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ラジオ局が作ったラジオ「Hint」、無指向性スピーカーで“気配”重視、スマホにURLを送信する機能など

(左から)ニッポン放送の吉田尚典氏、SF inc.代表のメチクロ氏、株式会社Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏、株式会社グッドスマイルカンパニー代表取締役社長の安藝貴範氏

 株式会社Cerevoは、株式会社ニッポン放送、株式会社グッドスマイルカンパニーと協業し、無指向性スピーカーを備えたラジオ受信機「Hint(ヒント)」を開発した。7月20日よりクラウドファンディング「CAMPFIRE」で資金調達を開始し、出資額はラジオ1台2万1500円(税込)から。

 Hintは、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏の「カッコいいラジオが欲しい」「ラジオをIoTにする」という思いから開発された商品。ハードウェアの仕様設計や試作機の開発はCerevo、製品デザイン面ではグッドスマイルカンパニーが協力。デザイナーはSF inc.代表のメチクロ氏が担当した。

 本体の大きさは80×80×287mm(幅×奥行×高さ)、重量は950g。一般的にイメージされるラジオのデザインと異なり、円筒状のデザインで上部にはLEDライトを採用している。電源はACアダプターまたはリチウムイオン充電池で、連続稼働時間は4~6時間。FM放送用周波数を用いてAM放送の補完的放送を行なう「FM補完放送」(ワイドFM)に対応。Bluetoothスピーカーとして使うこともできるため、スマートフォン内の音楽やPodcast、ストリーミングサービスを再生することができる。また、DSPはSILICON LABSの「Si4735」を採用。起動と同時に即受信できるところにこだわったという。

記者発表会では試作機を展示。スピーカーユニットは1個で、上向きに付いている
ラジオ音声だけでなく、アコースティック系の音源を得意としているため、ジャズなどの音源ではボーカルが強調されて聴こえるそうだ
本体上部
本体下部にはmicroUSB端子を備える

 無指向性スピーカーを搭載しており、部屋のどの位置からでもクリアな音が聴けるとしている。また、ニッポン放送技術部の監修の元、“人の声が心地よく聴こえる柔らかいサウンド”を目指してチューニングを施したという。

 吉田氏は、「ラジオをつけた途端に部屋の雰囲気が一変する。うるさくないが誰かがそこにいてくれる感じ、という“気配”がラジオにとって大切ということに気付いた」という。また、「スマートフォンの画面では冷たい情報に見えるものが、ラジオでは情感を持って伝わってくるといった良さは今でもラジオに生きている」としており、ラジオの音と気配をセットで考えた上で無指向性スピーカーが重要な要素になると述べた。

 さらに、ラジオ局がDTMF音(“ピッポッパッ”というような電話のダイヤル音)を放送に乗せて発信すると、Hintで受信し、BLEビーコンを通して半径約5~6m以内のスマートフォンにURLを自動転送する機能を搭載する。URL情報をDTMF音で変換する部分には「Toneconnect」、BLEビーコン経由でURLをやり取りする部分にはGoogleの「Eddystone」を採用。スマートフォンの連携機能を利用するにはブラウザーアプリ「Chrome」のインストールが必要になる。

 これらの機能を組み合わせることで、例えば、ラジオ番組に出ているアーティストのSNSページや、リスナーの視聴地域に合わせた店舗のクーポンURLをスマートフォンに表示することができる。専用アプリを入れる必要なくURLを受信できることを特徴としている。

URLをBLEビーコンでやり取りする仕組みにはGoogleの「Eddystone」を採用

 「URLを配信するメリットは非常に多い。生放送中だけノベルティを配信したり、ネットゲームで同じパーティーに招待してプレーするような使い方ができる」。今後、DTMF音を用いた放送をニッポン放送が順次対応する予定だ。

 また、本体上部のLEDも制御することが可能。将来的にはラジオ番組の放送内容に合わせてLEDの光り方を変える機能にも対応するという。「これまでラジオ局は一方的に音を配信することしかできなかった。追加ハードウェアを導入する必要なく、URLを配信したり、光を演出することができるのは技術的には面白いポイント」と岩佐氏は考える。

 クラウドファンディングの目標金額は1300万円(約500台分)。特典としては、初回限定カラーやHintへの刻印、スタジオ見学ツアー、オリジナルラジオ番組制作などを用意。クラウドファンディングが成立した場合は、遅くとも今年度内に製品を提供する予定としている。

限定カラーモデルや刻印、オリジナル番組制作など、「ラジオ局ならではのインセンティブ」を提供するという