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「日本電子書籍出版社協会」発足、出版31社が参加し規格など検討


日本電子書籍出版社協会に参加した31社の代表者
代表理事に就任した講談社の野間省伸副社長

 出版社31社からなる「日本電子書籍出版社協会」(電書協)が24日、設立総会を行い、正式にスタートした。

 電書協は、電子書籍販売サイト「電子文庫パブリ」を運営してきた任意団体「電子文庫出版社会」が母体となり、出版社31社が参加する一般社団法人として組織を拡大。電子文庫パブリの運営を引き継ぐとともに、電子書籍事業に関する課題の調査・研究を行っていく。

 参加31社は、朝日新聞出版、学研ホールディングス、角川書店、河出書房新社、幻冬舎、講談社、光文社、実業之日本社、集英社、主婦の友社、小学館、祥伝社、新潮社、ダイヤモンド社、筑摩書房、中央公論新社、東洋経済新報社、徳間書店、日経ビーピー、日本経済新聞出版社、日本放送出版協会、早川書房、PHP研究所、扶桑社、双葉社、ぶんか社、文藝春秋、ポプラ社、マガジンハウス、丸善、山と渓谷社。24日に開かれた設立総会で、講談社の野間省伸副社長が代表理事に就任した。

 設立総会と理事会の終了後に行われた記者会見で野間氏は、「電子書籍市場が日本の出版界にもたらす大きな影響は、決して無視できるものではないが、いたずらに悲観すべき材料でもない」として、協会では「著作者の利益・権利を確保すること」「読者の利便性に資すること」「紙とデジタルの連動・共存」の3つの理念を柱として、参加各社に出版のデジタル化・電子書籍市場に積極的な取り組みをしてもらいたいと語った。

 また、「日本の出版界に電子書籍やデジタル化の波が押し寄せてきても、紙か電子のゼロサムで考える必要はなく、優れたコンテンツを読者に提供する手段が増えることはむしろ望ましいこと。作家や漫画家の発掘・育成、才能の拡大再生産こそが出版社の役割であり、それはデジタル化でも変わることはない」として、日本の出版界における文化の多様性を確保し、新たに形成される市場を健全なものとしていきたいとした。

 協会の活動としては、電子文庫パブリの運営のほか、電子書籍の契約に関する研究を行う法務委員会、電子書籍のフォーマットに関する研究を行うフォーマット委員会、電子書籍端末に関する研究を行うビューアー委員会を設置。フォーマットについては協会として独自のものを作ることは考えておらず、既にあるものを研究対象として、「すべての出版関係者が余分な心配やコストをかけないように」スタンダードとなるものを整備していきたいとした。

 電子書籍市場によって著作者と読者がダイレクトにつながり、出版社が中抜きされる構造になることへの不安はないかという質問に対して野間氏は、「出版社の役割や価値を、著作者にどう評価してもらえるか次第。価値を認めてもらえれば中抜きされることはないと思うが、そうでなければ中抜きされるだろう」と説明。日本での電子書籍市場の拡大については、「いまのところ展望はまだ見えていないが、我々としては紙と電子の相乗効果を狙っている、紙も電子も膨らみ、パイが大きくなっていくことを目標としたい」と語った。

 出版社が新たな権利として「版面権」のようなものを確保していくことを目指すのかという問いには、「紙の時代から議論となってきたが、権利をなんとかして確保していこうという後ろ向きなことではなく、これからの事業を前向きに進めていくために、著作者の理解を得ながら検討していきたい」と答えた。

 著作者の利益・権利の確保に向けての取り組みについては、「著作者の中には、海賊版やコピーが出回るのではないかといった不安から、デジタル化に消極的な方もいる。そうした海賊版やコピーを取り締まっていくなど、クリエイターの方にきちんとお金が回っていく仕組みをきちんと作ることで、不安を取り除いていきたい」と説明。読者の利便性については、「紙で読みたい人もいれば、電子書籍端末で読みたい人もいる。端末にも専用のものや汎用のものがある。さまざまな読者の要望にコンテンツを提供できる形を目指していきたい」とした。

 また、AmazonやAppleなどが日本で電子書籍ビジネスを展開する場合に、協会が交渉窓口の役割を果たすのかという質問には、「交渉窓口になることはありえない。相談などには対応するが、交渉は各社が個別にやることと考えている」と回答。電子書籍の価格設定などについて協会が介入することも「まったくありません」とした。


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(三柳 英樹)

2010/3/24 20:02