読めば身に付くネットリテラシー
ひどい手口の「ドタキャン詐欺」で飲食店が狙われる。100万円のワインとともに予約が入り……
2025年7月11日 06:00
飲食店をターゲットにした、ひどい詐欺事件が発生しているので、その手口を紹介します。
6月24日、富山県の飲食店に6人の予約の連絡が入り、LINEでメニューのやり取りがしたい、と言ってきました。翌日午後6時からの予約を受けたのですが、当日の午後3時に連絡があり、ワインを用意して欲しいとメッセージが送られてきました。しかも1本24万円もする超高級ワインを4本と指定してきたのです。当然、店に在庫などありません。すると、酒販店を紹介するので、そこから仕入れるように言われます。仕込み作業に忙しい店主は、言われるままに代金を振り込みました。ワインは届かず、予約時間になっても6人は現れず、詐欺に遭ったことに気が付いたのです。
6月26日には、佐賀県のレストランに6人の予約の連絡がありました。同じような流れでLINEでメニューを相談し、高級なコースを予約し、100万円分のワインを仕入れるように要求してきました。このときは、店長がワインは自分で購入して欲しいと断ったため、ワインの代金分の被害は発生しませんでした。もちろん、予約時間になってもその客は来店しませんでした。
このような手口の「ドタキャン詐欺」は全国で発生しています。飲食店の善意に付け込んだひどい手口で、一刻も早く周知し、被害をなくしたいところです。
なぜ、富山県の飲食店は100万円近くもの現金を振り込んでしまったのでしょうか。
まず、翌日もしくは当日にワインを用意してくれ、と焦らせ、判断力を鈍らせます。ネット詐欺の常套手段で、期限を切って即対応させようとするのです。次に、払ったお金はあとで戻ってくるものと思い込ませていることです。今回のケースであれば、飲食代金として全額請求できます。もちろん、ワインの仕入れ代金に利益を上乗せすることもできるでしょう。また、通常なら大きなお金が動くので警戒しそうですが、あらかじめLINEでコース料理の打ち合わせをするなど、何度かコミュニケーションを取り、一定の関係を構築しているのがポイントです。
飲食店では実際に、客側からの指定でこのような仕入れ方をすることがあることも、的確な判断を難しくさせている背景にあります。筆者も飲食店を経営していましたが、在庫にないお酒を入れてほしいと頼まれることはよくあります。ただし、仕入れはいつもの取引先を使うので、詐欺に遭ったことはありませんでした。
とはいえ、被害を回避できるポイントはいくつかありました。まず、初めての客からの連絡なのに、LINEで連絡しようと言ってくるのは変ですし、ワインの仕入れ先を指定して来るのも怪しいです。そして今回のケースでは、振込先の口座の名義人が個人だったそうです。これだけそろうと詐欺の可能性が限りなく高いので注意が必要です。飲食店の皆さまは、ぜひ、こうした詐欺の事例があることを知って、同じ手口でだまされないよう注意してください。
また、飲食店で働いていない人も、あとで回収できると思わせることで、先に金銭をだまし取るような詐欺の手口があることを理解しておく必要があります。事前にある程度コミュニケーションを取って安心させ、儲け話を持ち掛け、あとで返金されるから立て替えておいてくれ、などと言ってくるのは、ネット詐欺の常套手段です。
例えば、副業詐欺では月50万円稼げるようになると言って、20万円の教材を売りつけてきたりします。最低月10万円分の仕事を紹介すると言って、数万円の会員登録料を求めてくるケースもあります。簡単な作業をさせる内職詐欺では、報酬を引き出す際に手数料を求めてきます。
バリエーションはさまざまで、個別の詐欺の事例・手口を知っておくことも必要ですが、やはりネットリテラシーを身に付けて、怪しい話には近寄らない、お金が動くときには冷静になる、といった基本を守ることが重要です。
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと