話題の“パーソナルクラウド”サービス「Evernote日本語版」開始


Evernote

 米Evernote Corporationは3日、テキストや画像、音声データなどを保存できるオンラインサービス「Evernote」で、日本語版サービスの正式提供を開始した。合わせて、日本法人を今後90日以内に設立することなどを発表した。

 「Evernote」は、テキストやスキャナーで取り込んだ文書、デジタルカメラで撮影した写真、PDFファイル、音声データなどをアップロードしてオンライン上に保存し、PCやスマートフォンなど、さまざまなクライアントでシームレスに共有できるサービス。Webブラウザーからの利用に加え、WindowsやMacintosh、iPhone、Androidなど向けのアプリケーションを提供。各アプリケーションで登録した情報は自動で同期も可能だ。

 また、アップロードした画像データ中のテキストを認識できる機能も用意し、認識したテキストのキーワード検索などにも対応する。現在は英語や数字のみをサポートしているが、今後90日以内に日本語認識にも対応させる。

 無料会員では毎月40MBのアップロードが可能。月額5ドルまたは年額45ドルのプレミアム会員に登録した場合には、アップロード上限が500MBになるほか、アップロード可能なファイル種類の拡張、SSL暗号化による通信などが追加で利用できる。

リービンCEO「Evernoteは外部の脳とも言えるサービス」


フィル・リービンCEO

 今回、Evernoteで提供する主要アプリケーションで日本語化作業が完了したことから、日本での正式提供を発表するに至ったという。米Evernote Corporationのフィル・リービン(Phil Libin)CEOは「Evernoteは外部の脳とも言うべきサービス」と語るとともに、「自分が関心をもったあらゆる情報を一生にわたって蓄積できる」とEvernoteを紹介した。

 Evernoteのユーザー数は、公開ベータ版の開始から1年半で約250万人を達成し、毎日7000人が新規登録しているという。リービンCEOは、「Twitterと比較して、1年半での伸び率はEvernoteが大きい」と説明した。

 有料のプレミアム会員数は約5万人。リービンCEOによれば、サービス利用から1カ月で有料会員に移行する割合は0.5%だが、2年前に公開したクローズドベータ版から利用しているユーザーの移行率は8%だとした。また、2009年時点で無料会員の登録数伸び率は毎月10%であるのに対し、プレミアム会員からの課金収入は毎月18%の伸び率を示しているという。

 アプリケーションの利用比率は、Windows版が37.51%、iPhone版が32.37%、Macintosh版が32.30%と続く。ただし、多くのユーザーは複数のアプリケーションを使い分けて利用しているという。また、利用比率自体は3.90%と低いが、最近ではAndroid版の利用が急速に伸びているとした。


ユーザーの伸び率アプリケーション別の利用比率

日本ユーザーは15万人。今後90日以内に日本法人を設立

 Evernoteにアクセスする1日あたりのユーザー比率は、61%が米国、残り39%が海外からのアクセスになる。海外からのアクセスを国別に見ると日本が突出しており、リービンCEOは「この1年間で日本からのアクセス数が爆発的に伸びており、こうした経緯から今回の日本進出を決めた」と述べた。

 現在、日本のユーザー数は15万人。1日あたりのユニークユーザー(UU)数は2万5000で、この数値は英国やフランス、ドイツ、イタリア、スペインのUUを合計した数値よりも高いとした。

 リービンCEOは、「当初は日本語をサポートしていなかったことを考えると、この状況はまったく驚くべきこと」と発言。日本語化は2010年夏頃を予定していたが、「熱心なユーザーの協力によって、前倒しで日本語版を提供することができた」と述べた。


日本に次いでオーストラリアからの利用が多いが、現時点で進出の予定はないという。リービンCEOは「日本料理と比べてオーストラリア料理には関心がないから」とその理由を語り、会場を沸かせていた。日本におけるEvernote利用状況。ユーザー数は約15万人で、米国に次ぐ数字という

 日本語版サービスの正式提供に合わせて、日本法人を90日以内に設立すると発表。日本法人のスタッフ規模は年内に5名程度を予定し、日本向け機能の開発やマーケティング、サポート体制を整える。

 日本法人設立後は、クレジットカード決済時の通貨に関して、現在のドル建てに加えて、円建ての追加を検討する方針。なお、iPhone版アプリケーションからiTunes Storeを使った決済方法に関しては、すでに日本円による決済が可能だ。iTunes Storeでの料金は、月払いが600円、年額払いが5200円(3月3日時点)。

 なお、今後90日以内に公開を予定する日本語の文字認識機能に関しては、複数の開発パートナーと協力して開発を進めているという。公開後も機能改良を進める考えで、リービンCEOは「数カ月後には英語と同等の認識率に高めたい」とした。


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(村松 健至)

2010/3/3 18:26