日本経済新聞、電子版を3月創刊。購読料は月額1000円から


 日本経済新聞社は、新たなインターネット媒体「日本経済新聞 電子版」を3月23日に創刊する。一部は無料で閲覧できるが、すべてのコンテンツや機能を利用するには有料会員への登録が必要。月額料金は日経新聞の定期購読者が月額1000円、電子版のみの購読者は月額4000円で、決済方法はクレジットカード。3月1日から登録を受け付ける。

「NIKKEI NET」を継承・発展させた電子版。日経紙面も全文掲載

 「日本経済新聞 電子版」は、ニュースサイト「NIKKEI NET」を継承・発展させて、日本経済新聞社が新たに運営を開始するインターネット媒体。日本経済新聞本紙の朝刊と夕刊の東京最終版の記事全文を有料会員向けに提供するほか、特ダネを含んだ国内外の最新ニュースや日経グループ各社が集めた専門分野の情報やコラム、映像、英フィナンシャル・タイムズなどの海外コンテンツパートナーの翻訳記事を随時配信する。日本経済新聞社では、「日本経済新聞 電子版」に関して、「Web刊」との愛称を付けている。


「日本経済新聞 電子版」トップページ。「NIKKEI NET」の表記から新聞と同じ「日本経済新聞」に変わる有料会員以外の場合、「日本経済新聞」表記の背景が白地になる

 日本経済新聞本紙の記事全文は、朝刊が午前4時、夕刊は午後3時30分をめどに配信を予定。どちらも過去1週間分の記事が閲覧できる。サイト上では、1面や社説、政治というように掲載面に合わせて記事が掲載されている。また、記事にマウスカーソルを合わせると、ページ右側に表示された、紙面イメージ画像で記事の掲載部分を確認できるという。

 紙面デザインのまま閲覧できるFlashベースで動作する「紙面ビューワー」による閲覧も可能だ。「紙面ビューワー」では、紙面を拡大して表示できるほか、見出しを一覧表示して主要記事に1クリックで移動できる「ななめ読み」機能も用意した。


日本経済新聞朝刊の表示イメージ紙面デザインのまま閲覧できるビューワーも用意

 朝刊と夕刊の発行の間に起きた最新情報に関しては、サービス愛称と同じ「Web刊」というコーナーで随時掲載。現行の「NIKKEI NET」では、主要記事6本程度を時系列に表示しているが、「Web刊」では掲載時点で重要と判断したニュースや読み物を5~10本程度選んだ上で、関連記事や解説、写真などを組み合わせて掲載。これにより、そのニュースの影響度を一目で理解できるようになるとした。

 「Web刊」ではまた、日経産業新聞や日経MJ、日経ヴェリタスといった専門媒体の記事、日経BPが発行する雑誌記事、提携する外部メディア記事も掲載。加えて、テレビ東京や日経CNBCなどの映像コンテンツ、「ヒット商品番付」などのランキング記事、主要経済指標なども掲載する。

 このほか、各ジャンルに沿ったニュースやコラムなどを掲載するコーナーとして、「ビジネスリーダー」「マネー」「テクノロジー」「ライフ」「スポーツ」も設ける。

 会員種別は、日本経済新聞社の無料会員ID「日経ID」を取得して、購読料を支払っている「購読者(有料会員)」に加え、「日経ID」のみを取得した「登録読者(登録会員)」、未登録の「一般読者」の3種類。朝刊・夕刊の閲覧は有料会員に限定される。

 「Web刊」に加え、「ビジネスリーダー」などの各コーナーに掲載する記事に関しては、有料会員限定記事以外はすべての会員種別で閲覧が可能。また、登録会員では、有料会員限定記事を毎月20本まで無料で閲覧できる。なお、有料会員限定の記事に関しては、見出しの後ろに「+」マークを表示する。

 PC版の動作環境は、OSがWindows 7/Vista/XP SP2以降およびMac OS X 10.6。WebブラウザーがInternet Explorer 7以降またはFirefox 3.5、Safari 4(Macのみ)で、Adobe Flash Player 9以降も必要になる。なお、iPhoneなどのスマートフォンは創刊当初、PC版のデザインが表示される。各機器に最適化した画面を用意するかに関しては、読者のニーズを踏まえながら検討するという。


