ヤフーがまとめページに参入、“サーファー”も手伝う「Yahoo!くくる」公開


 ヤフー株式会社は28日、Yahoo! JAPANの新サービスとして「Yahoo!くくる」を公開した。「くくる」とは「集めてまとめる」ことを表す。ユーザーが興味・関心のある事柄についてテーマ(お題)を設定し、それに合った画像や情報などをウェブ上から集めて“まとめページ”を作成できるサービスだ。まとめページの作成や情報の投稿などにはYahoo! JAPAN IDが必要。

「Yahoo!くくる」トップページ

 まとめページに掲載する要素は「アイテム」と呼ばれ、ウェブページへのリンク「URL」のほか、「画像」「動画」「発言」という形式に分かれており、それぞれタブで表示を絞り込める。「画像」は直接アップロードできるほか、画像検索の結果からリンクすることも可能。「動画」は、YouTube、ニコニコ動画、Dailymotionからの動画埋め込みに対応する。

 「発言」は、参照元を明示できるような“名言”を想定しており、例えばTwitterからの引用などがこれにあたる。「URL」と分けているのは、設定されたテーマに対し、発言ひとつで説明が完結したり、疑問が解決するような場合も多いと考えたためだ。そのため、リンク先にアクセスする必要のあるURLとは別に、発言そのものを引用する形式とした。

 ユーザーが新規テーマでまとめページを開設する際は、タイトル、紹介文、タグを設定した後、最初に最低3個のアイテムを自ら登録する必要がある。その際、「投稿者のみ」「協力して作る」の2つのモードを選択可能だ。

 「投稿者のみ」の場合は、他のユーザーはアイテムの追加が行えず、テーマ設定者自身がキュレーターとなり、そのページに掲載する情報をすべて管理することになる。

 「協力して作る」のモードでは、他のユーザーに広くアイテム投稿を呼び掛けていくかたちだ。この場合、最初にテーマを設定したユーザーであっても、投稿・掲載されるアイテムの取捨選択などの操作は行えない。

 作成された各テーマに対しては、ユーザーがコメントを投稿可能。また、投稿されている各アイテムに対して「イイね!」ボタンで評価することもできる。

 なお、Yahoo!くくるを利用するには、「Yahoo! JAPAN利用規約」「くくる利用ルール」に同意して利用登録する必要がある。設定されたテーマや投稿されたアイテムに対しては、ヤフーがチェックし、権利侵害や悪質なサイトのURLなど、ルールに違反するものは削除していくという。

 また、まとめページにはヤフーのインタレストマッチ広告が掲載されているが、現状では広告利益をユーザーに還元するといった形でのインセンティブは用意していない。今後、Yahoo!くくるの中でユーザーにコンテンツを作ってもらうモチベーションを高める施策を順次展開したいとしている。

まとめのプロ、ヤフーの“サーファー”も積極的にまとめ作業に参加

 ヤフーのまとめサービスならではの点としては、同社のスタッフである“サーファー”がテーマの設定やアイテムの収集に参加することが挙げられる。

 かつてYahoo! JAPANの検索サービスが「検索ディレクトリ」方式であったころ、同社には、日々ネットの新規サイトなどを巡回(ネットサーフィン)し、各担当分野ごとに有用なサイトなど人力で判断、検索ディレクトリに整理・登録する作業を行うサーファーと呼ばれるスタッフがいた。

 ロボット検索メインに移行した現在では、正式な肩書きとしてのサーファーはいなくなったが、そのノウハウは今も受け継がれており、ウェブ上の情報を収集し、Yahoo! JAPANの各種サービスのコンテンツとして整理する編集部門のスタッフが多数いるという。例えば「Yahoo!ニュース」では、あるトピックに対し、新聞社などのニュース記事を掲載するだけでなく、関連する資料などの各種ウェブ情報も集めてリンクを掲載している。いわば、日本で最も閲覧されているまとめページのキュレーターとも言える。

 ヤフーでは、こうした編集部門のスタッフを今でも慣習的にサーファーと呼んでおり、今回、その人的リソースと編集力をYahoo!くくるで活用するとともに、こうしたまとめ的作業の場を社外へも拡大することにした。

