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大型フェリー「さんふらわあ」で海上ブロードバンド、JSATが船内デモ

下り回線は最大3Mbps、コイン式端末も設置

ブロードバンドが導入されている「さんふらわあ ふらの」。大洗〜苫小牧間を約19時間かけて航行する
 衛星通信事業を手がけるJSATは21日、海上ブロードバンド通信サービス「Mega Wave Marine」の報道関係者向け説明会を茨城県・大洗フェリーターミナルで開催した。停泊中の大型フェリー「さんふらわあ ふらの」に体験乗船し、運航業務におけるインターネット活用事例や、公衆電話感覚で使える一般乗客向けインターネット閲覧サービスのメリットなどを紹介した。


下り回線は定額、最大3Mbpsのネット接続を海上で

 Mega Wave Marineは、下り最大3Mbpsのベストエフォート型インターネット接続を提供するサービス。上り回線にはNTTドコモおよびKDDIが提供する衛星通信サービス「DoPa」もしくは「インマルサット」を利用する一方、下り回線にJSATが運用する衛星通信網を活用するのが特徴。上り通信は4.8〜64kbps程度の速度にとどまり、かつ従量制の料金体系となるが、下り回線は定額制となるため、従来と比較して大幅にコストを削減できるという。月額料金は定額5万8,000円(下り回線のみ)、そのほか設備などの初期導入費用が150万円(概算額)から。

 JSATによれば、Mega Wave Marineはフェリーや調査船などで採用されており、契約数は現在25件。商船三井フェリーが運航する「さんふらわあ ふらの」など4隻の北海道航路便では運航業務目的に加え、一般乗客も利用可能な形で導入されている。


「さんふらわあ ふらの」の船橋部 船橋部の一角にブロードバンド接続されたPCが設置されていた

 今回の報道関係者向け説明会では、船橋部(操舵室)での導入例が紹介された。設置されているのはごく一般的なデスクトップPCで、気象予報や海上保安庁が発表する各種情報の確認、社内連絡のためのメール送受信などに利用されている。特に天気図はテキストと比べて情報量が多いため、Mega Wave Marine導入による速度アップでより快適に閲覧できるようになったという。

 実際の表示速度はFTTH環境に慣れたユーザーからすると遅く感じられるものの、アナログ回線のダイアルアップ接続よりもさらに遅い従来型衛星通信サービスと比較した場合は確実に速いことがデモから伺えた。また、一例として写真付きのニュース記事の閲覧が行なわれたが、これにかかったデータ量は約1,200パケット。従来型サービスではこの全額が従量課金されるため、1ページ閲覧するだけで700円前後の料金となる。これに対してMega Wave Marineは上り通信のみ従量課金されるため、定額料金を除けば10分の1の120パケット、70円前後で済む。

 なお、Mega Wave Marine導入にあたっては、内線電話網を利用したVDSLによる船内LANも構築された。操舵室内以外にも船長室や事務室、機関室などからインターネット接続が可能という。


一般的なデスクトップPCが利用できる 衛星受信用の機器などは船橋部後方の通路に配置していた

一般乗客も専用端末から利用可能、25分500円から

船内エントランスにあるインターネット端末
 一般乗客向けのインターネット接続は、船内エントランスに設置されたコイン投入型のPCで利用できる。「さんふわら ふらの」では合計3台が設置されており、モニター横にある機械に100円硬貨を投入することで利用できる。料金は25分500円だが、通信パケット数での制限(3,000パケット送信)も設けられている。また、時間切れ、パケット超過の直前には画面上で警告されるので、以後は100円5分単位で延長ができる。

 商船三井フェリーの大洗支店長で、「さんふらわあ ふらの」の航海士でもある田島孝一氏は「導入のきっかけとなったのは、バイク旅行のお客様からいただいたご要望。その後、検討を開始し、2007年2月に導入できた」と振り返る。また、「お客様のご利用形態は正確に分析していないが、船内滞在時間が約19時間と長いため、仕事のためというよりは“時間つぶし的”にご利用いただくことが多いようだ」と説明する。

