インタビュー
フィンテックで進化するMUFGの金融サービス、2年連続で「CEATEC JAPAN」に出展する狙いとは
~MUFG、カブドットコム、じぶん銀行の三社に聞く~
2017年9月15日 06:02
「CEATEC JAPAN 2017」が10月3日~6日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される。
昨年、「最先端IT・エレクトロニクス総合展」から「CPS/IoT Exhibition」へと生まれ変わり、2年目を迎える今年のCEATEC JAPANでは、「日本の成長戦略や未来を世界に向けて発信するSociety 5.0の展示会」を目指し、国内外の最新技術を一堂に展示することになる。
そして、昨年話題を集めた主催者特別企画「IoTタウン」が今年も用意される。ここでは「“Society 5.0の実現”をIoTで実現する」をテーマに、フィンテック、スマートホーム、地方創生などの観点から、Society 5.0に取り組む企業が出展。IT・エレクトロニクス産業以外の企業の出展が多いのも特徴だ。新たに生まれ変わったCEATEC JAPANの広がりを感じることができる展示エリアともいえるだろう。
昨年に引き続き、IoTタウンに出展するのが三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)である。昨年の展示では、MUFGが取り組むフィンテックに大きな関心が集まり、ブース前には黒山の人だかりとなったのは記憶に新しい。
2年連続でCEATEC JAPANに出展する狙いと、同社のデジタルトランスフォーメーションおよびフィンテックにおける取り組みについて、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの藤井達人氏(デジタル企画部プリンシバルアナリスト)に話を聞くとともに、ともにIoTタウンに出展するカブドットコム証券株式会社の伊藤充淳氏(イノベーション推進部フロント事業グループ長)、株式会社じぶん銀行の榊原一弥氏(執行役員、決済・商品開発ユニット長兼商品開発部長)にお話をお伺いした。
新体制でMUFGのデジタルイノベーションが加速
――MUFGにおけるデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが加速していますね。
藤井氏:
MUFGでは、1990年代に、三菱東京UFJ銀行内にEC業務部を設置し、インターネットバンキングの導入に着手するなど、早い段階から、これまでにない革新的な金融サービスを生み出すことや、行員の生産性向上、業務の正確性向上などに取り組んできました。ATMでの静脈認証の導入や、KDDIと共同で展開しているじぶん銀行なども、その成果の1つだといえます。
金融機関を取り巻く競争環境が大きく変化する中、こうした実績をもとに、2017年5月には、MUFGのデジタライゼーションにかかわる組織を、新たな体制へと移行しました。デジタルトランスフォーメーションを推進していたデジタルイノベーション推進部を、コーポレートセンター傘下に移動するとともに、名称をデジタル企画部へと変更しました。これによって、経営企画部と緊密に連携したり、経営の意思をより反映しやすくなったともいえます。フィンテックをはじめとしたテクノロジーを活用し、MUFGにおけるデジタルイノベーションによる金融サービスの高度化に取り組み、従来は、PoC(Proof of Concept)にとどまっていたものについても、事業化することを重視し、それを実行するための予算も獲得しています。
デジタル企画部のもう1つの役割は、ペーパーレスへの取り組みや、RPA(Robotic Process Automation)の活用などによって、社内のデジタル化を推進し、社内の効率化、既存ユーザーへのサービスを向上させることです。
この部分に関しては、事業部門から選出した社員などがデジタル企画部に移籍し、現場を知る立場からデジタル化を推進していくことになります。こうした新体制により、デジタル企画部の陣容も約60人にまで増加していますし、今後は、グローバルへの拠点展開も開始していくことになります。また、デジタル企画部を統括する役職として、新たにCDTO(チーフ・デジタル・トランスフォーメーション・オフィサー)を新設し、執行役常務の亀澤宏規がCIOと兼務するかたちで就任しました。
