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医薬品ネット規制訴訟初公判、原告は「省令はネット潰し」と主張


東京地方裁判所

 医薬品のネット販売規制を定めた厚生労働省令に対して、ケンコーコムとウェルネットの2社が、医薬品のネット販売を行う権利の確認および省令の無効確認または取り消しを求めた行政訴訟の第1回公判が14日、東京地方裁判所で行われた。第1回公判では、原告側のケンコーコムとウェルネットからの意見陳述のみが行われ、被告である国側の反論などは次回以降に行われることとなった。

 6月1日に完全施行された改正薬事法では、一般医薬品をリスクの高い順に「第1類」「第2類」「第3類」に分類し、それぞれのリスクに応じた販売や購入者への説明を求めている。この薬事法の細則を定めた厚生労働省令で、「医薬品購入者への説明は対面で行うこと」が原則とされ、ネット販売などの通信販売では対面での説明が行えないことから、通信販売では「第1類」「第2類」の販売が禁止され、ビタミン剤など最もリスクの低い「第3類」の医薬品のみが販売できるとされた。

 今回の訴訟は、この省令の取り消しなどを求めて、医薬品のネット販売を手がけるケンコーコムとウェルネットが提起したもの。

「ネット潰しをたくらんだアンフェアな省令」ケンコーコム後藤氏

 ケンコーコムの後藤玄利社長は意見陳述で、「6月1日以降、医薬品ネット販売禁止という不条理な省令により、経営に甚大な被害が出ている」と訴え、「一刻も早く、この省令の憲法違反を判決で明らかにしていただき、改正薬事法施行前のように安全な医薬品ネット販売を再び続けさせてほしい」と主張した。

 後藤氏は、「ネット販売にこだわっているのは、昨今のドラッグストアに見られる医薬品の販売の仕方がとうてい安全とは言えないと感じているから」として、アルバイトの店員がレジを打っているような店舗よりも、ネット販売の方が十分に情報提供が行えると主張。「安全か利便かと言われるが、間違った問題の把握。ネットは安全を確保した上で利便性を提供している」として、裁判官に対して「ケンコーコムと店舗で、同じ医薬品を購入しようとしてみてほしい。どちらがより安全な方法か明らかになるはず」と訴えた。

 また、改正薬事法の施行により、ケンコーコムでは医薬品の売り上げが6月には前月から62%減少、1カ月で2300人に販売を断らなければならなかったと説明。さらに、経過措置として継続購入者に対しては販売が継続できるとされたが、そのために販売のたびに継続購入であるかを確認しなければならず、コストだけがかさむ結果となっていると語った。

 一方、実際の店舗では、後藤氏が7月にドラッグストアで第2類医薬品を購入した際には、店員からは「ポイントカードはお持ちですか」といった言葉しかかけられなかったと説明。また、伝統薬のメーカーの中にも、僻地に対する特例制度である「登録販売業」を改正法施行前に駆け込みで取得し、現在でも通信販売を続けている例があるなど、「厚生労働省はネット販売だけを目の敵にしているようだ」と主張。「ネット事業者はやむを得ず法令を遵守した販売をしている。その結果、ケンコーコムは年間5億円もの売り上げを失う。正直者が馬鹿を見るというのはまさにこのことだ」と訴えた。

 後藤氏はこうした状況から、「今回の改悪省令は、ドラッグストアや薬剤師を守るために、厚生労働省が露骨なネット潰しをたくらんだ、全くアンフェアな省令だ」として、「司法が行政の暴走を食いとどめていただきたい」と語った。

「どこから見ても違憲の暴挙」、国側の反論は次回

ケンコーコムの後藤氏

 同じく原告のウェルネット代表の尾藤昌道氏は、「4月に600万円あった売り上げが、6月には450万円に落ち込んだ。家族経営の小さな店舗で、このままでは事業が継続できなくなる」と訴えた。

 また、「第3類医薬品はネット販売を認める」というのは「言葉のマジック」だと主張。「一般的に使われる薬はほとんどが第2類医薬品。風邪薬、鼻炎薬、ユンケルなども第2類。これらの商品が買えない店にはお客は来ない。実際には『医薬品のネット販売禁止』と同じこと」だとして、こうした重大な規制を省令で行うことは認められないと語った。

 原告側弁護士の阿部泰隆氏は、省令は憲法22条で保障する営業の自由を侵害するものであり、また、法律より下の制省令でこうした規制を行うことは授権の範囲を超えており、憲法41条にも反するとして、「医薬品ネット販売禁止は、どこから見ても違憲の暴挙だ」と主張した。

 また、厚生労働省に対しては、1)6月1日以降も店舗などにおける対面販売で情報提供に特段の変化は見られないが、厚生労働省としてどのような対応を行う予定か、2)一部の会社が特例販売業を利用して僻地から全国に向けて医薬品を行っている実態について、調査の予定や、脱法行為と考えているかどうかの説明、3)改正薬事法では、第1類医薬品でも購入者が説明は不要だと表明すれば情報提供は必要ないとされているが、情報提供をネットで受ければそれで十分であるという購入者の意思表明があってもネット販売が禁止される理由の説明――の3点について、次回公判までに回答を求めた。

 第1回公判では、原告側が意見陳述を行ったのみで、被告である国側の反論などは次回以降に持ち越された。原告側は「省令により日々重大な損失を被っている状況だ」として早急な審理を求めたが、国側は対応には時間が必要だとして、第2回公判を9月1日を行うことを確認して公判は終了した。

 公判後、記者会見を行ったケンコーコムの後藤氏は、「省令は明らかな憲法違反であり、こういった状況が一刻も早く解消されて、施行前と同様に安全なネット販売が継続できることを強く求めている」と説明。また、裁判については、「裁判長からも『これは重大な憲法事件だ』といった発言があり、この問題を真摯に考えていただいていると感じた。省令による損害は日々続いており、一刻も早く救済していただきたい」と語った。


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(三柳 英樹)

2009/7/14 19:27

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