人工衛星「イリジウム」利用した船舶向け衛星通信システム


 法人向けにEメール一斉配信サービスやインターネットFAXサービスなどを提供するエクスパダイト株式会社は26日、ブロードバンド船舶間衛星通信システム「Iridium OpenPort(イリジウム・オープンポート)」を紹介するセミナーを開催した。

 「Iridium OpenPort」は、人工衛星「イリジウム」を使用する通信システム。イリジウムは衛星携帯電話が知られているが、「Iridium OpenPort」では、データ通信と音声通話を利用可能だ。同システムは、米Globe Wirelessがイリジウム社の認定代理店パートナーとして世界展開している。

 日本では、エクスパダイトが総代理店を務め、6月10日に出荷を開始した。日本企業の外国籍船向けに販売する。用途としては、会社との電話やメール送受信。エンジンの駆動データを会社に送信し、効率的に船が運航されているかを確認するときなどに利用する。なお、エクスパダイトによれば、日本船主所有の船(外航船)の95%は外国籍船になるとのこと。主な船籍はパナマやリベリアなど。

 「Iridium OpenPort」の費用は導入ケースによって異なるが、機器本体参考価格は6000ドル。ただし、インマルサット機器を利用している場合、フリーアップグレードキャンペーンの対象となり、本体価格が無料になる。通信費はデータ送受信量に応じた従量課金制。エクスパダイトでは、「昨今の経済状況から、通信費用の削減を求める企業が多い。現在、月間1000ドルの通信費を使っている船だと、Iridium OpenPortを利用した場合、500ドル以下に抑えることが可能」としている。

船外に設置するアンテナ船内に設置するモデム

従来の船陸間衛星通信システムの半額以下で運用可能

Globe Wirelessアジア担当副社長のパトリック・トング氏
Iridium OpenPortの設置例

 Globe Wirelessのアジア担当副社長であるパトリック・トング氏は、現在利用されている衛星通信の種類や特徴について説明したほか、「Iridium OpenPort」の概要を紹介した。同システムは、イリジウム社が配備する66機の衛星網と専用端末を使用し、最大で128kbpsの常時接続環境を提供。IPデータサービスと、3回線で通話が可能な音声サービスを利用できる。インマルサットなど、従来の船陸間衛星通信システムの半額以下で運用でき、通信費を削減できる点を特徴としている。

 海上で使用する通信端末システムは、使用環境が苛酷な上、故障などが発生してもベンダーが即座に対応できないことから、より高い信頼性と耐久性が求められる。今回のサービス提供に当たり、Globe Wirelessは、高トラフィック負荷状態におけるストレステストなどを実施。実環境での使用に耐えることが検証されたとしている。なお、通信可能範囲は、南極・北極を含む地球全域。提供機器は、船外のアンテナや船内のモデム、船長・クルー用の専用電話機各1台、SIMカードなど。

 このほか、「Iridium OpenPort」の設置や船員への説明を行っている技術担当者が、システムの詳細について説明した。傘上の円形アンテナ内部は六角形になっており、複数の小型アンテナを備えるフェーズドアレイを採用。これにより、360度方向でイリジウム衛星ビームをキャッチできる。ビーム照射方向にアンテナを向ける必要がないため、「駆動機構を内蔵しないぶん、故障の原因を少なくできる」。アンテナからモデムへは有線(カテゴリー5)でつなぐ。

 モデムには、Ethernetポート1基、電話用のモジュラージャック3基を搭載している。また、独自技術のファイアウォール「GlobeSecure」を提供。通信設定を、Eメールのみ許可から、FTP、SMTP/POP3、Web閲覧まで制限できるほか、特定のポートのみ空けるカスタマイズも可能だ。これにより、企業所有船舶からの情報漏えいを防ぐことはもちろん、通信接続をカットすることで、コスト削減にもつながるとしている。通信の制御は専用ソフト「Globe iNet」を使用する。

アンテナの内部構造Iridium専用の電話機

iNetの画面料金比較、IOPがIridium OpenPort

 


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(野津 誠)

2009/6/26 19:57