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MetaMoJi浮川社長「日本で100万なら世界で1億。なぜ若い人がやらないのか」

新旧ソフトビジネスを語る〜ジャスト時代のお宝写真も披露


 株式会社MetaMoJiは6月28日、デジタルハリウッド東京本校で「大ヒットiPhoneアプリ『7notes mini』から広がる未来」と題したセミナーを開催した。司会は、KandaNewsNetwork,Inc.代表取締役の神田敏晶氏が務め、オフコンからパソコンとパッケージソフトの時代に移り変わる時に不動の地位を築いたジャストシステムと、スマートフォンとSNSの時代に起業し、手書き入力アプリで世界市場に進出しようとしているMetaMoJiのビジネスを対比しながら、ITソフト業界での起業についてMetaMoJiの浮川和宣社長の意見を聞き出した。

株式会社MetaMoJi社長 浮川和宣氏 KandaNewsNetwork,Inc.代表取締役 神田敏晶氏

 

成功には巡り合わせ=運が必要。どうしたら運に恵まれる?

 セミナーは、1995年から1996年にかけて放送されたNHKのドキュメンタリー「新・電子立国」の内容を踏襲した形でジャストシステムの創業と一太郎開発までを紹介。浮川和宣・初子夫妻がNEC PC-100対応日本語ワープロソフト「JS-WORD」を開発したことを契機に、NECのPC-9801用に開発されたワープロソフト「一太郎」が定番ビジネスソフトの地位を不動のものとするまでがまず紹介された。

 ジャストシステム時代を振り返って、神田氏が「(成功には)運が必要か?」と聞くと、浮川社長は即座に「(成功したビジネスには)運としかいいようのないことが(日本でも米国でも)どこにでもある」と肯定。さらに神田氏が「どうやったら運に恵まれるか」と聞くと、「じっとしてたら来ません。動き回らないと」とコメント。動き回る中で、そういうものに当たると述べた。

ジャストシステムは1979年、浮川和宣・初子夫妻が徳島で創業 ジャストシステム創業当時、オフコンで漢字を入力するのには漢字コードを使っていた 1983年に発売されたNECのPC-100。ハードウェアとしてのマウスはあるが、マウスドライバもない状態で日本語変換機能を備えたワープロを開発した
JS-WORDの画面。カット&ペーストなどの機能をアイコンで利用できるインターフェイスを実装した その後、IBM PC用の日本語ワープロソフトJX WORDを開発 1985年、NECのPC-9801シリーズ用ソフトとして一太郎を開発。98と一太郎の黄金時代を築いた。一太郎の文字は浮川社長によるもの
一太郎Ver.3.0のパッケージ 5インチ2HD版 8インチ2D版。左側にあるのが3.5インチFD
自社ビルの落成記念で徳島でセミナーを開催した。手前から、NECの高山由 支配人(当時)、マイクロソフトの古川亨氏、浮川和宣社長、ソフトバンク孫正義社長 ジャストシステム徳島本社ビル。当時、100人を超えた社員がまとめて入居できるテナントビルがなかった 一太郎とPC-9801シリーズは、ハードの性能に合わせてソフトの機能も向上。パソコン黎明期の黄金時代を築いた

 

情報弱者というのはキーボードが苦手な人ということではないか

 手書き入力アプリ「7notes」開発については、「いかにキーボードで効率良く入力するか、というかな漢字変換を作って来たが、キーボードありきの技術なので、使う人はキーボードという物理的なハードルを乗り越えなければならない。『情報弱者』という言葉もよく使われるが、それはキーボードが苦手な人ということではないか」と、キーボードが障壁となってデジタルデバイドの向こう側に取り残されている人がいることを指摘。

 「一太郎を作り上げて成功したころはわたしの母親も60歳くらいでした。でも、キーボードでコンピュータを使ってはくれなかった。手書きアプリ開発で、わたしたちが動き始めたものを見せると、いまは86歳になっている母が、『これだったらわたしできるわ』と。情報弱者では、一気になくなるわけですよ。いろんな選択肢があっていいという自信はあったんですけど、その言葉を聞いたときに改めてやってよかったなと思いました」というエピソードを披露。

 一方で「キーボード入力はなくなりません。効率はいいです」と述べ、自ら作り上げてきたと言える、キーボード入力の長所についても改めて言及。「ただし、選択肢があっていい。」

