ヤフオク担当者に聞く~“爆速”で進めるヤフオクのジャンル拡大の狙いとは


 1999年のサービス開始から約13年。Yahoo!オークションはいまや、1日あたりの総出品数は2800万件を超え、国内シェアの7割以上を占める最大級のネットオークションサービスに成長した。

 個人間売買からスタートしたが、現在は事業者によるストア出品も盛んで、同じ商品であっても、新品から中古品まで幅広く探せるというメリットも生まれている。買い物をする時には、まずはヤフオクで探してみようという方も多いはずだ。

サービス開始から13年、レンタルやスキルの取引が可能になったYahoo!オークション9月10日正午から18日正午まで、「誰でも入札」キャンペーンを実施中

 すでに巨大サービスに成長したYahoo!オークションだが、今回新たに新しいジャンルの取引を開始する。「レンタル」と「スキル、知識」の新カテゴリが加わり、「役務、サービス」カテゴリも拡充された。従来はモノの取引が中心だったが、個人のもつスペースや、スキルの時間貸しや販売が可能になったのだ。今回のサービス拡充の特長や狙いについて、ヤフー株式会社 コンシューマ事業カンパニー オークション事業本部の上野景大氏、小久保正利氏、森健司氏にお話を伺った。


新サービスの概要

ヤフー株式会社 コンシューマ事業カンパニー オークション事業本部 上野景大氏

――9月5日からYahoo!オークションにレンタルサービスが加わりました。まずは概要を教えていただけますか。

上野氏:
 まず、「レンタル」と「スキル、知識」という2つのカテゴリを新設しました。また、これまで一部自動車系のみ扱っていた「役務、サービス」について、対象範囲を拡大しています。

 具体的に「レンタル」では、「スポーツ、レジャー 」「ファッション」「スペース」「不動産」「カメラ」「おもちゃ」「ゲーム」「絵画、工芸品」「ホビー、カルチャー 」「事務、店舗用品」「住まい、インテリア」の11カテゴリを新設しました。

 「スキル、知識」では、「コンテンツ制作」「学習、レッスン」「エンタメ」「代行」の4カテゴリを用意しました。

 また、「役務、サービス」では、ETCやカーナビ取り付け程度だったものを、「スキー、スノーボードメンテナンス」「ゴルフ用品修理、交換」「楽器リペア、改造」まで広げました。

 カメラやゴルフクラブなど物品のレンタルが可能になっただけでなく、不動産の別荘の時間貸しや、ご自身が所有する駐車場を時間貸しで出品いただく、といったことが可能になりました。われわれはこうした不動産の時間貸しジャンルを「スペース系」と呼んでいるんですが、これは目玉になるサービスだと考えています。

 「スキル、知識」では、たとえば制作スキルですね。イラスト制作や、時給でピアノやスポーツのレッスンをしますとか、結婚式の司会をしますといったスキルが出品できます。資格も経験も持っているけれど、今は事情があってそうした仕事からは離れている。空いた時間とそうしたスキルを有効に活用したいというようなケースで便利なカテゴリです。

 「役務、サービス」は、従来のカテゴリに加え、ゴルフクラブの修理、自転車の修理などのサービスがオークションで取引できるようになります。

――空いている別荘などが個人間で気軽に貸し借りできるなら、利用したい人も多そうですね。

上野氏:
 そうなんです。もうほとんど使わないけれど、売ったり手放すのも……というものがあると思います。そういう眠っている資産を有効活用していただけたらと考えています。

――出品できるのはどんな方なんでしょうか。

上野氏:
 詳しいルールは「お知らせ」(http://topic.auctions.yahoo.co.jp/notice/rule/post_503/)や「出品にあたっての注意」(http://special.auctions.yahoo.co.jp/html/rules/sell4.html)にありますので、そちらをご参照いただきたいのですが、個人の方と、オークションにストア契約いただいているご出店者様のご出品が可能になっています。

――「スキル、知識」カテゴリでは、派遣業との区別はどうなるのでしょうか。

小久保氏:
 「スキル、知識」カテゴリについては、出品できるのは、あくまでも“出品される方ご本人のスキル”という形になります。業者はダメというわけではないんですが、出品者が別の誰かをあっせんした場合、それは派遣業でいう「派遣」に該当するため、違法になります。仕事を請ける人そのものが出品者であれば、「派遣」には該当しませんので大丈夫です。

