EU、自動車事故の自動緊急通報システム、加盟国に自発的導入提言


 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は21日、自動車事故において自動的に緊急番号「112」に通報するシステム「eCall」を開発・導入することについて、加盟各国の当局に対して、自発的に実施するよう最終的な警告を出したと発表した。

 EUによれば、緊急番号に通報するまでの時間がこのシステム導入により半減し、2008年に3万9000人の死者が出ている交通事故で年間2500人の生命を助けることができるほか、170万人とされる傷害者数が減少し、重傷患者の重傷度を現在の15%から10%に緩和することができるとしている。

 現時点ではeCallのシステム開発は自動車会社および携帯電話会社にとって自発的なものでよいとされているが、そのせいもあって現時点でシステムが導入された加盟国はないという。2009年末までにシステム開発に顕著な進展がない場合、実施を強制する規制方策を提案することも辞さないとしている。

 eCallについては、従前より自主開発に委ねた政策を実行してきた。今回発表された政策提言では、2010年からの5カ年計画で、2014年までに自動車の車内に緊急番号システムを導入することを目標としている。もちろん、欧州以外の自動車メーカーも導入を義務付けられる。

 技術的には実行可能な段階に来ており、EU域内での標準化も産業界レベルでは同意に至っているとされているが、加盟国中6カ国(デンマーク、フランス、アイルランド、ラトビア、マルタ、英国)は、コストに関する問題から導入に難色を示しているとされている。他方、欧州議会をはじめ、加盟15カ国(オーストリア、キプロス、チェコ、エストニア、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、イタリア、リトアニア、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、オランダ、スペイン)、加盟していないが隣接するスイス、ノルウェー、アイスランドがeCallプロジェクトへのサポートに同意している。また、残りの加盟6カ国(ベルギー、ブルガリア、ハンガリー、ルクセンブルク、ルーマニア、ポーランド)も近く批准を予定している。

 加盟国が標準化に同意しなければ機能しないシステムであるだけに、全加盟国の動向が注目されるが、コスト関連の問題から同意を躊躇している国が6カ国もあるのが現状となっている。しかしEU側の試算では、eCall導入で年間260億ユーロが「節約」される一方、それにかかる費用は自動車1台あたり100ユーロ以下だとしており、自動車会社および携帯電話会社にもシステムアップグレードサービスなど新たなビジネスチャンスも生まれるはずであるとして、導入を促進したい考えのようだ。


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(Gana Hiyoshi)

2009/8/24 13:09