 すでにYahoo!くくるのサービス開始当初、サーファーが作成したテーマでまとめページを1万5000以上用意。前述の4形式のアイテムをすべてそろえた“全部盛り”の気合いの入ったまとめも作った。例えば、『【一度見たら夢中に】ルーブ・ゴールドバーグ・マシンの世界』『【ミリメシ】「戦闘糧食ランキング」に学ぶ自衛隊のご飯【なにそれ?】』といったものもある。

 今後は、一般ユーザーにまとめページを作成してもらうのと同時に、サーファーとユーザーが一緒になってまとめ作業を進めていきたいという。一般ユーザーが設定したまとめテーマに対して、その分野が得意なサーファーがアイテムを登録したり、逆にニーズの高そうな旬のテーマをサーファーが設定し、それに対して一般ユーザーにアイテムを登録してもらうといったかたちだ。

サーファーによる全部盛りまとめの例1『【一度見たら夢中に】ルーブ・ゴールドバーグ・マシンの世界』サーファーによる全部盛りまとめの例2『【ミリメシ】「戦闘糧食ランキング」に学ぶ自衛隊のご飯【なにそれ?】』

Yahoo!検索と連携、ユーザーが探しているまとめを検索結果に提示

 作成されたまとめページは、Yahoo!くくるのサイトでキーワードやタグから検索・閲覧できるほか、新着、人気、ヤフーのお勧めといった切り口でも紹介するが、Yahoo!検索の検索結果ページとも連携する。ヤフーによると、実はYahoo!くくるは、同社の検索サービスの満足度向上の一環で提供を開始するものだという。

 例えば、毎年この時期になると「ドラマ」というクエリでの検索が増えるが、これはテレビ各局がスタートする秋の新ドラマの情報を探してのことだ。Yahoo!検索では、各局の公式サイトにある新ドラマの紹介ページなどが上位にヒットするわけだが、このクエリの場合、ユーザーは必ずしも個々の新ドラマの紹介ページを探しているのではなく、各局の新ドラマについて、出演者などの情報を横断的に見られるページを探している場合が多いと考えられる。

 ところが、そうした検索意図に対して必ずしも最適なページが存在するとは限らない。Yahoo!くくるでは、この例のように従来は検索で解決しにくかったクエリに対して、よりユーザー視点のランディング(着地点)となるウェブコンテンツを用意し、検索結果で提示できるようにするのが最大の目的だ。

 Yahoo!検索には、各地の天気予報や芸能人のプロフィールなど、検索意図に合致すると思われるYahoo! JAPAN内のコンテンツを検索結果ページに直接表示するダイレクトディスプレイ(DD)という仕組みがある。今後、Yahoo!くくるのコンテンツの中から検索意図に適したものをDDの一種として表示していく。

 ヤフーでは、検索クエリと検索結果のクリック率のデータなどをもとに、最適な検索結果を提示できていないようなテーマを分析。そうしたテーマのまとめページをサーファー側でも逐次作成していくことで、ユーザーの知りたい情報をすぐ届けられる状態を作っていきたいとしている。

 もちろん、ヤフー社内だけでまとめるのではなく、特にスピード感が求められるテーマやバリエーションが多岐に及ぶテーマでは、一般ユーザーの集合知に期待しているという。「みんなにとって面白い、実用的な情報を、それを知らない人たちにも分かち合ってもらおうという気持ちで、情報をまとめて欲しい。また、自分では多くの情報を集められないユーザーも、まとめてほしいテーマがあれば、まずはアイテムを何とか3個見つけてテーマを立ててほしい。他のユーザーやサーファーと一緒に役に立つまとめコンテンツを作っていきたい」としている。

 なお、現在はGoogleの検索エンジンを採用しているYahoo!検索だが、ロボット検索だけでは出せない、Yahoo!検索らしい付加価値を提供していくためにも、Yahoo!くくるは重要な位置付けにあるとしている。


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(永沢 茂)

2011/9/28 15:09