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気仙沼市長「未来への記録、支援者へのメッセージとして復興への姿を残したい」

被災地をGoogleストリートビューで残すプロジェクト発表会


 Googleは7月8日、気仙沼魚市場で記者会見を開催。Googleマップのストリートビュー技術を活用し、東日本大震災の被害状況を記録・保存するために、「デジタルアーカイブプロジェクト」としてストリートビューの撮影を開始すると発表した。青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県の被災地を3〜6カ月かけて撮影し、年内の公開を目指す。

「カメラ1つではこの被害の大きさを伝えることができない」

Google グローバル シニアプロダクトマネージャ 河合敬一氏

 米Google本社でグローバル シニアプロダクトマネージャを務め、Googleストリートビューをグローバルで統括する立場にある河合敬一氏は、「3月11日の震災以来、私どもも、消息情報、避難所、被災地の航空写真のご提供などを通じて、少しでもお役に立てないかということで努力を重ねて参りましたが、そうした初期の対応が終わった段階で、未来の世代に、この大きな震災の被害の実態をどうやって残しどうやって伝えていくか。インターネットではどういうことができるのかということを引き続き社内で議論してきて、今日発表するストリートビュー技術を使ったデジタルアーカイブプロジェクトを開始することになりました」とGoogleストリートビューによる被災地のデジタルアーカイブプロジェクト開始の経緯について語った。

 直接のきっかけとなったのは、震災後しばらく経って、被災地に取材に行ったジャーナリストから「カメラ1つではとてもこの被害の大きさを伝えることができない。この実情を伝えるためには別の道具立てが必要だ。新しい技術を使って、ストリートビューでぜひやってくれないか」という電話をもらったことだと言う。

 「わたしたちの技術が少しでもお役に立てるのであれば、ということで、ただし被災地の方のお気持ちを傷つけるようなことがあるのではないかと、自治体はじめさまざまな方にご相談申し上げて、それはいいことだからぜひやりなさいと力強いお言葉をいただいた。防災の教育や研究、また将来の世代に『こんなことがあったんだよ』と震災被害を語り伝える際の道具になることができればと考えています」とコメントした。

 

菅原市長「未来の世代への記録として、支援者へのメッセージとして」

気仙沼市市長 菅原 茂氏

 発表会には気仙沼市市長 菅原 茂氏も出席。気仙沼市にはリアス・アーク美術館があるが、美術館も被災し、当分の間開館できない状態となっている。市の職員である学芸員3名はどういう仕事をしようかということになり、市長は迷わず学芸員に記録係になってほしい、記録を集めてしっかりしたものが残せるように活動してほしいと指示を出したという。市長は、「記録を残すことは、将来の世代に対する責務でもあります。そう思っていたところに、今回のGoogleのお話がありました」と説明。

 「被災された方々の気持ちを思んぱかりながら、迷惑にならないように、ということを何度も繰り返し強調して話された。そのお気持ちがあれば、当地としては受け入れるべきだと思いました。Googleさんのストリートビューは、いろいろな形で利用され、今後も永遠に続くプロジェクトだと思います。この気仙沼市はじめ、被災地の町並みをいったんこの時点で記録していただくことは、必ずや、後に、わたしたちにとって貴重な財産となるだろうと考えています」と被災地での撮影を受け入れた理由を述べた。

 また、「今回この試みを、気仙沼市をスタート地として選んでいただいたことを大変光栄に思っています。気仙沼市は復興の緒に就いたばかり、いや、まだそこまでもいっていないかもしれません。一日一日、復興に向けて市民一丸となって、今後がんばっていきます。気仙沼が5年後、10年後に新しい町並みになった時に、Googleさんに来ていただいて、新しい気仙沼のストリートビューを全世界に発信していただきたい」と、被災の記録でもあるが復興の第一歩としての記録でもあることを指摘。

 「今回、多くの自治体、多くの市民の人たちからご支援をいただきました。日本国内に止まらず、海外からもいろいろなご支援をいただいた。その方たちに、自分たちが義援金や物資を送った町というのはこういう町なんだ。5年経ったら、ああこういう風に復興したんだ、支援は無駄ではなかったんだなあという風に必ずや思っていただけると思っています。『みなさんのおかげでもう一度ここに店を開くことができました』、そういうメッセージとして、日本中、世界中のご支援くださった方たちに向けて発信できるのではないかと考えています。」(菅原市長)

被災地を走るGoogleストリートビューの撮影車

 

被災から復興までの履歴を残す長期プロジェクトに

 気仙沼魚市場屋上では、Googleマップのストリートビュー撮影車も展示。屋上に設置したアームに、9台のカメラと3台の距離センサーを据え付けてある。カメラはぐるりと360度を撮影できるよう横向きに8台、中央上向きに1台を装備。順にシャッターを切っていって、撮影した画像を後でソフトウェア処理により合成し、ひとつながりのストリートビュー画像になる。距離センサーは側面に2つ、前面に1つが取り付けられている。

ストリートビュー撮影車。車の天井に取り付けたアームに、9台のカメラと3台の距離センサーを装備する

 Googleによれば、ストリートビューで被災地を記録したのは、2005年8月に米国南東部を襲ったハリケーン・カトリーナ以来2例目。ただし、カトリーナの際は一部撮影に止まり、これほど大規模に被災地を記録するのは今回が初めてになるという。なお、撮影・公開された画像を削除してほしい場合などは、通常のGoogleストリートビューと同様にオンラインのほか電話窓口も設けて対応する。

 撮影にあたっては、被災地域を中心に撮影するが、東北大学大学院 工学研究科附属 災害制御研究センター 今村文彦教授をはじめとした防災・災害の専門家から、「面でカバーするということに意味がある。どこが被災して、どこが被災しなかったか。広めに範囲を取っていくというのが防災の観点上から重要」というアドバイスがあり、被災地域の周辺部もある程度撮影する方針だ。

 今村教授は、「歴史上数少ない低頻度大災害については、時間の経過とともにその教訓は忘却され、風化していく。被災状況の把握、また復旧・復興の過程を記録に残していくことは最も重要であり、この実践を考えた場合、地域の状況を迅速かつ広範囲に記録できるストリートビューという新技術への期待は大きい」とコメントを寄せている。

 なお、撮影対象となるのは青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県。いまのところ南は茨城県までで、千葉県は考えていないという。また、震災前のストリートビュー記録については、仙台市は多くのエリアでカバーしているものの、その他は気仙沼市や石巻市などで主要道路が少しデータがある程度で、「いま振り返ってみれば残念な思いがある」(河合氏)。

 スケジュール的には、「年内には一部でも公開にこぎつけたい」(河合氏)。また、2回目の撮影については時期を決めておらず、復興の状況を見て判断する予定だ。新しいデータを撮影した場合も、データを入れ替えるのではなく、震災直後、5年後、10年後、といった形でタイムラインに沿って変化を閲覧できるようにしたいとしている。

プロジェクト概要 プロジェクトの目的

関連情報


(工藤 ひろえ)

2011/7/12 00:00