米Appleの電子書籍ストアは、Kindleよりも高めの価格設定?
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米Appleが27日、タブレット型端末「iPad」の発表とともに電子書籍市場への参入も明らかにしたが、同社CEOのスティーブ・ジョブズ氏によって行われた講演で、このビジネスの一部が明らかになっている。
まず、Appleの電子書籍ストア「iBookstore」には、現時点でわかっているだけで、Penguin、HarperCollins、Simon & Schuster、Macmillan、Hachette Book Groupの米国大手出版社5社が参加することが正式発表されている。そのほかにも多数の出版社が参加することが見込まれる。
デモ画面に映った書籍の価格設定は興味深い。最も多かった価格は12.99ドルだった(11冊中6冊)。これらの書籍は、Amazon Kindle Storeではたいていの場合11.99ドルと、1ドル低い価格で販売されていた。
ただし、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト・ノンフィクション部門に掲載された「The Imperial Cruise」という書籍に関しては、iBookstore価格が9.99ドルだったのに対し、Amazon Kindle Storeは11.99ドルと、iBookstoreの方が安い価格を提示していた。
表示されていたうちでiBookstoreの最も高い価格は、同リスト・フィクション部門の「Under the Dome」の14.99ドル。最安価格は「The Lovely Bones」の4.99ドルだった。
それ以外に「Free」と表示されている項目があり、Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズ)、Dracula(ドラキュラ)、Alice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)、Ulysses(ユリシーズ)、Treasure Island(宝島)などの書籍が無料でダウンロードできるようだ。
いずれにせよ、iBookstoreはまだ公開されておらず、これらの価格もデモ画面に表示された参考価格にすぎないのかもしれない。今後競争が激しくなれば、価格も流動的に変わることが予想される。
●電子書籍のオープン標準規格「ePub」を採用
Appleはまた、電子書籍フォーマットとして「ePub」を採用すると発表した。これは、電子書籍のためのオープン標準規格であり、基本的には内部にXHTMLを使用している。
すでにGoogleは「Google Books」でパブリックドメイン書籍約100万冊をePubでタウンロードできるようにしている。米Sonyも、米国で展開している電子書籍ストアにおいてePubを採用している。なお、Amazon KindleはePubフォーマットをサポートしていない。
AppleのiBookstoreのインターフェイスはiTunesによく似ているため、iTunesに慣れていればすぐに使いこなすことができる。書籍には、ユーザーレビューが表示されるほか、サンプルを一部読むことができる。
購入した書籍を読むためのアプリケーション「iBooks」は、木製の本棚の外見をしている。そこに購入した本が自動的に登録され、表紙が表示される仕組みだ。
書籍は1ページまたは見開きの両方で表示できる。目次画面からはリンクが張られており、直接章の頭に飛んで読み始めることも可能。フォントサイズは大・小の2つ、フォントの種類は5種類から選んで変更できる。
電子書籍リーダー市場は、Amazon Kindle以降、多数のリーダーが登場している。これまで発表された多くのリーダーは電子インクを使用しているため、目の疲れが少ないこと、電池寿命が長いことなどのメリットがあった。一方、iPadはLEDバックライト付きIPS液晶を採用し、これまでのものとは異なっている。書籍を読む場合に画面が綺麗だという大きなメリットはあるものの、眼精疲労と電池寿命がどの程度問題になるかは興味のあるところだ。
●iPad日本語ページでは「iBooks」の紹介なし
AppleがiPadの発表を行った1日後、iPadの日本語ページが公開された。ほとんどの情報は英語ページと同じだが、日本語ページには英語ページとは1つの大きな違いがあった。それはiBooksの機能が紹介されていないことだ。
iPadの特徴を紹介する英語ページには、iBooksが紹介されている。ところが、日本語ページでは、iBooksの紹介部分と画像がそっくり削除されていた。そしてページ下には、「地域によっては一部の機能、アプリケーションをご利用いただけない場合があります。アプリケーションの入手可能性と価格は予告なく変更する場合があります。」との但し書きがある。
Appleは27日の発表でも、iBookstoreが米国のみで開始されることを発表していたため、このこと自体は特別驚くべきことではないかもしれない。しかし、iBookstoreがiPadの主要な機能、目玉であることもまた事実だ。iPadの日本発売の時点で、日本でもAppleが電子書籍市場に参入するのかどうかが注目されるところだ。
関連情報
(青木 大我 taiga@scientist.com)
2010/1/29 11:56
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