――資格や経験があるのに、フルタイムでは仕事ができないといった方にとっては、新しいチャンスになりそうですね。ただ、まだかなり種類が限られているようですが。

上野氏:
 今回は始めたばかりということで、弊社のほうで用意したカテゴリのみとなっておりまして、それ以外の出品というのはまだ許可していません。ただ、今後は弊社内でも洗い出しは行いたいですし、カテゴリにないものに対するニーズも上がってくると思いますので、そういったものを整理しながら、順次拡大を検討していきたいと考えています。

――用意されたカテゴリ以外のスキル、たとえば違法性の高いものが出品された場合の対処はどうなるのでしょうか

上野氏:
 従来の物販カテゴリでは「その他」という項目が用意されますが、今回はあえて「その他」は用意していません。また、安心してご利用いただくために、弊社のパトロールが十分な体制のもとに24時間パトロールを行っておりますので、発見した場合はルールに基づいて速やかに対処します。

新設カテゴリのガイドページ「レンタル」の「スポーツ、レジャー」カテゴリの出品


若年層にもYahoo!オークションを利用していただきたい

ヤフー株式会社 コンシューマ事業カンパニー オークション事業本部 小久保正利氏

――物販から形のないスキル販売へとこれまでのカテゴリ拡充とは性質の違うサービス強化になりますが、そうしたニーズは以前からあったということでしょうか。

上野氏
 潜在的なニーズはありました。法人のお客様でも、レンタルやサービスの出品をしたいというお話は以前からあったのです。しかし、従来のルールですとご出品いただくことができなかったので、お断りせざるをえない状況でした。

 また、オークション全体の流れとして、若い人や、Yahoo!オークションをまだ使ったことがない人にどんどん使って欲しいと考えておりました。そのために、出品のハードルを下げる目的で、出品の本人確認がモバイルで確認できるようになったんですが、さらに加えて、出品できるカテゴリを増やそうということで、モノでだけでなく、いわゆるサービスや役務も出品できるようにしようということで検討しました。

――これまでのオークションは、出品者と落札者が顔を合わすことなくモノの取引が成立していたわけですが、今回のカテゴリでは、個人同士が直接顔を合わせることになりますね。当然様々なリスクが考えられると思うのですが、その辺りはどのようにお考えになりましたか。

上野氏:
 リスクは、それこそ洗い出すときりがないぐらい思い浮かびますが、現状行っている他のサービスでも言えることだと思いますので、特にYahoo!オークションだからということはないと思うんですね。それより、ポジティブな面を考えてチャレンジしてみようというのが最も大きな理由ですね。新しい出品をどんどん増やせるんじゃないかという面にフォーカスして進めてみました。

小久保氏:
 現在社内の体制もカンパニー制を導入するなど変わってきておりまして。“爆速”をキャッチフレーズに掲げて、物事にどんどんチャレンジして、早いスピードでサービスを進めて行こう、迷ったらワイルドな方を選べ、とにかくやってみようという空気になっています。

 もちろんそれは、決してお客様の安全を完全に無視するということではなく、パトロールの強化や、安全対策をきちんとやりながら、新しいことにどんどんチャレンジしていくという取り組みで、これもその一環という形になります。その中で、まずオークションとして何が必要なんだっけ、というところから再検討させていただいたり、お客様のために何ができるのかという検討の中で生まれました。

――先ほど若い方にも利用を広げたいというお話がありましたが、現在の中心層は。

上野氏:
 中心層は20代後半から30~40代くらいですね。Yahoo!オークションは18歳から利用できますが、20代前半の方の利用はまだまだ少ないのが現状ですので、もっと積極的に参加できるようにしていきたいんです。