さらに、金融サービス以外の領域を含めて、イノベーティブなサービスを創造する役割を担ってきたイノベーション・ラボは、Japan Digital Designとして別会社化し、これまでの枠に捉われず、外部エンジニアの採用や、地域金融機関との協働にも踏み出していきます。
このように、2017年5月以降、新たな体制で、より積極的にデジタルイノベーションを推進することができるようになりました。これらの積極的な動きからも分かるように、経営層が、デジタルイノベーションの重要性を強く認識しているというのが、MUFGの現状だといえます。
「顧客接点」におけるAIの活用が重要に
――昨年のCEATEC JAPANのMUFGブースでは、銀行APIの展示が注目を集めました。
藤井氏:
多くの方々に関心を持っていただくことができました。MUFGでは、2017年3月に、オープンAPIとして「MUFG{APIs}」を新たに発表しています。MUFG{APIs}は、三菱東京UFJ銀行が提供する法人向けおよび個人向けの銀行API、カブドッコム証券が提供する証券API、三菱UFJ国際投信による「eMAXIS(イーマクシス)Web API」で構成されています。
今後、他のMUFG のグループ企業からも新たなAPIを提供することも検討しており、MUFG{APIs}のラインアップは増加することになります。金融機能を外部に公開し、APIエコノミーの中で新たなデジタルサービスを提供していくことは大きな潮流となっていきますので、この取り組みはより加速していきたいと考えています。
――もう1つ注目を集めたのが、店頭で案内を行う人型ロボット「NAO」や、スマホアプリによるバーチャルアシスタント「MAI」の展示でした。
藤井氏:
NAOはロボットということもあり、会場でも注目を集めましたが、むしろ、顧客接点という観点から見ると、ここにおけるAIの活用が重要になります。
MUFGでは現在、ウェブサイト、スマホアプリ、LINE公式サイト、そして、成田空港支店に設置しているNAOといった複数チャネルを通じて、投資信託に関する質問に答えたり、銀行サービス全般に回答したりといったように、照会対応を中心にフロントシステムを稼働させています。ここではIBMのWatsonを活用し、自然言語によって対応できるようにしており、正しい回答率が9割以上となっています。
いまはデータを蓄積し、お客様からのフィードバックを得てブラッシュアップしている段階であり、将来的には、チャネルを問わずに同一体験を提供できる仕組みへと発展させたいと考えています。直接的な金融取引にかかわらない応答に関しては、かなり精度を上げられるという見込みが立ってきています。照会対応にとどまらず、お客様の金融にかかわる行動を直接サポートし、提案活動などが行えるように広げていきたいと考えています。
ブロックチェーンや仮想通貨、スタートアップの事業化支援も
――一方で、昨年のCEATEC JAPANで展示を行わなかったものの中ではどんな取り組みがありますか。
藤井氏:
1つは、ブロックチェーンの実証実験があります。これはシンガポールのシステム部門で行っているものなのですが、サーバー調達において、契約、配達、請求書発行、支払いまでを一気通貫でブロックチェーンによって管理し、サプライチェーン全体のプロセスを自動化するものです。
もう1つは、独自の仮想通貨「MUFGコイン」への取り組みです。現在は、行員150人が参加して限定的な運用を開始していますが、さまざまな機能拡張を行い、1500人に拡張し始めたところです。さらに、今後は、全行員が利用できるようにしていきます。まずは、東京・丸の内の三菱東京UFJ銀行本店の食堂での決済などに利用できる予定です。ただ、これまでに経験がない新たな取り組みですし、お金が絡むものですから、スケジュールを優先するよりも、信頼性をしっかりと担保していくことに重点を置いています。
――オープンイノベーションにも力を注いでいますね。
藤井氏:
スタートアップ企業の事業化を支援するMUFGデジタルアクセラレータプログラムは、今年は第2期に入りました。
7月28日に成果発表イベントを開催し、6社と事業化を進めることになりました。第1期に比べて参加企業は倍増しており、大きな成果を上げています。MUFGデジタルアクセラレータプログラムは、昨年のCEATEC JAPANの展示の中でも紹介しましたが、その展示を見たり、CEATEC JAPANの報道を通じて知ったりといったことがきっかけになり、応募していただいた企業も数社ありました。