 浮川社長は「コンピュータを使うためにキーボードを使いこなす訓練をしなくても、文字さえ書ければ自然にコンピュータが使えるという方法もあった方がいい」として、コンピュータが日常の道具になりつつある現在、特別な努力をしなくても自然なインターフェイスで利用できる方法を用意するべきだと指摘した。

タイプライターで打つ際に絡まないようQWRTY配列が考案され、現在のPCキーボードでそのまま継承されている 手書きスタイルの起源となる木簡。木や竹の板に墨書して並べた ペンコンピューティングの歴史はまだ20年。Apple Newton(左)、Palm Pilot(右)

 

反応が早いが、悪評が広まるのも早いアプリのビジネス

 「7notes for iPad」は、「スタートと同時に1位になった。午後2時に記者発表会を開始し、午後7時には1位になった」。浮川社長は、ネットニュースなどの情報源を起点としてSNSで広まる早さについて、「Twitterは大きいですね。ほんとうに大きいです」とコメントした。

 神田氏は、ジャストシステム時代の一太郎のビジネスと7notesのアプリビジネスを対比。「一太郎はパッケージが5万8000円で、バージョンアップ料8000円は直接ジャストシステムに入っていたのに対して、7notesはアプリが600円で、バージョンアップは無償なんですね」と振ると、浮川氏は「苦しいはずですね(笑)」と会場の笑いをとった。

 浮川氏は、時代を隔てた一太郎と7notesのソフトビジネスの違いについて「アプリでは100円とかのソフトが多いんですね。なぜ100円のソフトが多いか。わたしたちも600円という値段をつけたのかというと、将来性がすごいから。iPadにしても、去年の5月からで日本だけでも50万台と言われ、全世界では2500万台を販売したとAppleが発表している。iPad2になっても売れていると思う。アナリストは年間で4000万台と言っていて、アメリカではいまだに品不足が続いている」と市場の大きさを強調。

 さらに、「アナリストの情報などをいろいろ調べてみると、2015年には地球上の人口が70億人しかいないのに、スマートフォンが20億台売れるという。この未来の先取り合戦が始まっている」と述べ、「徳島の阿波踊りで“同じあほなら 踊らにゃ そんそん”という言葉があるが、いろいろ考えている人たちに、『やってみないと、ソフトも出してみないと、何事もやってみないとわからない』。日本の国民性で、失敗をおそれすぎる」と指摘。

スタンドアロン時代のビジネスとクラウド時代のビジネス 浮川和宣ビジネス戦略。“同じあほなら踊らにゃそんそん” 浮川社長の個のこだわりを追求することで、世界市場に通用するソフトを作る

 

「日本で100万円売れるなら、世界で1億円。なぜ若い人がやらないのか」

 日本のソフトをアメリカに紹介するというビジネスをしている、自身もベンチャー社長である米国人の言葉として、「シリコンバレーで仕事をしているときは、シリコンバレーのビジネス環境と、日本はまったく同じだと思っていた。米国ではFounderとなると、たとえ数人の会社でも、新しい事業を始めましたというと誰もがリスペクトしてくれる。日本に来て、180度違うので驚いた」というエピソードを紹介。

 7notesは今度は英語版、グローバルバージョンを出すが、日本にいながらにして、ケータイやスマートフォンでは日本の100倍の規模の市場を相手にビジネスができるとして、「日本で100万円売れるなら、世界で1億円。100分の1でも100万円です。わたしは面白いと思っていますよ。なんで若い人がやらないのと思っている」と若い人にチャレンジを勧めた。

 同時に、「自分しかできないことをどう研究するか。ものまねをしてもいいことは絶対にない」とオリジナリティの重要性を述べた。「米国の会社はIPOする企業は非常に限られる。自分たちでIPOするのはシリコンバレーでも40社くらい。米国ではいいものを作ると大企業がバカバカ買ってくれる。Googleのような大企業はもちろん、中堅どころでも、自分の会社にない新しいものをどんどん買ってくれる。逆に、他人と同じ事をやっていたら『それはもうあるよ』と言われて誰も買ってくれない」と海外、とくに米国のソフトやサービス開発では独自のアイディアが重要であることを強調。

 神田氏が、「二番煎じの方が儲かるということが日本ではよくある」と振ると、浮川氏は「それだから日本はつまらない」とバッサリ。デジタルハリウッド東京校でのセミナーということもあり、挑戦中のベンチャー社長として、またひとつの時代を築いた先輩として、世界市場を相手にオリジナルのアイディアで勝負しよう、と起業を目指す若者に向けてエールを送った。

 


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(工藤 ひろえ)

2011/6/30 00:00