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楽天が7月から社内公用語を英語に、三木谷社長「日本企業は目を覚まして」


 2年にわたる準備期間を経て、楽天が7月から社内の公用語を英語に切り変える。これに伴い同社の三木谷浩史社長が29日、日本外国特派員協会で会見し、社内公用語英語化に踏み切った理由やその成果などを英語でスピーチした。以下、主な発言をまとめた。
楽天の三木谷浩史社長

グローバル化しなければ生き残れない

 楽天は創業当初から、「グローバルでナンバーワンのインターネットサービス企業」を目指していた。その一環として、海外でさまざまな企業を買収してきたが、海外の子会社とつながっていないと感じた。例えば、国内の社員が海外子会社の社員と話すときに通訳を使わなければならない。そこでひらめいたのが、全員が英語でコミュニケーションすれば、問題が解決するということだ。

 公用語英語化を全社員に強制するのは困難だと言われた。そうした中で、私の背中を後押ししたのは自分の経験だった。これまでに多くのインド人や中国人を採用したが、その中には日本語がしゃべれない人もいた。しかし、彼らは半年もしないうちに日本語を習熟し、流ちょうな日本語を話すようになった。その姿を見て、日本人も十分な時間をかければ英語を話せるようになると確信した。

 2006年当時、日本のGDP比率は世界で12%を占めていた。その頃の日本企業は国内でサービスを提供するだけで生き残れた。しかし、最近は新興市場が目覚ましく成長し、20〜30年後にはGDP比率は5%以下に縮小するだろう。そうした中では、ビジネスのグローバル化が不可欠だ。楽天は現在、13カ国でビジネスを展開していて、数年後までには27カ国で展開しようと考えている。

新卒の30%は外国人

 社内英語公用語化に踏み切った理由のひとつは、ベストプラクティスを世界で共有したかったということが挙げられる。私たちは日本国内の製品を海外に販売するだけでなく、海外の素晴らしい製品を販売したい。例えば、ヨーロッパの商品を米国の消費者に販売することも考えている。

 世界中に散在する優秀な人材も採用したかった。楽天ではすでに、新卒の30%は外国人を採用しており、中途採用も積極的だ。特にエンジニアは中国、インド、ヨーロッパで多くの人材を採用している。エグゼクティブエンジニアのトップ6人のうち3人は外国人のため、英語でのコミュニケーションが不可欠になっている。

 日本経済はこれまで、製造業で競争優位性を保ってきたが、多くのメーカーが苦しんでいる。それはハードウェアが日用品になったからだ。ソフトウェア、サービス、コンテンツをグローバルに組み合わせなければならない時代になってきた。日本企業が苦しんでいるのは、言語能力がないことも大きく関係している。

たかが英語、日本企業は目を覚まして

 ハーバード・ビジネス・スクールは2011年8月、我々の英語公用語化プロジェクトに関するケーススタディを論文として発表した。その中で行われた聞き取り調査では、多くの従業員が苦しみ、ストレスを感じていることも分かった。そこでプロジェクトを見直し、無料の英語クラスを提供したり、時間を与えて勉強させるようにした。

 従業員には、現在の最重要プロジェクトは、社内英語公用語化だと伝えている。役員のすべては、ようやくTOEICのスコアが800に到達した。従業員には役職に応じてTOEICのターゲットスコアを設定し、昇格の条件としている。その成果として、TOEICの平均スコアはプロジェクト開始時の526から700近くにまで改善した。ちなみに新卒社員はすべて800以上だ。

 もちろんTOEICだけが目標ではない。あくまでプロセスのひとつだ。TOEICのスコアが高ければ十分なコミュニケーションができるというわけではないが、ベンチマークのひとつになるとは思っている。最終的にはすべてのコミュニケーションを英語にすることを目標としており、現在は80%以上の社内会議が英語で行われている。

 昨日、「たかが英語」という本を刊行した。日本人は、英語を話すことが難しいと思い込んでいる。しかし、勇気を持って殻を破り、英語でのコミュニケーションを勉強すべきという気持ちがあったから、このようなタイトルを付けた。日本の産業にとって、公用語英語化はあくまで始まりに過ぎない。この本を通じて、日本の企業は目を覚ましてもらいたい。

公用語英語化がグローバルな成功につながる?

 以下は、報道陣との質疑応答。

――日本企業がグローバルに成功するには英語が問題だというが、新興市場ではMicrosoftやFacebookなど米国企業が席巻している。日本の企業にとっては、英語が問題なのではなく、ベンチャーキャピタルや起業家精神が欠けているのではないか。

 英語は大きな問題だと感じている。楽天はAmazonに対抗できる唯一の会社と言われているが、それは多くの会社を買収してイニシアティブを発揮してきたから。また、公用語英語化を通じて、本当の意味でのグローバル化を目指している。英語で話が全社的にできなければ、競争力のあるビジネスをやっていくのは難しい。

 英語以外にもエンジニア不足など多くの課題がある。スマートフォンに目を向けると、日本企業も過去はAppleに先行していた。携帯電話では世界に先駆けてカメラが付いていたり、インターネットにアクセスできていた。日本企業がグローバルスタンダードになる可能性はあったが、その意識がなく、英語のコミュニケーションスキルが足りなくてリーダーになれなかった。だから今こそ、目を開くタイミングだ。

――公用語英語化が嫌で辞めた社員はいたか。

 多くはないが、そのような社員もいた。彼らは、公用語英語化が楽天にとって必要なプロジェクトだと理解はしていたが、何らかの理由で離れなければいかなかった。

――日本人には勤勉さや美徳があるが、英語公用語化で日本の良さが失われることはないか。

 公用語英語化によって、日本の文化が失われるのではないかと懸念されるが、英語でコミュニケーションを図れるようになることで、日本の労働文化を他国に輸出できると考えている。

――社内では毎日何時間の英語レッスンが行われているのか。

 個人によって異なる。ただ、英語を仕事場で使えば、少なくとも毎日8時間は英語に触れることになる。私のコミュニケーションスキルが高まったのは、社内で英語を使っているからだ。

――就業中に英語の勉強をしたり、不慣れな英語で資料を作ることなどによって、短期的には仕事の生産性が落ちないか。

 コミュニケーションを英語で強制することで非効率が発生するかというのは、イエスでもありノーでもある。というのも、例えば、どれくらいの英単語が業務で必要かというと、1000語でなんとかなる。それは難しいことではない。というのも、ビジネスの多くはルーティン的な作業が多いから。最初は苦しんでも、数年で劇的な改善を数年で目の当たりにできた。以前は英語でしゃべれなかったスタッフが自分よりも優れた自己表現をしている。短期的にはコストになるかもしれないが、長期的には良い結果をもたらしたと考えている。


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(増田 覚)

2012/6/29 17:39