記事検索

PDFより何が優れているのか? 事業仕分けで電子書籍中間フォーマットを議論


「事業仕分け第3弾」の模様は、Ustreamやニコニコ動画、DMM.com、ShareCastでライブ配信されているほか、過去分についてもアーカイブされており、「新ICT利活用サービス創出支援事業」についての議論もオンデマンド視聴できる

 行政刷新会議による「事業仕分け第3弾」で16日、総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業」について議論され、「予算計上見送り」の判定が下された。

 2010年度の同事業では「電子出版の環境整備」をテーマに設定し、8億3600万円の予算を割いて委託事業を公募。「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」や「EPUB日本語拡張仕様策定」など10案件が採択されている。

 「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」は、各種電子書籍配信フォーマットに変換可能な、オープンかつフリーな電子書籍の交換(中間)フォーマットを策定するというもの。一方の「EPUB日本語拡張仕様策定」は、EPUB対応デバイスで縦書きやルビなど、日本語組版を実現させるためのもの。いずれも、今後の日本の電子書籍普及のキーとなる技術とされている。

 これら「電子出版の環境整備」をテーマにした同事業の期間は2010年度末(2011年3月)までだが、総務省では引き続き、2011年度予算の概算要求において「新ICT利活用サービス創出支援事業」の名目で8億円を計上している。2011年度は「環境未来都市構想」という別のテーマを予定しているが、事業仕分けでは同事業を評価するにあたり、2010年度の電子出版に関する事業の必要性や進め方が議論の的となった。

 例えば、電子書籍交換フォーマット標準化について、総務省が「国が予算を付けなければ、おそらく標準化は行われなかったと思われる。そうなると、日本で電子書籍のビジネスがシュリンクする」と訴えると、仕分け人は「民間の業者として標準化しなければビジネスが成り立たないのだから、国が予算を付けなくても標準化はなされるのではないか」と指摘。これに対して総務省は「標準化できなくてもビジネスにはなるが、企業ごとに異なるフォーマットになる。それではコンテンツの囲い込みになるため、国民にとって迷惑」「放っておけば3グループに分裂する状況。小さな市場で競争すれば、グローバルでは共倒れになる。日本の電子書籍が世界のプラットフォームに上っていく環境にならない」などと反論した。

 また、仕分け人からPDFに対する優位性について問われた総務省が、「出版に携わる方々はいかに自分の表現したい形で読者に届けるかということを重視する。そういったことを考えると、PDFでは不十分というのが出版業界の意見。それにきちんと対応するフォーマットを作っていかないと、4000社ある出版社が誰も電子書籍を出さないという状況」と説明する場面もあるなど、交換(中間)フォーマットという趣旨とはやや性格が異なるPDFとの差別点について、かなり時間が割かれていた感がある。

 そもそも、たった5カ月間で標準化が行えるのかとの疑問については、2010年度は標準化の「案」の作成までと説明。その後、標準化機関にかけて認められる必要があり、それは2011年度以降、総務省からの支出なしで民間側の負担で進めてもらう流れだとした。また、国の予算を支出しても「案」にとどまる点については、「案の段階で事業ができないわけではない。知る限り、すでに9つの配信プラットフォームが動き出している。我々が取り組むことが知れ渡ったことで、フォーマットが標準化されるとみなさんが信じているためだ」と訴えた。

 一方で、同事業全体の進め方について、戦略性が見えないことも問題視された。2010年度の「電子出版の環境整備」というテーマが決まったのが8月ごろになってからであり、10月末になってようやく委託先が決定。実施期間も短いため、電子書籍分野の重要性は認めるが、わずか5カ月間の事業として国が手を出す必要性は感じられないとの指摘もあった。

 さらに2011年度の「環境未来都市構想」も具体的な内容が決まっていないなど、「積算根拠があまりにあいまい。予算の枠取りとしか考えられない」として、予算計上を見送るべきという結論に至った。仕分け人の判定は、廃止が3人、予算計上見送りが5人だった。

 ちなみに、2010年度の10案件のうちで最も大きな予算が割り当てられているのは、「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」で1億4900万円。委託先は般社団法人日本電子書籍出版社協会で、事業仕分け用の事業シートによると、使途は、設備備品費(研究開発用機器購入費・保守費・改造修理費)が100万円、労務費(研究員費・研究補助員費)が8800万円、一般管理費が1000万円、消費税が700万円、その他経費が4300万円。その他経費の内訳は、電子書籍の利用状況に関する国内外状況調査が2300万円、法律事務・その他検証作業等が2000万円。

 総務省によれば、総務省が支出する金額の半分程度を委託先の民間企業側にも負担してもらう契約を結ぶという。従って、例えば「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」では、総額がだいたい2億2000万円規模のプロジェクトということになる。

【追記 15:00】
 なお、予算計上見送りという判定は、あくまでも2011年度の「新ICT利活用サービス創出支援事業」に対するものだ。2010年度の予算はすでに執行されており、総務省では「電子出版の環境整備」に関する2011年度の案件については、予定どおり2010年度末までの期間で実施するという。

【お詫びと訂正 15:00】
 本記事のタイトルが一時、(2010年度の「新ICT利活用サービス創出支援事業」である)電子書籍の中間フォーマット策定の予算計上を見送るという内容になっておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正いたします。


関連情報


(永沢 茂)

2010/11/17 06:00