――モノも技術も体力も眠らせておくのはもったいないですしね。

上野氏:
 そうなんです。モノはなくても、才能を生かせる場になればいいなと思います。


出品者と入札者のやりとりが大切に

ヤフー株式会社 コンシューマ事業カンパニー オークション事業本部 セラー営業2部 森健司氏

――新しいカテゴリ用に特別な出品フォームが用意されることはないのでしょうか。自分ではアピールしにくい方もいそうな気がしますので、必要事項が漏れなく書けるテンプレートみたいなものは提供されるといいなと思うのですが。

小久保氏:
 出品フォームは従来と変わりません。何を書くかは出品者に任されるのですが、出品フォームそのものは現状の物販のままっていうわけにはいかないと思いますので、今後ニーズが多ければ、テンプレートのようなものは随時提供していこうかと思っています。

――スキルやレンタルの出品の仕方としては、1時間に対していくらからという形になるのでしょうか。

上野氏:
 そうです。2時間頼みたいというときは、個数も合わせて指定していただく形になります。時間によるディスカウントがある場合は、別で出品いただくことになります。その辺りの価格設定については、出品者側が説明欄に明記していただきます。

――「レンタル」以外は顔を合わせることになるわけですから、出品者、入札者ともに「ほんとうにこの人で大丈夫だろうか?」という不安を感じる方もいらっしゃるのではないかと思います。そのあたりのフォローはどのようにお考えでしょうか。

森氏:
 オークションページ記載の内容だけでは不明なことがあるような場合は、「出品者への質問」などの機能を使って、対応範囲はどこまでかといった具体的な点を確認していただき、問題なければ入札していただくという形になるかなと思います。質問と回答が公開されれば、それも情報になります。Yahoo!オークションでは初の試みですので、われわれもサービスを提供して、実際の利用状況を見ながら今後のカテゴリ拡充や対策などを考えるということになると思います。ただし、スキルの売買などこれまでの物販とは性質の違う取引になりますので、入札者と落札者のやりとりはこれまで以上に大事になってくるのではないかと思っています。

――資格取得証明書みたいなものが発行できるといいですね。

上野氏:
 そうですね。それでしたら買う側も安心ですね。資格証明書を弊社にご提出いただいて確認した上で、この人はこれを提出しています、というのを証明するという方法もあると思います。「Yahoo!お見合い」では年収証明など各種証明の仕組みがあるので、そういう仕組みを使って、同じような形ではできるかもしれないですね。

――クリエイティブなスキルの場合は、既存の写真掲載機能以外で、制作サンプルが見られると安心できそうな気がします。

上野氏
 説明の中にリンクはつけられますので、すでになんらかのページがある場合はそちらを参照していただくか、Yahoo!ボックスで共有していただくといいかもしれません。

――モノに関するレンタルでは、どうしても破損などのトラブルが心配になると思います。万が一発生した場合の対策などはありますか。

上野氏:
 基本的には当人同士で解決していただくことなります。ただ、破損や保証に関することや、壊れた場合には落札者に修理費を求める場合などは、必ず商品説明に書いていただきたいですね。

小久保氏:
 あとは、弊社の「Yahoo!保険」に「ちょこっと保険」というサービスもあります。プランによって金額が違うので、一概にいくらとは言えないのですが、数百円から可能ですので、そちらをご利用いただければ、入札者・落札者とも安心材料になるかなと思います。

――最後に、今回のサービス開始について、改めて一言お願いします。

小久保氏:
 この新しいサービスによって、新たに出品してみようと思う方が増えるとうれしいですね。タイミングで改めてオークションの楽しさを知っていただけたらうれしいですし、その相乗効果も期待しています。

森氏:
 Yahoo!オークション自体、すでにサービス開始から十数年が経過しました。新しいお客様に訴求するためにも、モノだけでなくコトも出品できることを認知していただき、ここを起点に新しいワクワク感を感じていただけたらと考えています。

上野氏:
 以前開催した座談会のときに、「最近Yahoo!オークションにでてるものがあまりおもしろくない」「出ているものがワンパターン」とみなさんおっしゃっていて(苦笑) 今回のように新しいカテゴリができていくことで、質をきちんと担保しつつ、もっとバラエティに飛んだものがでてくるような場ができ、お客様にもっと楽しんでいただけるサービスにできたらと考えています。これからもぜひご期待ください。

――本日はありがとうございました。



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(すずまり)

2012/9/13 06:00