 閲覧用のPCは専用にカスタマイズされたもので、電源再投入ごとにデータの保存状況が初期状態に戻る。なんらかのトラブルがあった場合は電源のオン・オフでメンテナンスができるため、PCに詳しいスタッフが船内にいなくても容易に復旧可能という。

 このほか無許可PCの接続を防止するための対策や、メールによる通信量報告機能なども用意されている。また、「さんふらわあ ふらの」では業務用途の回線と一般向け回線を別々に準備しているため、ウイルス感染などの影響を相互に与えることはない。

 なお、一般乗客向けのインターネット接続サービスはあくまでも船内に設置された専用端末でのみ利用可能。帯域の占有やセキュリティ上の課題もあり、持ち込みのノートPCなどは利用できない。


硬貨投入用の機器。初回500円の投入で25分間、もしくは3,000パケット送信するまで利用できる Internet Explorerをベースにしたオリジナルのブラウザを使うため、ユーザーが勝手にお気に入りを追加したり、設定変更することはできない

パケット数削減のため、画像の少ない独自ポータルなども用意 ブラウザ左下には利用時間などが表示される。コイン追加で利用時間延長も可能だ

将来的には上り速度の増速も検討

 説明会の冒頭では、JSATと共同でMega Wave Marineの販売を手がけるNTTワールドエンジニアリングマリンの電力&海洋BB事業部事業推進担当部長である上出靖昭氏によるサービス解説が行なわれた。上出氏は「海上での高速通信は高額な通信料がネックとなって普及していない。とはいえ、陸上ではブロードバンドが進展して久しく、業務に欠かせないものになってきた。陸上と海上で書類などをやりとりする必要もあり、海上のブロードバンドをおろそかにはできない」と必要性を強調する。

 海上を行き交う船にとっては電話が重要な通信手段となる。ただし通信速度やエラー訂正などの問題があり、FAXの画像が黒ずんでしまって読めない、大量の送受信には時間がかかる、PCを接続してもOSやウイルス対策ソフトのアップデート作業すらままならないといった問題があるという。

 上出氏は「通信料金が高すぎるので利用を控えるというケースも多いと聞く。しかしMega Wave Marineは下り定額だ」とメリットをアピール。また、「船舶におけるインターネットの利用傾向を分析したところ、受信データと送信データの割合は8対2あるいは9対1。圧倒的に多い下りのデータ受信を定額化できるため、ある会社では毎月20〜30万円程度だった通信料金を10万円前後に抑えられた」との例も示した。一方、陸上にある会社側から船舶への連絡に必要なコストも圧縮できる。

 なお、Mega Wave Marineは単純なインターネット接続だけでなく、陸上にある社内イントラネットと船舶内ネットワークを接続するサービスメニューも用意しており、柔軟な運用が可能になっている。上出氏は「船上のOA化はまだまだこれからの分野。今後はネットを使った業務効率化に加え、若手乗組員らの増加によってネット接続のニーズも高まるのでは」と語り、需要増への期待感を表わしている。

 また、JSAT営業本部公共ビジネス部課長補佐の阿部貴純氏によれば、今後は上り通信速度の増速も検討したいという。ただし「(上り速度の確保には)人工衛星の位置を正確に追尾できる高性能アンテナが必要だが、非常に高額。送信に関しては免許による規制も多い」といくつかの課題があることも明らかにしている。


NTTワールドエンジニアリングマリン電力&海洋BB事業部事業推進担当部長の上出靖昭氏 JSAT営業本部公共ビジネス部課長補佐の阿部貴純氏

関連情報

URL
  JSAT
  http://www.jsat.net/
  Mega Wave Marine
  http://www.jsat.net/enterprise/network12.html
  NTTワールドエンジニアリングマリン
  http://www.nttwem.co.jp/
  商船三井フェリー
  http://www.sunflower.co.jp/ferry/

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( 森田秀一 )
2008/03/24 13:26

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