Cerevo、PCレスUst配信機の上位モデル「LiveShell PRO」発売、720pに対応


 株式会社Cerevoは5日、市販のビデオカメラを接続することで、PCを介さずにUstreamなどのライブ配信が高品質に行える専用機器「LiveShell PRO」を発表した。現行製品である「LiveShell」の上位モデルにあたり、配信画質・音質の向上や機能強化、モニター用端子の追加などを行った。価格は5万4999円。同社直販サイトなどで同日より予約の受付を開始、10月中に出荷する見込み。

「LiveShell PRO」を発表する株式会社Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏

アルミ削り出しのキャビネットを採用。スクエアなデザインとなった

本体重量は増えたものの、手のひらサイズなのは「LiveShell」と変わらない

 LiveShell PROではまず、映像のエンコード方式としてH.264を採用。解像度は720p(1280×720)を上限として自由に設定できるようになった。最大ビットレートは約10Mbps。LiveShellの480p相当(704×528/CIF)と比較して、最大解像度が大きく向上している。音声エンコードもAAC-LCとし、最大ビットレートは256kbps。これにより、Ustreamなどのインターネットライブ配信サービスとしては実効上限と言える画質・音質で配信できるとしている。

 基本的な機能はLiveShellから引き継がれており、配信時の各種コントロールは、ウェブ上の「Dashboard」にタブレット端末やスマートフォン、PCのウェブブラウザーからアクセスし、インターネット経由でリモートで行う仕組み。LiveShell PRO版のDashboardでは、H.264を採用したのに伴いパラメーターが変更されており、プロファイル(High/Main/Baseline)設定などが行えるようになっている。

 Dashboardでは、音声入力のミキサー機能や配信する映像にテロップを挿入できる機能などに加えて、LiveShell PROの新機能として、好きなアスペクト比で画面を切り取って配信できるクロップ機能を追加した。代表的なアスペクト比を選択できるほか、特殊な比率も設定可能。切り取る領域は画面上でドラッグするなどして指定できる。

LiveShell PRO版の「Dashboard」画面

新機能のクロップ機能の画面

 Ustreamのほか、ニコニコ生放送、YouTube Liveなどが配信先として出荷状態で対応している。また、Ustreamに関しては、LiveShellと同様、Ustream社による「Ustream認定配信関連機器」に認定され、「USTREAM COMPATIBLE」のロゴが付く。

 LiveShell PROの本体は、大きさが123×90×26mm(幅×奥行×高さ)、重さが300g(専用バッテリー内蔵時は350g)。映像・音声入力端子は、背面にHDMI(480p/720p/1080i)が1系統、コンポジットビデオ入力(NTSC/PAL)/ステレオライン入力が1系統あるほか、前面にもステレオマイク入力を設けた。

 さらに前面には、LiveShellのユーザーから要望が多かったというモニター出力端子を設けた。一般のステレオヘッドフォンを挿せば音声をモニタリングできるが、別売の専用ブレイクアウトケーブルを挿すことで、音声に加えて映像もRCA端子で取り出せるようになっており、モニター用テレビなどを接続可能だ。

 ネットワークインターフェイスは、100BASE-TX/10BASE-Tの有線LANポートとUSBポートを背面に備える。USBポートは無線LAN用のもので、付属するIEEE 802.11b/g/n無線LANアダプターを挿すことで無線LANでの接続が可能だ。なお、LiveShell PROではUSBポートへの3G/4G通信アダプター直挿しによるインターネット接続への対応は見送った。3G/4G回線には、モバイルルーターで無線LAN接続する方式が主流になってきていることなどが背景にあるという。

本体前面。向かっていちばん右がモニター出力端子(音声/映像)、次がステレオマイク入力。液晶ディスプレイには、音声入力レベルをチェックするピークメーターが表示可能

本体背面。向かって左から、HDMI(脱落防止ネジ穴付き)、コンポジット入力、ステレオライン入力、USB(無線LANアダプター用)、有線LAN、ACアダプター

 電源は、付属のACアダプターまたは内蔵の専用バッテリー。専用バッテリーでは3時間の動作が可能(HDMI入力、解像度720pで、有線LAN接続で配信した場合)。具体的な価格は未定だが、専用バッテリーは2000円前後でオプションとしても販売し、交換して使用することもできる。

“映像のプロ”ではなく“ライブ配信のプロ”がターゲット

 名称に「PRO」と付くことから明らかなように、LiveShell PROは“プロフェッショナル向け製品”という位置付けだが、Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は、“映像のプロ”ではなく“ライブ配信のプロ”がターゲットだと説明する。ライブ配信のプロとは「ライブ映像発信を職業的に行っている人。発信するコンテンツが職業的であれば、その主体者を含む」との定義だ。

 すなわち、価格が数十万円以上するようなビデオカメラを使って撮影を行うようなテレビ局や映像製作会社などではなく、例えばアーティストなどもライブ配信のプロに該当するわけだ。そのターゲットとなるユーザー規模は、映像のプロよりも大きいとみて、こうした層が高品質のライブ配信を行いたい時に最適なLiveShell PROをラインナップすることになった。

“映像のプロ”の一般的なイメージ“映像のプロ”と“ライブ配信のプロ”のユーザー規模と製品価格分布

Cerevoが考える“ライブ配信のプロ”のイメージ僧侶も“ライブ配信のプロ”になる可能性があるという

ミドルサイズの業務用カメラとLiveShell PROの組み合わせイメージ発表会には、全レッスン公開型アイドルユニット「フラップガールズスクール」の青山玲奈さんが登場。フラップガールズスクールもレッスン映像をライブ配信すれば、“ライブ配信のプロ”に?

 LiveShell PROでは、本体に高級感のあるアルミ削り出しのキャビネットを採用。本体の容積がLiveShellに比べて1.2倍と増え、重さも108gから大きく増加したが、剛性を確保。また、稼働時の安定性も向上し、定点ライブカメラなどでの24時間・365日の配信も可能だとしている。前述のモニター出力端子のほか、HDMI端子には脱落防止ネジ付きのケーブルが使えるようネジ穴を設けるなど、細かい部分でもライブ配信のプロの使用に配慮した。

 なお、現行のLiveShellは2万6800円と、価格帯もターゲットも異なるため、今後も並行して販売していく。岩佐氏によると、2011年11月に発売したLiveShellの出荷台数は「数千台の中盤」。日本から3カ月遅れて発売した海外でも出荷台数が増えており、現在までの内訳は日本が6割、米国および欧州が4割。今年度中には海外が半分かそれ以上を占めるようになるとみている。

Cerevoが発売した歴代のライブ配信機器製品。真ん中が、2010年10月に5万円で発売した「LIVEBOX」。手前が、LIVEBOXのコンセプトで量産化・低価格化した現行製品の「LiveShell」。新製品の「LiveShell PRO」で再び“プロフェッショナル向け製品”をラインナップしたかたち。金属製のスクエアな筐体で共通する雰囲気がある




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(永沢 茂)

2012/9/5 17:10