EU、デジタル映画推進へ諮問機関を設置


 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は16日、映像産業の専門家からなる諮問機関を設置したと発表した。EU地域における映像産業の「デジタル革命」に対応するための課題と対策について検討することを目的としている。

 欧州でも映画のデジタル化の波は急激に進行しているが、欧州にある3万の映画館のうち実に3分の1はデジタル化に対応する施設がないことから、デジタル化の進展に伴い閉鎖を余儀なくされるとみられている。何らかの公的支援ないし他の活用法がない限り、映画館が3分の2に減少することになってしまうことから、対策をEUレベルで協議することとした。

 欧州委員会では、映像産業のデジタル化は現在進行形であり、伝統的コンテンツ産業との融合および発展が必要であると認識している。また、新たな技術の導入は新規産業を創設するはずであり、新たなサービス産業の成立の余地も高いとし、EUの映像産業もデジタル化に対応していくべきとの認識を持っている。しかし他方で、伝統的な映画館のように対応しきれない可能性も指摘されており、デジタル化への移行をスムーズに行うべきとの意見もみられる。

 従来の35mmフィルムの映画に代わって導入される新たな技術としては、例えば3D映像などが考えられる。ただし、シングルスクリーンの映画館が実に31%を占めており、複合型は10%にすぎない。一方で、そもそもデジタル映画では配信費用が安価で済むことから、改革の余地は多いとみられている。

 すでに米国で新たに制作される映画は90%がデジタル化されているという。一方、EU内で最大の映画産業を誇るフランスではデジタル化されているのは半数に満たない。また、米国ではVPFと呼ばれるサードパーティが課金できるシステムを開発しており、デジタル化推進のための基金になっているという。このようなシステムはEUにはなく、デジタル化に対応した映画館は10%に満たない2428館にとどまっている。これは、全世界で11万館中1万2000館がデジタル化され、10%を超えているという世界平均にも満たない数字だ。また、予想では2012年までに20%がデジタル化されると予測されている。

 EUでは加盟国レベルで政府によるデジタル化の支援が進んでいる。例えばイタリアではすでに実施済みであり、フランス、ドイツ、ノルウェイなどでも支援予定であるとされる。しかし、欧州の独立系映画が上演されるほとんどの映画館では、デジタル化の予定がないとされている。

 諮問機関の活動期間は、12月16日までの2カ月間。これらの状況を打破するための分析を行い、推進計画を作成する予定だ。


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(Gana Hiyoshi)

2009/10/19 18:06