読者カテゴリーは3種類会員種別ごとの利用可能範囲

記事の自動ピックアップなど、有料会員向け機能も用意


有料会員向けに「My日経」を提供。画面は「おすすめ」機能

 機能面では、これまでに読んだ記事やユーザーが関心を持つ分野に対する記事を自動でピックアップする「おすすめ」機能を備えた有料会員向けの「My日経」を用意。「My日経」では、事前に登録したキーワードに合致する記事を自動で収集する機能、最大100件まで記事をスクラップできる機能、記事の閲覧状況を確認できる機能も用意する。

 また、「朝刊一面」や「ランキング」など、ユーザーが頻繁に利用するコンテンツや機能へのショートカットを登録できる「Myガジェット」機能も提供。「Myガジェット」は、有料会員が利用できる携帯電話向けサービスとも連動し、登録したショートカットを共有できる。また、閲覧履歴やスクラップした記事の情報なども携帯電話向けサービスと共有が可能だ。

 過去記事の検索に関しては、有料会員の場合で過去5年間の記事を検索可能。毎月25件までは月額料金内で記事の見出し・本文の閲覧が可能で、26件目以降は1件ごと175円の追加料金が発生する。また、無料の登録会員に関しては、過去6カ月間の記事が検索対象で、検索結果に関しては見出しのみ表示される。


キーワードに合致する記事を自動表示する機能も携帯電話向けサービスも有料会員向けに提供する

喜多社長「今スタートしなければ、10年後の成功はない」


日本経済新聞社の喜多社長
サイトURLも「NIKKEI NET」で使用する「http://www.nikkei.co.jp/」から「http://www.nikkei.com/」に改める

 24日に開催された説明会の中で、日本経済新聞社の喜多恒雄代表取締役社長は、「インターネットの普及により、世界中から膨大な情報がPCや携帯電話に集まっている」と語り、「特に若い世代を中心に紙の新聞ではなくインターネットで情報を手に入れる時代になっている」と説明。一方で、「その情報が本当のものなのか、発信源はどこなのか、誰か事実を確認したのかという点が情報の洪水の中でわかりにくくなっている」と指摘した。

 その上で、「紙の新聞で培ってきた正しい報道、価値のある言論を伝えていかなければならない」と語り、電子版創刊の経緯を明かした。喜多社長はまた、「PCや携帯電話などのデジタル機器に慣れ親しんでいる人に対しても、上質なジャーナリズムを提供することが、我々に課せられた役割だ」とも付け加えた。

 電子版の創刊理由に関しては、経営判断の側面もあるという。喜多社長は「紙の新聞は今後も続くが、将来大きな成長を期待することが難しい」とコメント。こうした中で、「良質な報道を確保するために経営基盤を強くするため、今後成長していくためにデジタル分野で収益を上げていくことが不可欠である」と述べた。

 喜多社長は「電子版を、紙の新聞に続く事業に育てていきたい」と述べ、「新聞業界は厳しい環境にあるが、今回の電子版の発表で新たなステージに入る」と発言。「電子版が簡単に成功するとは思っていない。成功するまで5年、10年かかるかもしれないが、今スタートさせなければ10年後の成功はない」とも述べた。

 「日本経済新聞 電子版」の購読料は、日経購読者が月額1000円、電子版のみの購読者が月額4000円だ。喜多社長は「本当に価値のある情報には対価をいただきたい」と述べ、「インターネットの情報は無料であるという、従来の観念とは違う考えで取り組みたい」と説明した。また、価格設定に関しては、「紙の新聞の部数に影響を与えないことを前提に、価格を模索した」という。

 日本経済新聞社では、日本経済新聞の発行部数が310万部程度であることから、1つの目安として約1割にあたる30万人を有料会員登録の目標とした。また、「日経ID」に関しては早期に50万人の登録を獲得したい考えだ。なお、売上目標などに関しては対外的な数値目標は掲げていない。

 このほか発表会では、「日本経済新聞 電子版」でのオープンな対応を表明。PCや携帯電話に加えて、それ以外のデジタル機器へも柔軟に対応する考えで、「一緒にやりたいという声があれば、我々の基本的な考えや親和性がある限り、前向きに取り組みたい」とした。また、「日本経済新聞 電子版」が成功した際には、得られたノウハウや構築した課金システムなどを、他の新聞社に対して提供する考えも示した。


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(村松 健至)

2010/2/24 18:47