すでに第3期の検討も開始しており、ここでは、アジアや北米の海外スタートアップ企業の参加も得たいと考えています。
一方、MUFGでは、外部企業への戦略的出資を増やしています。これは、今後も力を注いでいきます。
――MUFGデジタルアクセラレータプログラムの成果として、すでに事業化につながっているものがありますね。
藤井氏:
テクノロジーを積極的に活用してサービスを提供しているネット証券やネット銀行は、最もテクノロジーに取り込みやすい企業であり、これらの企業において、MUFGデジタルアクセラレータプログラムによる成果が上がっています。
例えば、ネット証券のカブドッコム証券では、xenodata lab.の技術を活用しており、ネット銀行のじぶん銀行では、Alpaca Japan株式会社(AlpacaDB, Inc.の日本法人)との協業によって、新たなサービスの提供を開始しています。
カブドットコム証券の場合決算分析をAIが自動レポート、新興市場の中小型株まで幅広くカバー
――カブドットコム証券ではどんな成果が上がっていますか。
伊藤氏:
カブドットコム証券は、1999年に創業したネット証券会社で、上場している証券会社の中では唯一、システムエンジニア出身者が社長を務めている会社です。フィンテックという言葉が出てくる前からAPIの公開やビッグデータにも積極的に取り組んでいますが、2016年1月からフィンテック領域における先端研究や事業開発を行う社内プロジェクトチームとしてkabu.com Fintech-Labを設置し、各部署から兼務のかたちで複数の社員が参加し、新たなサービスの創出に取り組んできました。
ネット証券ですから、紙で行っていた手続きや作業などをデジタル化するといったことはひと通り完了しており、これからは、テクノロジーを活用して、いかに新たなサービスを創出するかといったことが課題となっていました。MUFGデジタルアクセラレータプログラムを通じていくつかの優れた企業と出会うことができましたが、xenodata lab.のテクノロジーは、Microsoft AzureやAWS(Amazon Web Services)のクラウド環境を活用して低コストでサービスを提供できること、さらに、これを短期間でサービスにつなげることができると考え、事業化に向けて協業を行いました。
――具体的にはどんなサービスですか。
伊藤氏:
xenodata lab.が持つ自然言語処理技術と企業の財務分析のAI技術を活用し、適時開示情報に掲載された決算短信のメタデータを自動的に処理し、数十秒から1分以内に決算レポートを提供するものです。これを2017年7月14日から、自動決算分析レポート「xenoFlash(ゼノ・フラッシュ)for kabu.com」として、サービスを開始しました。
もともとネット証券では、調査部門がなかったり、そこに人を割けなかったりといった課題がありましたが、これを解決することができます。また、マザーズ市場などの新興市場の中小型株は、個人投資家を中心に売買代金が増加傾向にありますが、これらの銘柄については、大手証券会社のアナリストレポートの提供対象銘柄になっていない場合が多く、投資判断に必要な情報が十分に提供されていないという課題がありました。
新たなサービスによって、投資に対するハードルを下げていくことができます。もちろん、すぐに個人投資家が増えたり、収益が拡大するとは考えていませんが、中長期的に見れば投資家へのメリットや小型株への投資が増えるといった動きにつながると考えています。まずは限定的なサービスということもあり、最初の1カ月間のユニークユーザー数は500人程度ですが、いままではアナリストレポートがなく、四季報が出るまで待たなくてはならなかった会社の情報が、すぐに入手できるという点で評価されています。いい手応えを感じているところです。
――サービス開始に向けては、どんな点に苦労しましたか。
伊藤氏:
日本証券業協会ではアナリストレポート規定を定めており、これに準拠すると社内での審査などを行う必要があり、この作業に数日かかることになってしまいます。AIが1分間でレポートを作成した意味がなくなってしまうのです。
そこで、アナリストレポートというかたちではなく、1つのサービスとして提供する形態をとっています。
じぶん銀行の場合外貨の相場変動をAIが予測、上昇しそうならプッシュで通知、的中率は「優秀なトレーダー以上」
――じぶん銀行が提供しているサービスではどんな成果が上がっていますか。
榊原氏:
