ニュース

eBookJapan、電子書籍版マンガ全集とASUSの7型タブレットをセット販売開始

手塚治虫全集400巻、梶原一騎セット全64巻など

 電子書籍ストアサービス「eBookJapan」を運営する株式会社イーブックイニシアティブジャパンは22日、ASUS JAPAN株式会社との協業を発表した。ASUSが23日に発売する7インチAndroidタブレットの新製品「ASUS MeMO Pad ME172V」を、電子書籍版のマンガ全巻セットや全集と一体で販売していく。

22日に都内で開催された記者発表会で。(向かって右から)漫画家の六田登氏、eBookJapan代表取締役社長の小出斉氏、ASUS JAPANプロダクトマネージメント課アカウントマネージャーのソフィー・リー氏

 手塚治虫全集(全400巻)が10万3050円、島耕作シリーズセット(全73巻)が4万2040円)、ガラスの仮面(1~46巻セット)が2万7930円、梶原一騎セット(全64巻)が3万4031円などとなっており、25セットをラインナップしている。

 ME172Vの店頭予想価格は1万7800円となっており、同タブレットと電子書籍セットの通常価格を単純に合計すると、手塚治虫全集では14万3275円。セット販売では4万225円の割引となる。同様に、島耕作シリーズセットでは1万4085円、ガラスの仮面では8031円、梶原一騎セットでは1万649円の割引となる。

eBookJapan 全巻セット販売ページ

 なお、ASUS JAPANが国内で販売するME172Vでは、eBookJapanとの協業により特典が付いている。まず、漫画家・六田登氏が書き下ろした「老人と海」をME172V購入者限定で無料ダウンロード提供する。また、eBookJapanで使える「eBook図書券」3150円分も同梱する。このほか、ME172VにはeBookJapanの電子書籍リーダーアプリがプリインストールされるほか、ウェブブラウザーの起動画面にeBookJapanのウェブサイトが初期状態で設定される。eBookJapanが全集などとセット販売するME172Vにもこれらの特典が付いている。

「ASUS MeMO Pad ME172V」。背面はダイヤパターンカットの凹凸がある仕上げ。写真のピンクのほか、グレーもラインナップ
「老人と海」
「ASUS MeMO Pad ME172V」国内向けモデルは、eBookJapanとのコラボ仕様となる

 eBookJapanは現在、約10万冊を扱っており、このうちマンガが約6万5000冊を占めている。購入した電子書籍はウェブ上の書庫である「トランクルーム機能」で保管しておき、読書の際にタブレットなどに移動して利用する仕組み。Android端末のほか、iPad/iPhone/iPod touch、Windows、Macなどに対応している。

 なお、セット販売で購入した電子書籍はトランクルームに配信される。ME172Vにインストールされた状態で届くわけではないため、ME172Vで閲覧する場合は、端末が届いた後、トランクルームからダウンロードする必要がある。

eBookJapa会員の7割以上が30代以上、全巻セットで“大人買い”後押し

 22日に都内で開催された記者発表会には、eBookJapan代表取締役社長の小出斉氏、ASUS JAPANプロダクトマネージメント課アカウントマネージャーのソフィー・リー氏、漫画家の六田登氏が出席した。

eBookJapan代表取締役社長の小出斉氏
ASUS JAPANプロダクトマネージメント課アカウントマネージャーのソフィー・リー氏
漫画家の六田登氏

 eBookJapanの小出氏はまず、eBookJapanの利用状況について説明。3月22日現在の登録会員数は約77万人で、1人当たりの月間購入額は約5000円に上ることを明らかにした。なお、ユーザー層は30代以上が7割以上を占めているという。全巻セット・全集とタブレット端末とのセット販売は、月間購入額が大きく、年齢層の高いeBookJapan会員の“大人買い”を後押しする施策の一環となる。

 また、約6万5000冊というマンガの品ぞろえは世界最大級であり、競合他社と一線を画するポジショニングだとアピール。今後は、マンガ以外の取り扱い冊数も増やし、今年度中に全20万冊を予定する。特に、現在3万冊を突破した文芸書・ビジネス書は夏までに10万冊を目指す。また、3月15日から100誌でスタートした雑誌も、今年度中に300誌を目指すとしている。

電子書籍ストア市場におけるeBookJapanのポジショニング

 eBookJapanのデバイス別の売上高は、2012年度はPCが12億1800万円(前年度比15.4%増)、モバイルが16億5900万円(同71.1%増)。スマートフォンやタブレットからの売上が業績拡大を加速させているとし、特にタブレットにおける読書体験をいかにして変えるかが重要になっていると指摘し、今回のASUSとの協業に至った背景を説明した。

 なお、eBookJapanは2012年10月末、同社オリジナルの7型Androidタブレット端末を12月中旬に発売すると発表していたが、その後、製品はリリースされず、今週初めの3月18日になって諸般の事情によりこれを無期延期すると発表した。小出氏によると、eBookJapanのオリジナル端末として開発・販売するのは難しいと判断し、タブレット端末のグローバルメーカーであるASUSと協業する方法を選んだという。

 ASUS JAPANのリー氏は、日本でまだタブレット端末があまり浸透していない理由について、購入しても何に使っていいのか分からないという面があるのではないかと指摘。eBookJapanとの協業の背景には、日本の文化であるマンガを楽しむことをタブレットの使い方の1つとして提案し、タブレット市場のすそ野を広げる狙いがあるとした。なお、ME172Vに搭載しているAndroid OSはバージョン4.1.1のため、応答性が改善されており、マンガの閲覧も快適に行えるという。

 漫画家の六田氏は「ダッシュ勝平」「F―エフ―」「ICHIGO 二都物語」「歌麿」などの代表作で知られるベテラン漫画家だが、今回、タブレット端末で閲覧することを前提としたスタイルの電子書籍専用作品として「老人と海」を書き下ろした。ヘミングウェイの原作は、六田氏が若い時に読んで強烈な印象を持った作品という。タブレットの液晶画面表示の美しさを生かす、見開きコマを多用したオールカラー約240ページ(紙の本に換算すると480ページ)として仕上げた。

記者発表会の会場には、「ASUS MeMO Pad ME172V」と並んで、電子書籍端末の古いモックが展示されていた。これは、eBookJapan取締役会長の鈴木雄介氏が同社を創業するよりも前、小学館に在籍していた1995年当時、木を削り、金属製のちょうつがいを使って制作した初代モック。これを持ち歩いては、出版仲間に電子書籍の効用を説いていたという
1997年の2代目モック。このころになると、端末メーカーや通産省が興味を示し始める。この後、翌1998年に「電子書籍コンソーシアム」が結成、通産省の補助金を得て、シャープに電子書籍端末の実験機を製作したもらうことになる
パナソニック(当時は松下電器産業)に働きかけて2003年に製品化・発売してもらったという「ΣBook」(右下)。このころに比べると技術面は格段に進化し、タブレット端末は電子書籍端末として理想のかたちに近づいた。しかし、「ビジネスモデルの面は、まだまだこれから」と鈴木氏は言う

(永沢 茂)