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奈良先端大と慶応大、AR技術を活用した文化遺産のデモ展示

 シンポジウム「歴史・文化と情報学」が3月27日、東大寺総合文化センターにおいて開催された。

 シンポジウム「歴史・文化と情報学」は、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科と慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の共同研究プロジェクト「革新的デジタルメディア研究コア」の成果報告会として開催。プロジェクトでは、奈良先端大の得意とする拡張現実感技術(AR技術)と、慶応大学が持つコンテンツ制作手法、両大学のネットワーク技術により、東大寺の歴史的文化的コンテンツから、新しいコンテンツを生み出すことを目指して実施。

 シンポジウムではデモ展示も行われた。

 東大寺東塔の再現は、東大寺には天平時代大仏殿の東西に東塔、西塔の二つの七重の塔が建立されていたと伝えられ、100m近くある塔が建っていたとされている。この塔が残っていたとするとどういう景観であったかという風景をARの技術を再現するというものである。

 今回は東塔のみの再現だったが、ヘッドマウントディスプレイを装着し周りを見回すと二月堂横の茶屋のあたりから大仏殿方向を見た場合の景観と東塔が建っていたとされる東塔跡での景観を見ることができた。現在の景観は、それぞれの場所からライブで全周画像を撮影しネットワーク経由でリタムタイム送信された画像と合成。桜が咲いた景観の中に東塔が見えたり、100m近い東塔を見上げる中に鹿が動いている景観などが見られた。

 また、東大寺山景を模した屏風絵の二月堂あたりにiPadをかざすと、キャラクターが登場。キャラクターが、二月堂で毎年3月に実施されている「修二会」、いわゆるお水取りについての説明をするというアプリケーションも展示された。「東大寺 時巡り - 大仏殿編」の展示では、実際に大仏殿に行きiPadをいろんな方向にかざすことで、現在よりさらに大きかった天平時代の創建当時の大仏殿の様子や、創建当時金に塗られていた大仏などを見ることができた。

 プロジェクト代表奈良先端科学技術大学院大学横矢直和教授は「プロジェクトはいったん今年度で終了するが、奈良先端大、慶応、東大寺というコラボレーションから得られた成果は大きなものであり、今後さらに発展させたい」とコメント。また、慶應義塾大学側の代表である稲蔭正彦教授も「すでに、いくつかの新しいアイデアについて東大寺を含めて議論を進めており、今後さらに発展させたものを作って行きたい」と述べた。

HMDを装着し、見回すと東塔を含む景観を見ることができる。
二月堂横からの景観。この画像がHMDに表示されている。
東塔跡での景観。HMDを装着して見上げると、このように東塔の様子が見える。いずれもバックはライブ画像
屏風絵にiPadをかざすとキャラクターが登場し修二会の説明を開始
金に塗られた大仏と大仏が座る蓮華座の連弁に刻まれた絵をiPadを通して見る参加者

(溝内 公紘)