンファレンスと展示がセットで紹介されている。

 今回のCEATEC JAPAN 2017では、「テーマ別ガイド」というものを初めて用意しました。

 例えば、IoTひとつをとっても、来場者の関心は多岐に渡ります。そこで、モノづくりの領域で、IoTに関心を持っている人には「IoT×モノづくり」として、どの展示を見ればいいのか、どのコンファレンスに参加するといいのかということをお勧めしています。

 同様に、IoT×農業、IoT×地域(地方創生、都市、防災/減災)、IoT×自動運転といったように、それぞれの領域に関心を持っている人たちに対して、「この展示とこのコンファレンスがお勧めです」といったことをそれぞれ提案しています。テーマ別ガイドは、CEATEC JAPAN 2017の公式サイト公開していますので、来場前の参考にしていただけるといいですね。

「IoTタウン」は新生CEATEC JAPANの象徴スマートホームからフィンテックまで「超スマート社会」を展示

――今年のCEATEC JAPANの見どころはなんですか?

 見どころはたくさんあるのですが(笑)、まず、足を向けていただきたいのが、展示会場の真ん中にある「特別テーマエリア」ですね。

 そして、その中にある「IoTタウン」にはぜひ立ち寄ってください。そのあとに、エレクロトニクス企業やIT企業が出展している「デバイス・ソフトウェアエリア」や「家・ライフスタイルエリア」、「社会・街エリア」の展示を見ていただくと、CEATEC JAPANが、本当の意味で、CPS/IoTの総合展示会へと変化していることを理解していただけると思います。

 IoTタウンは、異業種企業との共創を発信する特別企画展であり、昨年に続き、2回目となります。

 「社会課題を解決してSociety 5.0を築く」をテーマに、スマートホームやフィンテック、ライフテックなど、デジタルトランスフォーメーションに取り組むフロントランナーといえる企業が出展し、新たなビジネスの創出や共創を模索する場にもなります。さまざまな業界のフロントランナーによる社会課題の解決やSociety 5.0の未来像を、より具体的に展示しています。初参加となる6つの企業、団体をはじめ、26社が出展しており、昨年に比べて、展示スペースも拡大しています。IoTタウンは、新たなCEATEC JAPANの象徴となる展示エリアともいえます。

IoTタウンで配布される、Society 5.0の解説小冊子

 また、IoTタウンでは、「Society 5.0―Society 5.0を知れば、未来の日本にきっとワクワクできるはず―」という小冊子を配布します。A4判48ページに、Society 5.0が実現する未来の姿の紹介のほか、Society 5.0を理解するためのキーワード解説、IoTタウンに出展する企業による取り組み事例などをまとめています。ぜひ、この小冊子も手に取ってご覧いただきたいですね。

 特別テーマエリアでは、近未来のスマートファクトリーと、地方創生に焦点を当てた「Real 2020 Showcase」、人工知能(AI)にスポットを当てた特別企画展示「AI-人工知能パビリオン」、海外のスタートアップ企業が集まる「Global Startup Showcase」などを設置しています。

 さらに、「India Showcase」として約30社のインドの企業が出展します。昨年も約10社のインド企業が出展をしたのですが、CPS/IoTの総合展示会としてのCEATEC JAPANの重要性を強くご理解いただいたことが、今回のIndia Showcaseの設置につながっています。優れた技術を持ったスタートアップ企業がインドには多く、CPS/IoTの実現において、日本の企業との新たなビジネスマッチングが期待できます。CEATEC JAPANをアジアのハブとなる総合展示会に育て上げていくという上でも、今回のIndia Showcaseは大きな意味を持ちます。

 一方で、India Showcaseをはじめとする特別テーマエリアには小さなブースがたくさん設置されますが、今回はテーブルを設置して、気軽に話ができるような設営にこだわりました。展示を見せるというよりも、ビジネスマッチングがしやすいブースづくりを心掛けています。

――CEATEC JAPANが、「アジアのハブ」を目指す上で、韓国や中国の大手エレクトロニクスメーカーが参加していないことはマイナスにはなりませんか。

 CEATEC JAPANが、かつての最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会のままであったのならば、それはマイナスになったでしょう。しかし、CEATEC JAPANは、CPS/IoTの総合展示会に変わりました。その目的に合致したアジアの企業に参加していただくことこそが重要だと考えています。

 例えば、India Showcaseに出展しているインドのスタートアップ企業や、インドに進出している大手企業の現地法人と、日本のさまざまな企業が一緒になって、新たなビジネスを創出する………といった動きにつながることこそが、新たなCEATEC JAPANにとっては重要であり、これがアジアのハブとなる総合展示会へと成長していく道になると思います。

 CPSやIoTといった観点で、ビジネスの共創を目指した展示会は、世界中のどこにもありません。この重要性に早く気が付いた企業が、アジアを問わず、CEATEC JAPANに参加してくれることを期待しています。

