YouTube“押しつけない”動画広告、「TrueView」が好調な理由


バルジート・シン氏

 グーグル株式会社は9日、2011年3月に試験運用を開始したYouTubeの動画広告「TrueView」に関する記者説明会を開催。視聴者が能動的に広告を見たときにだけ広告費が発生するTrueViewについて、米GoogleでYouTubeシニアプロダクトマネージャーを務めるバルジート・シン氏が、その効果や国内外での活用例について紹介した。

 TrueViewには、広告が5秒間表示された後に、広告をスキップして動画を再生するか、そのまま広告を見るかを選べる「インストリーム広告」や、広告一覧の中から1つを選んで閲覧するか、動画を再生するかを選ぶ「インスレート広告」などのメニューがある。日本では主に前者のインストリーム広告が提供されている。

 従来の動画広告と異なるのは、広告が表示された時点では広告費が発生しない点だ。インストリーム広告では、視聴者が広告をスキップせずに30秒間(それより短い広告は最後まで)見た場合にのみ、広告主に課金される仕組み。

広告主、視聴者、動画投稿者のすべてが幸せに

 広告主の視点では「広告が見られないのでは?」と不安を感じそうだが、インストリーム広告では視聴者の再生履歴や年齢、性別、地域をもとに、視聴者に関連性の高い広告を表示。その結果、広告をスキップせずに最後まで見る人は15~45%に上るという。「広告に興味のある人だけに効率的にアプローチできるのがメリットだ」。

 一方、視聴者としては、従来のスキップできない動画広告を“押しつけ”と感じることも少なくなかった。そのため、動画を視聴する前に強制的に広告を表示されると、目当ての動画すら視聴せずにサイトを閉じてしまうケースもあったというが、インストリーム広告は興味がなければ広告をスキップできるのが利点だ。

 これは、YouTubeに動画を投稿する人にも利益があるという。インストリーム広告では視聴者を獲得しつつ、広告収入も得られるとしている。

 「インストリーム広告は効果が高いため、広告主は従来の動画広告よりも高い金額を支払っても採算が取れる。これにより、動画投稿者にも多くの広告収益が還元される。つまり、広告主、視聴者、動画投稿者の3者がウィンウィンのモデルといえる。」

ヒットするTrueView広告の作り方

 TrueViewは日本で試験運用が開始する2011年3月以前から提供されており、現在は家庭で使用する消費財や自動車、金融、テクノロジー、エンタメ、メディアなど幅広いジャンルの広告主が出稿している。特に米国で展開している「日産リーフ」の広告は160万PVを獲得するなど好評だという。

 これに対して日本では、東海地区を拠点とする宅配ピザチェーンの「アオキーズピザ」や、デジタル家電販売サイト「いーでじ」を運営する家電量販店のノジマ電気、TV通販でおなじみのショップジャパンなどがTrueView広告を出稿している。

 なお、TrueViewで使われている動画の多くは、テレビCMと同じ素材が活用されているというが、シン氏はヒットする広告を作るためには「(広告のスキップボタンが表示されるまでの)最初の5秒で視聴者の心を捕らえられるかが勝負のカギ」と説明する。

 シン氏はさらに、広告の長さも重要だと指摘する。「15秒の広告が最後まで視聴される割合は、30秒の広告の約2倍。『30秒広告の方がお得』と考えるかもしれないが、実際に15秒の広告の方が閲覧されることが多く、実際に広告主も15秒の動画を作成するケースが多い」。

 シン氏によれば、TrueView広告をスタートして以来、四半期ごとに需要が倍増ペースで伸びているという。今ではYouTube全体の動画広告に占めるTrueViewの割合は6割に上る。日本ではその割合がさらに高く、TrueView広告には「数十社」(グーグル広報部)が出稿しているという。

 現在はインストリーム広告に加え、検索結果にTrueView広告を表示する「TrueViewインサーチ」や、ディスプレイ広告にTrueView広告を表示する「TrueViewインディスプレイ」も提供しているが、今後は広告を一覧の中から1つ選んで見る「TrueViewインスレート」も日本で投入していくという。

TrueViewのさまざまな広告

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(増田 覚)

2012/2/9 16:30