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VOCALOIDを音楽の授業に、ヤマハが小中学校向け作曲アプリ「ボーカロイド教育版」、楽器演奏を学べる「ギター授業」「箏授業」も
2017年1月17日 06:00
ヤマハ株式会社は16日、スマートデバイスを活用した小中学校向けの音楽教育ソリューション「Smart Education System」を発表した。同ソリューションの音楽教材の第1弾として、VOCALOIDのエンジンを用いた作曲アプリ「ボーカロイド教育版」、楽器演奏を学べる「ギター授業」および「箏(こと)授業」の提供開始も明らかにした。
「ボーカロイド教育版」は2月7日に発売し、シングルライセンスが2万円(税別)、校内無制限ライセンスがオープン価格。「ギター授業」と「箏授業」は3月上旬に発売し、シングルライセンスが各7500円(税別)、校内無制限ライセンスが年間1万5000円(税別)で、別途配信プラットフォームの利用料金が必要。
VOCALOIDの歌声など最大4パートを駆使して簡単作曲
「Smart Education System」は、ヤマハが推進する音楽教育現場向けの新たなICTソリューションの総称。今回のアプリおよびコンテンツは、学校の学習指導要領における「創作」「器楽」「合唱」「鑑賞」という4授業のうち、「創作」と「器楽」に対応する教材で、いずれもWindows 7 SP1以降のPCに対応する。学校、教育施設や自治体向けに、PCソフト販売店、楽器店、通販サイトなどを通じて販売され、学校においては通常Windowsタブレットにキッティングする形で納入される。
「ボーカロイド教育版」は、音声エンジンにVOCALOIDの技術を採用した、タッチ操作だけで歌声を作りだすことができる作曲アプリとして、楽曲の創作に活用できる小中学校向けの教材。歌わせたい言葉をテキスト入力した後、音程と音の長さを表すグリッドのマスにタッチで色を付けていくと、その音程・音長に言葉が1文字ずつ割り当てられ、再生ボタンを押せばすぐに歌わせることができる。
歌声は最大で4パートまで重ねることができ、WAVファイルで伴奏を追加することも可能。パートごとに女性の声と男性の声のいずれかを選べるほか、歌声ではなくピアノ、箏、リコーダー、ギターの音色に設定することもできるようになっている。さらにパートごとに音量、定位も調整でき、作り上げた楽曲は最終的にWAV形式で出力可能だ。
実際にパイロット版を用いて音楽の授業を行なった小中学校の例も挙げ、1学年全員がクラスごとに“学級歌”の作曲に取り組み、生徒1人1人が言葉やアイデアを出し合って曲を作り上げたことも紹介。完成した学級歌は、クラス全員で合唱して発表した。教師らからは「既存の曲と違い、あっという間に歌えるようになった」「行き当たりばったり感の強い従来の創作授業とは違う取り組みができた」といった感想が寄せられたという。
16日に行われた記者発表会では、VOCALOIDの生みの親でもある、ヤマハの剣持秀紀氏(研究開発統括部新規事業開発部)が登壇し、「通常、商品開発では担当開発者が独善的に仕様を決めがちだが、今回の商品はプロトタイプを作り、実際に現場で使って、現場の声をフィードバックしながら作り込んでいくプロセスで開発を進めた」と述べ、製品の完成度に自信を見せた。また、VOCALOIDのエンジンが採用されていることについては、「当初予想していなかったこのような教育分野で活用されて、別のかたちで社会に貢献できることは、非常に幸せ」とも語った。
ポピュラーな音楽の演奏を学べる「ギター授業」と「箏授業」
「ギター授業」と「箏授業」は、主に中学校向けの器楽用教材として、教育コンテンツ配信サービス「EduMall」を通じて配信される。ストリーミング動画による実演映像とテキスト解説、押さえる弦の位置を表すグラフィックなどを組み合わせ、楽器を演奏する際の姿勢や弦の押さえ方、コードやメロディーの弾き方など、基礎的な演奏方法を学べるコンテンツとなっている。手元映像へのアングル切り替え、演奏例のテンポ変更なども可能だ。
「ギター授業」は、あえてクラシックギターによるコード演奏にフォーカスし、メロディーラインを担当するリコーダーなどの既存楽器と合奏することを見据えた内容とした。「カントリーロード」「情熱の花」「スカボローフェア」という3曲の演奏を学ぶことができる。
「箏授業」についても、演奏の仕方だけでなく、楽器自体の構造、各部名称、爪の扱い方、独特な縦譜(楽譜)の見方など基礎的な知識も得られる。演奏用楽曲としては「さくらさくら」(初級・上級)と「六段の調」の3種が用意され、日本の伝統的な楽器と音楽に親しむことも目的とした内容。
ヤマハが全国の中学校を対象に行った調査によると、ギターは3~4割、箏は7割の中学校に導入されているとのことで、これらのさらなる有効活用も期待される。