――ここ数年は、自動車メーカーの出展が相次いでいましたが、今年は1社だけの出展です。これもCEATEC JAPANが変化した影響ですか。

 それは違います。今年の場合は、CEATEC JAPANの開催と同じ10月に、2年に一度の東京モーターショーが開催されます。そのため、自動車メーカーは東京モーターショーへの出展を優先したことが大きく影響しています。

 今年、自動車メーカーの参加が少なかったのは一過性のものと理解しています。電気自動車の普及や自動運転の広がりによって、エレクトロニクス業界と自動車業界は、より緊密な関係を築く必要があります。来年以降、自動車メーカー各社にも、再びCEATEC JAPANに参加していただきたいと思っています。

目指すのは、「BtoBだけでなく、Cも含めた“BtoBtoC”の総合展示会」

――今後のCEATEC JAPANはどうなっていくのでしょうか。

 CPS/IoTの総合展示会としての役割を、ますます強めていくことになります。一部には、「CPSという言葉が分かりにくい」という声もありますが、IoTによって、多様なデータや情報が集まり、その分析結果を現実世界にフィードバックし、社会の課題を解決する………というCPSの概念は、あらゆる産業で、従来の産業構造とビジネスモデルに大きな変革をもたらしており、社会自体も変化させています。

 これは、既存の組織や業種の枠を越えて産業を横断する「つながり」を生むことにもつながり、それによって、社会システムや産業構造を一変させています。

 CEATEC JAPANは、そうした社会の大きな変革の中で、中心にいる総合展示会になりたいと考えています。そして、「総合展示会」という言葉にも重要な意味があります。

 これまでは「エレクトロニクス企業、IT企業の展示会」でしたが、「CPS/IoTの展示会」となると、業界の枠を超えた企業の出展が不可欠です。

 CEATEC JAPAN 2017では、日本の3大メガバンクが初めてそろって出展や講演を行い、大手工作機器メーカーも初出展、基調講演も行います。過去には、有名人を呼んで基調講演を行うということもありましたが、そうした企画はやめ、すべての基調講演、コンファレンスが、新たなビジネスの創出につながるものとなっています。このように、業界の枠を超えた企業が出展する「総合展示会」が、今後のCEATEC JAPANが目指す展示会の姿です。

 実は、主催団体の1つであるJEITAは、今年5月の総会で定款を変更し、会員資格として、エレクトロニクス製品を生産する企業だけでなく、エレクトロニクス製品を使用し、サービスを提供する企業にまで範囲を広げました。その結果、JEITAの正会員としてトヨタ自動車が参加しています。まさに、CPS/IoTという観点で、新たな業界団体への進化を遂げたわけです。そうした活動を具体的なかたちで多くの方々にお見せするのが、CEATEC JAPANの場になります。

 これからも、さまざまな業界の方々に出展をしていただく展示会へと発展させていきたいですね。出展者数や来場者数という指標も大切ですが、幅広い業界の方々に出展していただくこと、そこで出展社同士、来場者と出展社が、CEATEC JAPANの場から、どれだけビジネスを創出することができるかという点にこだわっていきたいと思っています。

 業界団体が主催している展示会ですから、主催者の目線や、出展社の目線だけで成果を求めるのではなく、来場者にとっても価値のある展示会へと育てていきたいと考えています。

――かつてのCEATEC JAPANは、最新製品を紹介するという点で、BtoCの展示会という側面がありました。しかし、CPS/IoTの総合展示となったことで、BtoBの側面が強く感じられるようになりました。今後は、BtoBの展示会を目指すことになりますか。

 私は、「BtoBtoCの展示会にしたい」と思っています。

 確かに、出展社同士、あるいは出展社と来場者を結び付け、そこで新たなビジネスを創出するという観点から見れば、BtoBの要素を強く感じるでしょう。しかし、その先には必ず「C」があります。来場者が一般ユーザーとして、技術や製品、サービスを活用するというケースもあり、そこからヒントを得るといったこともできます。さまざまな業界のさまざまな企業と、さまざまな来場者が、さまざまなかたちでつながるBtoBtoCの総合展示会を目指していきます。

 CEATEC JAPAN 2017の事前登録者の方々にアンケートを取りますと、今年は、AIに対する関心が非常に強いことが分かります。あらゆる産業が、IoTやビッグデータ、AI、ロボットなどのイノベーションの力を活用して社会課題を解決し、新たな産業を生み出す「Society 5.0」時代の総合展示会として、CEATEC JAPANの役割は、これまで以上に重要度を増していくことになると考えています。ぜひ、今年のCEATEC JAPN 2017に来場していただき、新たな「CEATEC体験」をしていただきたいですね。

【CEATEC関連インタビュー一覧】

弊誌では、注目される「IoTタウン」の出展社の一部にインタビュー、「超スマート社会」を切り口にブースの注目ポイントや事業内容を紹介している。気になる方はぜひ一読してほしい。

【三菱UFJフィナンシャル・グループ】
 フィンテックで進化するMUFGの金融サービス、2年連続で「CEATEC JAPAN」に出展する狙いとは

【三井住友フィナンシャルグループ】
 三井住友FGが取り組むデジタルイノベーションとは? 「目指すのは、明日の金融にサプライズを起こすこと」

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