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Windows 8でIPv6周りの実装改良、「フレッツ 光」フォールバック問題が解消


 6月6日、IPv6の本格的な普及に向けた世界規模の取り組み「World IPv6 Launch」が行われたのに合わせ、米Microsoftが同日付のWindows 8公式ブログにおいて、Windows 8 Release Preview版におけるIPv6接続の挙動について紹介している。

 IPv4/IPv6デュアルスタック環境でデフォルトルートを決定するためのアルゴリズムが改良され、その結果、日本の「フレッツ 光」ユーザーで発生する「IPv6-IPv4フォールバック」の問題がどうやらOSレベルで解消されるようだ。

IPv6でインターネットに到達できるのか定期的にテスト

 Windows 7/VistaなどRFC 3484に準拠したOSでは通常、IPv4とIPv6で複数のIPアドレスが割り振られている場合、同RFCで規定されたアルゴリズムに基づき、IPv6でのルートを優先するようになっている。

 これに対してWindows 8では、MicrosoftによるRFC 3484の実装に改良を施したアプローチをとったという。具体的には、IPv6のルートが広告されているネットワークにWindows 8が新規に接続された際に、IPv6での接続性をテストする過程を途中に入れ込み、実際の接続状況の結果を尊重するアルゴリズムとした。IPv4の接続性についても同様にテストするという。

 IPv6/IPv4のいずれのルートも接続できる場合には、従来と同様にIPv6のルートを優先するルールに従う。一方、IPv6の接続性が確認できなかった場合には、RFC 3484による優先順位では低い方のIPv4によるルートをデフォルトで使うことになる。

 テストは、Microsoftが公開するIPv6オンリーのサーバーに対してHTTP GETリクエストを送るというシンプルなもの。テスト結果はWindows 8にキャッシュされ、以降、30日ごとにテストを繰り返していく。

 この仕組みは、IPv6のプロトコルスタックで実装している。ウェブブラウザーに限らず、標準のWindows APIを使用しているアプリケーションであれば、特別な設定や追加の実装をすることなく恩恵を得ることができる。

 一方、Windowsの既存バージョンにおいても改良したアルゴリズムを適用するかどうかなどの対応については、今のところ未定だという。

インターネットに到達できないIPv6アドレス

 フレッツ 光におけるIPv6-IPv4フォールバック問題とは、IPv4のみでインターネット接続を利用している(IPv6インターネット接続サービスを契約していない)フレッツ加入者が、IPv4/IPv6デュアルスタックサイトに接続しようとした際に遅延などが生じるものだ。

 フレッツ 光の加入者には、IPv4だけでインターネット接続サービスを利用しているユーザーに対してもIPv6アドレスが割り振られている。しかし、これは電話サービスや映像配信サービスなどに使うフレッツ閉域網用のもので、インターネットには到達できないようなルート構成で運用されている。

 ところがOSでは、フレッツ網から広告されるルートが閉域網用ということを判断することはできない。その結果、IPv4/IPv6デュアルスタックサイトに接続しようとした際に、RFC 3484に従い、最初にIPv6で接続を試行。その接続に失敗してからIPv4で接続し直すため、遅延が生じるというわけだ。Microsoftでは、10〜15秒もの遅延が発生する可能性もあるとし、この現象はウェブブラウザーの使用時に顕著だが、他のアプリケーションでも影響を受けるとしている。

IPv6対応サイトの増加で影響拡大の懸念

 これまでのように、ほとんどのウェブサイトがIPv4のみに対応している状況であれば問題なかったが、World IPv6 Launchによる普及の呼び掛けもあり、IPv6対応サイトが世界的に増加していくとみられる。実際、日本でも多く利用されているGoogleやFacebookなどもIPv6への標準対応を表明し、IPv4/IPv6デュアルスタックの状態がしばらく続くことになる。すなわち今後、このような普段使っているようなサイトにフレッツ 光の環境から接続しようとした際に、表示が遅くなってしまうなどの影響が拡大する恐れがあるのだ。

 この問題に対しては、キャッシュDNSサーバーに「AAAAフィルター」を導入するなど、ネットワーク側の回避策によってIPv6-IPv4フォールバックを発生させないようにする取り組みをNTT東西とISPが進めており、影響を受ける範囲が大きくならないよう関係事業者が協力していく方針だ(詳細は、本誌2012年4月19日付および2012年6月6日付の関連記事を参照)。その一方で、端末側においてIPv6-IPv4フォールバックに配慮したのが、Windows 8における実装の改良と言える。

 なお、Microsoftの公式ブログでは今回の改良について、特に日本のIPv6-IPv4フォールバック問題への対策だと明示しているわけではなく、フレッツ 光あるいは日本という名称にも一切言及していない。また、実装の改良は特にWindows 8日本語版に限ったものではなく、“誤設定”されているネットワーク環境においてIPv6-IPv4フォールバックによるユーザー体験の低下が起きないようにするための一般的な対応のようだ。

 しかし、5月中旬に行われた総務省の「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」の第18回会合で、日本マイクロソフト株式会社の田丸健三郎氏は、IPv6-IPv4フォールバックの回避策の方向性などを説明する中で、「今後リリースするOSにおいては、日本国内の課題について、よい実装を提供できるのではないか。OSにおいては一定の対策を図れる予定」とコメントしていた。その時点ではこれ以上の詳細は明らかにしなかったが、今回の実装改良は、フレッツ 光におけるIPv6-IPv4フォールバック問題も背景の1つにあると言えるだろう。

Internet Explorerのアップデートでフォールバック緩和も

 Windowsの既存バージョンにおけるIPv6-IPv4フォールバック対策については、昨年6月に行われたIPv6の24時間実験「World IPv6 Day」の際に、すでに日本マイクロソフトから回避策の案内や対処モジュールの提供が行われている。

 具体的には、IPv6の使用を一時的に抑制するパッチの適用、IPv6プロトコルを使用しない設定への変更、ネットワークポリシーテーブルの変更、Internet Explorer(IE)9へのアップデート――といったものだ。

 このうち、ポリシーテーブルの変更は、NTT東西から割り振られるIPv6アドレスの優先度を下げるポリシーテーブルを設定する手法だ。日本マイクロソフトがコマンドプロンプトから設定する方法を案内しているほか、IPv4枯渇対応タスクフォースやNTT西日本からは設定ツールが提供されている。

 ただしこの手法について田丸氏は、「避けるべき解決策」であり「少なくともWindowsにおいては推奨されていない」と説明した。これは、ユーザーの接続環境が自宅やモバイル、Wi-Fi、外出先など一定ではないために、構成を変更することでネットワークに接続できなくなる可能性があることや、ユーザーの作業を要することからスキルによっては誤設定の可能性も考えられるためだ。また、ポリシーのスタンダードな構成が存在せず、ポリシーテーブルの編集が一般的な方法ではないとも指摘している。

 また、IEのアップデートというのは、IE7/8内のフォールバックの実装に不具合があったためだ。セキュリティ強化とあわせ、この不具合がないIE9へのアップデートを推奨したという。この不具合はIE7/8においてもすでに昨年夏に対処しており、それぞれセキュリティパッチを適用することで、フォールバックの不具合も解消されるとしている。その結果、フレッツ 光におけるフォールバック問題そのものに対する回避策ではないが、それぞれ最新状態にアップデートするにより、フォールバックの遅延が緩和される効果もある。


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(永沢 茂)

2012/6/7 16:56