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IPv6遅延問題にISPとNTT東西が共同対策、海外では日本からのIPv6接続抑制も


JAIPA会長補佐の木村孝氏

 社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)は18日、IPv6への恒久的な対応を促進する「World IPv6 Launch」について、ISP側で進めている取り組みについての説明会を開催した。

 World IPv6 Launchは、Internet Society(ISOC)の提唱により2012年6月6日に世界的に行われるイベントで、ウェブサービス事業者やISP、機器ベンダーなどが参加し、6月6日以降、恒久的にIPv6を有効にするという取り組み。この取り組みには、GoogleやFacebook、Yahoo!などが参加を表明しており、今年の6月以降は各種インターネットサービスのIPv6対応が急速に進むと考えられる。

 サービス側のIPv6への対応が進んだ場合、日本ではフレッツの光サービス利用者の多くに、ウェブアクセスなどで遅延が発生することが問題となる。JAIPA会長補佐の木村孝氏は、この問題についての協議をNTT東西と行なっており、今後ISPとNTT東西が暫定的な対策を段階的に提供していくとともに、本質的な対策としてIPv6接続サービスの普及を促進していくと説明した。

フレッツ光ユーザー約1671万人に影響、GoogleなどはIPv6アクセス抑制を検討

 この問題の対象となるのは、NTT東西のフレッツ光サービス(Bフレッツ、フレッツ・光プレミアム、フレッツ 光ネクスト)のユーザーで、影響は3月末時点で約1671万人に及ぶと見込まれている。これらのサービスでは、動画配信サービスやIP電話サービスなどで利用するためにIPv6アドレスをユーザーに割り当てている。一方で、インターネット接続サービスはISPが提供しているため、ISPのIPv6接続サービスを利用していない場合には、インターネットに接続可能なIPv4アドレスと、インターネットに接続できないIPv6アドレスの2つがユーザーに割り当てられる状態になる。

 この状態で、IPv6に対応しているウェブサーバーにアクセスすると、多くの環境ではIPv6接続を優先するため、IPv6によるアクセスがタイムアウトしてからIPv4でアクセスすることになり、通常の場合に比べてアクセスが遅延する「IPv6-IPv4フォールバック問題」が発生する。

 この問題への対処策として、NTT東西ではフォールバック時の遅延を小さくするための対策を導入しているが、昨年6月に行われた「World IPv6 Day」でのGoogleの計測によると、フレッツ光のユーザーがIPv6で接続しようとした場合、平均約0.87秒の遅延が発生することが確認されている。

World IPv6 Launchの概要 予想される影響

 また、ISP側では、昨年のWorld IPv6 Dayの際には一部のISPで、IPv4によるDNSへの問い合わせに対してはIPv6アドレス(AAAAレコード)を返さない「AAAAフィルター」と呼ばれる対策を実施した。これによりフォールバック問題は発生しなくなるが、IPv6接続が利用可能な環境でもDNSへの問い合わせをIPv4とIPv6のどちらで行うかはアプリケーションの実装などにもよるため、IPv6接続環境があるにも関わらず、IPv6では接続できなくなる場合があるといった問題が発生する。

 木村氏によると、こうした遅延の問題が確認されたことから、GoogleやFacebookなどの海外のコンテンツ事業者ではコンテンツ側の対策として、遅延が起きることが確認されているDNSからの問い合わせに対してはAAAAレコードを返さないといった対策を検討しているという。これが実施されると、日本の多くのISPのDNSがこの対策の対象リストに入り、この対策を実施しているコンテンツへのIPv6接続が行えなくなる可能性がある。

AAAAフィルター ISPが対応しない場合の影響

ISPとNTT東西が共同で暫定的な対応を年内に実施

 こうした問題の解決に向けて、JAIPAではNTT東西との協議を2011年末から実施。まずは短期的な取り組みとして、ISPとNTT東西が共同でフレッツ光向けのDNSサーバーを2つに分ける暫定的な対応を行うという。

 具体的には、IPv6/IPv4接続サービスの利用者と、IPv4接続サービスのみの利用者を識別し、それぞれの利用者ごとに別のDNSを用意する。その上で、IPv4利用者向けのDNSにのみISPがAAAAフィルターをかけられるようにすることで、IPv6利用者にまでAAAAフィルターがかけられることを防ぐ。

 ただし、この取り組みの実施時期は年内がめどとされており、6月6日のWorld IPv6 Launchには間に合わない見通し。それまでの間は、ISP側で別途AAAAフィルターを適用しないDNSを用意し、IPv6ユーザーに対して個別にDNSの設定変更を案内するといった対策が考えられるという。

 具体的にどのような対策をとるかは各ISPの判断によるが、JAIPAではISP各社に対して実施している対策をユーザーに情報開示するよう促すとともに、そのためのガイドラインを作成し、5月にも関係者向け説明会と資料の公開を行う予定だとした。

2つのDNSを用意する暫定的な対策を実施 段階的に対策を実施していく

本質的な解決策はIPv6接続サービスの提供、ユーザーの負担軽減を検討

 木村氏は、「AAAAフィルターのような対策はあくまでも暫定的な対応で、本質的な解決策は、ISPがユーザーにIPv6接続サービスを提供することだ」と説明。2011年5月からは、フレッツ 光ネクストを使ったISPのIPv6接続サービスの提供も可能となり、ISPの対応も進んでいるものの、利用者はまだ多くない状況だという。

 IPv6接続サービスの利用者が増えない理由としては、IPv6接続サービスの利用に1万円程度する専用アダプターの購入が必要であったり、NTT東西への工事費(2100円)が必要となるなど、ユーザー側の負担があることを指摘。こうした課題についても、近々協議を行うことを呼びかけているという。

 木村氏は、「World IPv6 Launchに対しては、NTT東西とJAIPA(ISP)が協力して知恵を出し合い、ユーザーに迷惑をかけないように対応している」として、今後も引き続き協議を行なっていくとともに、JAIPAでもユーザー側で対応可能な方法の広報などを行なっていくとした。

本質的な解決策はIPv6接続サービスの普及 ISP向けガイドラインの作成や、ユーザー側で可能な対策の周知を行う

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(三柳 英樹)

2012/4/19 11:57