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ミクシィ「毎月1冊無料」でフォトブック参入、新規事業第3弾の勝算

 株式会社ミクシィは19日、スマートフォンで撮影した写真を毎月1冊無料(送料別)でオリジナルの写真集として注文できるフォトブックサービス「ノハナ」を開始した。まずはiOS 6.0以降に対応するアプリを公開し、近日中にAndroid用アプリを提供する予定。

ノハナの概要

 スマートフォンで撮影した写真をオンライン上に投稿し、限定したユーザーと写真を共有したり、それらをフォトブックとして注文できる。送料90円を支払えば、毎月1冊無料で自宅に届く。2冊目以降は1冊525円。注文金額1000円以上で送料は無料。

 写真が20枚たまると注文可能。フォトブックはカラー印刷で、1ページあたり1枚の写真が掲載でき、各ページにテキストも入れられる。写真を掲載する順番はアプリ上で変更できる。サイズは14×14cm、ページ数は表紙や写真20枚を含めて全28ページ。

ノハナのアプリイメージ

勝算は「毎月1冊無料」からのフリーミアムモデル

 スマートフォンで子どもの写真を撮っているが、多忙で写真を整理・印刷する時間がない――。ノハナはそんなユーザーを主要ターゲットに据え、夫婦が撮影した写真をオンラインで共有し、手軽にフォトブックにまとめられるようにしたものだ。

 フォトブック普及協議会によれば、国内における2011年のフォトブック市場は74億円規模。2012年は95億円に達する見込みという。ミクシィは需要が増えるフォトブック市場に「毎月1冊無料」を武器に参入し、後発ながらも多くのユーザー獲得を目指す。

フォトブック市場の分析

 その先には、「フリーミアムモデル」を視野に入れている。フォトブックの無料配布でユーザーを集め、一部のユーザーにフォトブックを追加購入してもらうほか、2013年春には有償の「プライベート撮影サービス」も開始する予定だ。

 プライベート撮影サービスは、子どもの撮影を得意とするカメラマンをミクシィが組織化し、七五三や入学式などのイベントに派遣する。カット数50枚程度で、料金は2〜3万円程度。アプリの専用フォームやフォトブックに同封される用紙から申し込めるようにする。

ノハナのビジネスモデル

フォトブック参入の真の狙いは「子ども向け写真館市場」

 ノハナを企画したミクシィの大森和悦氏は、「狙っているのは子ども向け写真館市場」と語る。この市場は約700億円規模と、フォトブック市場の約7倍。毎年5〜10%の成長で推移している。

 子ども向け写真館市場の内訳はスタジオアリスが約300億円、スタジオマリオが約100億円と上位2社で約6割を占める。残りの4割の多くは個人経営などの写真館や、スタジオを持たないフリーカメラマンが細々と展開している状況だという。

 こうした中、無料フォトブックでユーザーを獲得した上で、SNS「mixi」内のコミュニティなどを通じてカメラマンの組織化に成功すれば、スタジオ撮影の一定の割合を出張撮影に置き換えられると、大森氏はにらんでいる。

 「大手写真館の料金は3〜5万円程度。我々は2〜3万円でサービスを提供するほか、5000円程度で気軽に利用できる撮影会プランや、企業とタイアップした撮影付きイベントも検討している。市場シェアの5%でも獲得できれば年間35億円の売り上げが見込める。」

 まずはサービス開始初年度に3万世帯にフォトブックを利用してもらい、単月黒字化を目指す。フォトブック、出張撮影に続く今後のプランとしては、家族間のコミュニケーションに特化したSNSを展開したいという。

ノハナの将来の展望

「mixiありき」ではない新規事業を

ミクシィの馬場沙織氏(左)と大森和悦氏。ノハナ事業は社内会議室で開発が進められている。会議室にはノハナに関心を持つ同社社員が頻繁に訪れ、約40人がホワイトボードに「足あと」を残している

 ミクシィは2012年8月、新規事業の創出を目的とした社内部署「イノベーションセンター」を発足。同社の中核事業であるmixiや、ウェブ業界に特化した転職サイト「Find Job!」に続く新サービスの開発に取り組んでいる。

 9月にはテスト版Androidアプリを限定配布できるサービス「DeployGate」、20代女性を対象とした定期購入型ファッションEC「プティジュテ」(2013年1月に終了)を開始し、ノハナは新規事業第3弾サービスとなる。

 ノハナは2012年12月に大森氏のほか、デザインを担当する馬場沙織氏(メディア統括部デザインユニット)ら4人でスタート。馬場氏も所属する、通称マダム会と呼ばれる「社内ママ」の集まりに声をかけ、随時意見を出してもらっている。

 ノハナのアルファベット頭文字の「n」には、mixiの「m」の次に続きたいという思いが込められている。現状ではmixiとの機能面で連携する予定はなく、「mixiありきの新規事業ではなく、ノハナ単体で成立するサービス」を目指す。

(増田 覚)