Googleが「Chrome for Android」ついに公開、独自UIで高速ブラウジング可能
対応は“Ice Cream Sandwich”のみ
Chrome for Android(Google Japan Blogより画像転載) |
米Googleは7日、ウェブブラウザー「Google Chrome」のAndroid版となる「Chrome for Android」のベータ版を公開した。Android 4.0(Ice Cream Sandwich)搭載スマートフォン/タブレット端末に対応しており、日本を含む12カ国のAndroid Marketからダウンロード可能だ。Google Chromeのデスクトップ版から引き継いだ高速ブラウジング、デスクトップ版との同期、Android向けの新しいユーザーインターフェイスなど注目すべき点が多い。
Chrome for Androidではまず、Google Chromeで有名な高速ブラウジングをAndroidでも利用できるようにした。検索結果のトップページでは、リンクをクリックする前にバックグラウンドで読み込まれるため、体感速度はさらに高速になる。なお、携帯料金プランなどを考慮して、この機能はデフォルトでWi-Fi接続時のみ有効となっている。さらにハードウェアアクセラレーションを使用しているため、画面の描画が高速だ。高速化にこだわり、ハードウェアアクセラレーションを使用するために、対応OSがAndroid 4.0のみになったと説明しているほどだ。
Googleアカウントにサインインしていれば、デスクトップとAndroidのChromeを同期させられる。同期内容には、開いているタブ、ブックマーク、オムニボックスの履歴が含まれる。そのため、デスクトップで開いていたタブをそのままAndroidから利用し続けられるという意味でも、高速に使用できる。また、オムニボックス履歴も同期できることから、デスクトップと同じオートコンプリートを利用でき、頻繁に使用するサイトは1~2文字を入力するだけで開くことが可能だ。
ユーザーインターフェイスは、スマートフォンの狭い画面でも利用しやすいように工夫されている。無制限に開くことができるタブの間をフリップやスワイプで移動でき、トランプのカードをめくるように直感的に操作できる。無制限のタブを開いてもメモリを消費しすぎないよう設計が考慮されているという。
また、狭い画面にたくさんのリンクが密に表示されている場合、目的のリンクをタップしにくいことがよくあるが、これを解決するためにリンクレビュー機能が用意された。目的のリンクに自動的にズームインしてプレビューを大きく表示するので、目的のリンクがタップしやすくなっている。
さらにデスクトップ版からの機能を引き継ぎ、プライベートブラウジングやプライバシーオプション設定が可能だ。
注目すべき点として、Chrome for AndroidはFlashをサポートしない。これは、米Adobe Systemsが2011年11月、モバイル端末版Flashの開発を中止したためだとしている。GoogleはHTML5に力を注いでおり、Chrome for AndroidでもHTML5 videoなどをサポートしている。また、IndexedDB、WebWorkers、Web Socketsなどもサポートしている。
Chrome for Androidはベータ版であるため、まだ明らかになっていないことも多い。
例えば、現在サポートされていない機能として、Chromeアプリや拡張機能、Chrome Web Store、WebGLやNaCL(ネイティブクライアント)が挙げられる。また、ユーザーインターフェイスに関しても、現時点ではオムニボックスを常時表示する形式を採用している。これに関しては、ユーザーの利用パターンのモニター結果によって、将来的に変更する可能性もありそうだ。
また、Chromeのブックマークをホームスクリーンに追加する機能も、現時点ではサポートされていない。ただし、Androidブラウザーで作成されたブックマークをホームスクリーンに追加し、Chrome for Androidで開くことはできるという。
これまでGoogleは、Chromeをデスクトップ向けに開発しながら、Android向けには別のブラウザーとしてAndroidブラウザーを提供してきた。Androidには、WebKitや、Googleが開発したJavaScriptエンジンであるV8などの共通項は存在したものの、Google社内で2つのブラウザーを開発するといういびつさがあった。
今回初めて、噂されていたChrome for Androidが公開されたことにより、Chromeという1つのソースコードからデスクトップ版とAndroid版のブラウザーを開発できるようになったといえる。今後、ベータ版から開発段階が進むにつれ、複数の開発チャンネルを同時にサポートする方法を検討するとしている。
現時点では、Androidブラウザーで提供されていた一部の機能はまだChrome for Androidでは提供されていない。これはベータ版であることを考えればもっともなことで、今後の開発状況が注目される。さらに、Android 4.0を搭載している端末はまだそう多くはないことから、当分の間は依然としてAndroidブラウザーが多く使用されることになるだろう。しかし、将来的にはChrome for Androidがデフォルトブラウザーになることは避けられない。
Googleでは、Chrome for Androidにおいてデスクトップ版と同程度の機能を提供するためさまざまな計画があるとしており、今後の開発状況が注目される。
関連情報
(青木 大我 taiga@scientist.com)
2012/2/8 11:25
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