医薬品通販規制に対する行政訴訟、「省令は合憲」として訴え棄却
会見を行うケンコーコムの後藤玄利社長(右)とウェルネットの尾藤昌道社長(左) |
2009年6月に改正薬事法が完全施行にされたことに伴ない、一般用医薬品の通販が厚生労働省令で規制されたことに対して、ケンコーコムとウェルネットの2社が国を相手に省令の無効確認などを求めた行政訴訟の判決が30日、東京地方裁判所であった。岩井伸晃裁判長は、省令は違法・違憲ではないとして、訴えを棄却した。
争点となった改正省令(平成21年厚生労働省令第10号)では、一般用医薬品のうちリスクの高い「第一類医薬品」「第二類医薬品」については対面販売を原則とし、インターネットなどの通信販売は行えないと定められた。これに対して、ネット販売業者のケンコーコムとウェルネットが、改正省令は営業の自由を侵害する違憲なものだとして、2009年5月に国を相手に省令の無効確認などを求める行政訴訟を提起した。
判決では、医薬品の通販規制を定めた厚生労働省令は「規制の強度において比較的強いもの」であるとしながらも、一般用医薬品の副作用を防止するという改正薬事法の趣旨に照らし、ネット販売は対面販売と同等の水準の安全性は確保できないとして、規制は合理的裁量の範囲内であると結論付けた。また、省令によりこうした規制を設けることは法律の委任の範囲は超えておらず、省令制定手続きも適法なものであったとして、原告側の訴えを退けた。
判決後、記者会見を行ったケンコーコムの後藤玄利社長は、「国側の主張を全面になぞっただけの、極めて不当な判決。消費者のために、医薬品インターネット販売の安全性を最大限高めていこうと努力していただけに、このような判決を受けて大変残念です」と声明を発表。「今回の省令は、日本薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会といった守旧勢力が、医薬品のネット販売を潰したいと官僚や族議員に働きかけ、9000以上の消費者からの反対のパブリックコメントを踏みつぶして、施行を押し切ったものだ」と訴えた。
また、判決では対面販売とネット販売を比べた場合に、「対面販売では購入者の様子を見聞きできるが、インターネット販売では困難」「対面販売では有資格者を名札で確認できるが、インターネット販売では確認できない」「インターネット上で禁忌事項に関するチェックボックスを設けても、購入者がそれを正しく理解しているか分からない」「対面販売では購入者から情報を聞き取ることができるが、インターネット販売では購入者の自己申告に基づくしかないので虚偽の申告を見抜けない」といった差があると指摘されていることに対して、「実際のドラッグストアでは、このような状況が実現できているのか。ドラッグストアに行っても、『ポイントカードを持っていますか』としか聞かれたことがない」と疑問を投げかけた。
後藤氏は、「裁判所は、インターネット上ではペテン師が嘘つきに医薬品を販売しているという想定に立っている」と述べたところで机を叩いて声を荒げ、「まさに結論ありきの判決。このような不合理な理由で、既存の業界を守り、新しい業界の台頭を妨げることに司法までも加担する。このような国に未来があるのか」と判決に対する怒りをあらわにした。
今後については、「今回は第一審の判決ということで、ただちに控訴の手続きに入るとともに、早急に医薬品通販の再開ができるよう取り組みを進めていく」と語った。
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(三柳 英樹)
2010/3/30 20:02
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