ニュース
熊本地震被災直後の「指定外避難場所」、人口密度マップからヤフーが解析
2016年7月15日 16:15
4月に発生した熊本地震被災者の避難場所をビッグデータで分析した研究成果を、ヤフー株式会社が14日、発表した。研究は東京大学の関本研究室と共同で行ったもの。
熊本地震の発生直後に、被災した人々は指定避難所ではないショッピングモール「グランメッセ熊本」にも多く集まっていた。しかし、被災者支援メンバーには、どこに何人が避難しているかを知る手段がなく、安否確認情報はもとより、必要な支援物資の配送先や配送量が分からず、現場では混乱が発生したという。こうした被災地情報は、自衛隊が足で実態を探る地道な活動によって集められた。
ヤフーでは、被災者や復興に携わった人々にヒアリングした結果、「災害時の人の動きを把握し、すばやく必要な関係機関へ情報提供することで、今回の災害時に実際に直面したような課題を解決できそう」との仮説を得られたとのことだ。
こうした課題に対して、「人口密度マップ」と呼ばれるデータを用い、「どこにどれだけ人が集まっているかを地図上に可視化する」ことで、避難した人々が集まったエリアを抽出したのが今回の研究だ。
人口密度マップは、「Yahoo!地図」アプリの「混雑レーダー」機能として提供しているデータをもとにしている。同機能では、ヤフーが提供している「Yahoo!防災速報」アプリがインストールされた端末の位置情報をもとに、各エリアに実際にいる人の数を推定し、早朝6時から深夜1時まで、20分間隔で情報を更新して提供している。
人口密度マップでは、混雑レーダーのデータにアルゴリズムを掛け合わせて、通常時との差分を相対的にカウントしている。これにより、その場所の人数が多いかではなく、通常時に比べて混雑しているどうかを分析することで、多くの人が避難している場所を特定できるという。
平常時の熊本県の人口密度分布と、熊本地震の前震が発生した4月14日~21日、1カ月後の5月15日の人口密度マップの差分から混雑度を示したのが上の画像群となる。非常に混雑している赤い部分や、かなり混雑していオレンジの部分が、本震の発生した4月16日から17日にかけて最も増えており、このデータを指定避難所と照らし合わせ、人がどこに避難していたかが分かる。
これをグラフ化すると、4月16日の本震以降、「平常時とは異なる混雑」のエリアがしばらく大きな割合を占める日が続き、4月27日以降に徐々に減少していることがわかる。ただし、5月16日になっても、赤色のエリアは熊本地震前より多く、地震の影響が長期にわたっている。
こうした人口密度マップデータの分析により。指定避難所以外の緊急避難所を早期に特定できる。支援物資の配送計画などに役立てるなど、今後、同様の災害発生時にビッグデータを活用した有用な情報提供を行えるのではないかとしている。