特別企画

小学校プログラミング教育の未来と課題を浮き彫りにしたドリームスクール

フジテレビKIDSが1月22日に特番をBSフジで放送

 2016年12月21日、中央教育審議会の次期学習指導要領の答申において、2020年度から「情報技術を手段として活用する力やプログラミング的思考の育成」が盛り込まれた。そこにはこう記されている。

・発達の段階に応じた情報活用能力を体系的に育成する観点から、小学校段階では文字入力やデータ保存などに関する技能の確実な習得を図るとともに、将来どのような職業に就くとしても時代を超えて普遍的に求められる「プログラミング的思考」を育むプログラミング教育の実施が求められる。その際、各小学校には、その実情等に応じて、プログラミング教育を行う単元を位置付ける学年や教科等を決め指導内容を計画・実施していくことが求められる。

・各小学校が見通しをもってプログラミング教育を実施することできるよう、国には教育委員会や、小学校現場、関係団体、民間や学術機関等と連携しながら、プログラミング教育に関する指導事例集や教材等の開発・改善を行うことと併せて、ICT環境の整備や教員研修、指導体制の整備などを確実に図っていくことが求められる。

(出典:「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)【概要】」平成28年12月21日付発表より
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/12/27/1380902_2.pdf

 しかし、施行まであと3年という現時点で、教育目標や内容、教育方法、教材、教具、指導体制など、具体的なことはいまだ示されないままだ。

 そうした状況を受け、フジテレビKIDSは1月9日、次世代を担う子どもたちとその保護者、さらに現場の教育関係者のプログラミング教育のヒントとなることを目的とした番組「beプログラミング2 2020年大予測!小学校の授業はこうなる!?」の制作を発表、授業内容の一部を公開した。

 番組はBSフジで1月22日(日) 12時00分~12時55分に放送される。

 この番組の校長には、現役の教育者にしてICT教育の先頭に立って実践する小金井市立前原小学校校長 松田孝氏を起用。松田氏は番組の収録にあたり「学校は本来、子どもたちが生きる時代と、そこで必要な技術を学ぶ最先端の場であったが、現実はなかなかそうなっていない。プログラミング教育の必修化で、子どもたちの未来に責任を持つ、新しい学びを実践できるのではないかと思っている。今回この番組を通して、子どもたちはもちろん教育関係者にも新しい学びの具体的イメージを作っていただければと思っている。」と意気込みを語った。

小金井市立前原小学校校長 松田孝氏

現役小学生32名が“未来の授業”を体験

 授業を受けたのは、ITとものづくり教室の「LITALICOワンダー」から、小学3・4年生15名の中学年クラスと5・6年生15名の高学年クラスの2クラスに、鈴木福くん、谷花音ちゃんが加わった計32名の現役の小学生たち。教科書やノートといったものはなく、授業に応じてMicrosoft Surface ProやApple iPadといったタブレット端末にプログラミング環境やアプリ、さらにはロボットなどを組み合わせて利用する。

参加した子どもたちは、2~3人のグループに分かれて授業を受けていた
【国語】自社のプログラミング教室でも講師を務める、株式会社エヌ・ティ・ティ・データの吉田潤子氏が担当。中学年を対象に、プログラミンを使い「四字熟語をアニメーションで表現しよう!」というテーマで授業を行う
【算数】株式会社アザイ・コミュニケーションズ代表取締役で、駿台電子情報&ビジネス専門学校講師でもある久木田寛直氏が担当。Makeblockを使い「センサーロボットを用いた『不等号』の理解」というテーマで授業を実施する。こちらも中学年が対象
【理科】Minecraftのレッドストーン解説動画でも有名なYouTuberの赤石先生が担当し、Minecraftを使って「レッドストーン回路講座」の授業を行う。対象は高学年
【社会】ビジュアルプログラミング学習ツールViscuitの開発者、合同会社デジタルポケット代表 原田康徳氏が担当。中学年を対象に、Viscuitを使い「ウィルスの感染/情報の伝達」というテーマで授業を行う
【英語】語学系学習支援ツールを手掛ける株式会社ナイト・ズーキーパー代表取締役 サムエル・デビドソン氏が担当する。テーマは「英語で自分だけの動物を育てよう!」で、高学年を対象に、Class Writerを使って授業を実施する
【音楽+図工】この2つは合科で、文部科学省教育 ICT アドバイザーも務める古河市教育委員会 教育部 参事兼指導課長 平井聡一郎氏が担当。高学年を対象に、GarageBandとSpheroを使い「ロボットを用いた創作ダンス+作曲」というテーマで授業を行う
【体育】テーマは「プログラミングで体を動かそう」。ルビィのぼうけんを使い、中学年を対象に授業を行った。担当はプログラミング教育の支援や啓発活動を行う、一般社団法人みんなのコード 代表 利根川裕太氏
【総合】慶應義塾大学総合政策学部教授の國領二郎氏が担当。高学年を対象に、「人工知能・ロボット技術の対話による将来の社会制度の共創」というテーマで授業を行う。日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」を利用する

 例えば、音楽+図工の授業では、作曲アプリ「GarageBand」とプログラミングでコントロールできるボール状のロボット「Sphero」を組み合わせて、生徒たちがSpheroの動作をプログラミングするグループと、それに合わせた音楽をGarageBandで奏でるグループに分かれ、最後に、できあがった作品を共同で発表する、という試みがなされていた。

平井氏による音楽+図工の授業風景。机上だけでなく床や教室全体を使って、実に生き生きと授業に取り組んでいた姿が印象的だ
タブレットのみに頼らず、ホワイトボードや紙と鉛筆も組み合わせてメンターとともに発表内容を考える風景も見られた
國領氏による総合の授業では、マイクロソフトのりんなを用いて、知能とは何かを子どもたちに考えさせながら、AIやディープラーニングの基本的な考え方に話を広げていく
ロボットの倫理を問う話題では、子どもたちの口からロボット3原則が語られ、どのように学習をさせればよいかを自ら考え発言する場面も

 一方で、1クラス16名という少人数の生徒に対し、日本有数のICT教育スキルを持った先生と複数人のメンターがいて、この授業が成り立っているという事実にも考えさせられる。実際にプログラミング教育が始まり、仮にカリキュラムと道具はパッケージとして提供されたとしても、これを子どもたちとともに考えてくれるメンター、ひいては家庭で学びを支えられる保護者は果たしてどれだけいるだろうか。

 この取材を通じて、2020年の小学校プログラミング教育必修化を間近に控え、学校や教師の環境整備やカリキュラム選定もさることながら、子どもたちの学びを最も近くでサポートするメンターの育成や、得てして受け身になりがちな保護者の意識を改革することが喫緊の課題ではないか、とあらためて考えさせられた。