じぶん銀行では、2017年6月から、Alpaca Japan株式会社との協業で、AI外貨予測というサービスを提供しています。国内における金利環境がネガティブな中で、外貨預金を活用したいという動きが預金者の中に広がっています。
一方で、じぶん銀行では、日本で唯一のモバイルバンクとして、モバイル環境で外貨預金に関する情報を提供したいと考えました。スマホを通じた各種サービスのインターフェースの改善を図っており、AI外貨予測サービスでは直感的に理解できる環境の実現にもこだわっています。そして、デジタルイノベーションが進展する中で、新たなテクノロジーを活用して、これまでにないサービスを提供したいという方向性も打ち出していたところでした。
AI外貨予測では、こうした3つのベクトルが合わさって実現したものだといえます。スマホアプリを利用して、米ドル、ユーロ、豪ドル、ランド、NZドルの5つの通貨を対象に、過去の為替変動の情報をもとに、数時間から数日後の為替の変化をAIが分析および予測し、外貨が上昇しそうなタイミングをプッシュ通知で知らせるサービスになります。どのタイミングで外貨預金を行ったらいいのかが分からないという預金者が多い中で、新たな提案を行うことができます。
――どれぐらいの精度で予測ができるのですか。
榊原氏:
まだ、しっかりとした分析はできてはいないのですが、現時点では、優秀な為替トレーダーの的中率を上回っています。個人のお客様が外貨預金をする際には十分参考になるデータであると考えています。
外貨預金を行っている人に比べて、このアプリを利用している人が2倍以上もいること、しかも継続的に見ていただいている利用者が多く、外貨預金の潜在ユーザーを獲得するという点でも成果が上がっていると判断しています。これは当初予測を上回る反響です。実は、MUFGの為替を市場運用している部門からも、「トレーダーの教育にもこの技術を活用したい」という声が上がっています。
伊藤氏:
AlpacaDB, Incとは、カブドッコム証券も協業を行っており、同社が独自に開発した金融時系列データの特徴量抽出技術を活用して、チャート画像認識サービス「AlpacaSearch for kabu.com」を2017年5月から提供しています。当社が公開しているAPIを活用し、そこから得た株価情報をもとに特定銘柄を選択し、日足と日中足のローソク足のデータに基づいて、それに類似する銘柄を呼び出すことができ、そこにAlpacaの画像認識技術を活用しています。
もともとこれは、主に機関投資家の間で活用されてきたものですが、膨大な計算資源が必要であるため、個人投資家がこの技術を利用することが難しいというのが実態でした。AlpacaSearch for kabu.comを利用することで、個人投資家にとって自分の得意なチャートパターンを探索したり、大きなニュースがあったときに同じ値動きをするテーマを発見するなど、さまざまな応用が可能になります。
これは、アクティブトレーダーなど一部の限られた個人投資家を対象にしたサービスですが、さまざまなかたちで情報を提供するのがネット証券の役割だと考えており、今後も、株価形成前の動きを捉えたり、株価との因果関係をさまざまな観点から分析し、投資判断へとつなげることができるサービスをあらゆる角度から提供していきたいと考えています。
藤井氏:
このように、一般消費者にすぐに受け入れられるかどうかは分からないサービスや、少し進んだサービスを、大手金融機関が先んじて導入するといったことは難しいのですが、テクノロジーとの親和性が高いネット証券やネット銀行では、むしろ新たなテクノロジーを活用したサービスを提供しやすい環境にあるといえます。サービスの構想開始から1年足らずで、サービスを提供できるといったスピード感が、従来の金融サービスとは異なる動きだといえます。
まだ開発中で表に出ていないサービスがあります。これをどんどん出していきたいですね。まずは、リリースして、実際に使っていただいて、いいか悪いかを早めに判定して、改善を加えるというかたちが理想であり、それにあわせた開発体制なども構築していことでデジタルイノベーションを加速していきたいですね。
――MUFGでは、昨今のフィンテックを取り巻く状況をどう捉えていますか。
藤井氏:
金融機関の競合が金融機関であるという時代はすでに終わっています。動きの速いデジタルプレーヤーとの競合が始まっていますし、そうしたデジタルプレーヤーと協業することも重要な選択肢になってきています。
わずか2年前には、フィンテックはおもちゃのようなものだと言われていましたが、フィンテックの進化は速く、新たなテクノロジーを生み出したり、データをうまく活用したりといったスタートアップ企業が増えてきました。わずか数年で一気に力を付けてきた企業が多いですね。また、これからは、海外で評価されているフィンテックの仕組みが日本にもどんどん入ってくることになるでしょう。Appleをはじめとした巨大なプレーヤーもフィンテックの世界に入ってきていますから、その動きをしっかりと捉えておくことも必要です。そして、オープンイノベーションを実行に移し、成果を出すことが重要です。実行し、成果を出すといった繰り返しによって、MUFGの中においても参加する人が増加し、さらにオープンイノベーションが加速するといった好循環を生むことがこれからは大切になります。
金融機関による仮想通貨「MUFGコイン」を技術展示
――今年のCEATEC JAPAN 2017では、どんな展示を行いますか。
藤井氏:
昨年は初めての出展ということもあり、我々の取り組みを広く展示し、その内容を知っていただくという点で効果がありました。また、ブースに来ていただき、直接、サービスに触れてもらい、その場で意見をお伺いするという点でも効果があったといえます。例えば人型ロボットのNAOでの感情認識についても、「こっちが笑ったのに、ロボットは笑わない。笑っていることを認識してリアクションしてほしい」といった声をいただきました。新たなサービスを開始する際に、生の声を聞く機会を得ることが少なく、その点でも貴重な機会でした。今年の出展でも、ぜひ多くの生の声を聞きたいですね。
今年のブース展示では、MUFGコインの技術展示を行います。金融機関が展開するブロックチェーンによる仮想通貨を見ていただく初めての機会なので、我々が考えている世界と実際に使う人の世界との差のようなものをフィードバックとして得たいと思っています。
また、MUFGデジタルアクセラレータプログラムの第2期の成果の中で、まだサービスが開始されていないものがあります。これらの展示に対する意見をいただいたり、新たな協業のヒントを得たいと考えています。
伊藤氏:
カブドットコム証券では、AlpacaSearch for kabu.comや自動決算分析レポート「xenoFlash for kabu.com」の展示を予定しています。ぜひ、新たなサービスに触れていただきたいですね。
榊原氏:
じぶん銀行でも、AI外貨予測以外にもAlpaca Japan株式会社と協業している案件がありますので、そのあたりのコンセプトをお見せできないかと考えています。
――MUFGが出展するIoTタウンでは“Society 5.0”がキーワードになっていますが、MUFGはこれにどう取り組んでいきますか。
藤井氏:
今後、金融機関は、個々のユーザーに対するコンシェルジュ的な役割を担っていくことになると考えています。MUFGでは、AIに取り組み始めたときからAIコンシェルジュという提案をしてきましたが、コンシェルジュサービスともいえるものを多くの人に提供したいと考えています。金融機関では、一定の資産を保有しているお客様に対する営業担当が最適な金融サービスの提案を行っていますが、デジタルイノベーションによって、すべてのお客様にテーラーメイドの提案を可能にするなど、これまで不可能であったサービスを提供していきたいですね。
伊藤氏:
世の中をスマートにしていくという観点から考えれば、「これは面倒だ」と思うようなところをスムーズに解決できるというところに貢献したいですね。金融サービスにおいては、サービスごとに個別に口座を作るのは面倒であるとか、本人確認書類をそろえるのが面倒であるといったような「面倒」な部分がありますが、いまあるテクノロジーを活用すれば、スマホで認証するだけで一気通貫で管理できたりといったことが可能です。ユーザー目線で課題を解決することが、Society 5.0の実現につながると思っています。
榊原氏:
じぶん銀行が目指す方向性を役員で徹底的に話し合った結果、「お客様のバディ(仲間、相棒)になろう」という言葉にたどり着きました。これは、アドバイザーでもなく、サポーターでもない存在です。友達のような感覚であり、それでいて頼りになるという存在です。MUFGの取り組みとともに、もう1つの親会社であるKDDIのソリューションを活用することで、バディという立場でお客様につながり、Society 5.0に貢献できるのではないかと思っています。